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M-1グランプリは笑神籤を廃止せよ ルールは視聴者よりファイナリストのために

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BLOGOS編集部

M-1が終わった。その余韻が日一日と祭りの後の寂しさに変わっていく。各所からのアフターコメントが大なり小なり波となって寄せては返し、「今年も終わった」というこの波に足をさらわれないよう踏ん張りながら記すのは、現在のM-1が抱える問題への私的で勝手な思いだ。

1、笑神籤(えみくじ)問題

昨年の同時期も同じ思いだったが、出場順を生放送でその都度決めていく笑神籤システムは演者への負担が大き過ぎる。突き詰めて自分がM-1で見たいのは、番組をスリリングに盛り上げ視聴者の興味を引くための「演出的な緊張」ではなく、ファイナリスト達がコンディションを整え、万全の態勢で漫才にのぞむ「まっとうな緊張」だ。

笑神籤導入以前は、出場者自身が何番手で出るか判っていた。ゆえに出場者はそこに向けてメンタルを集中できたはずだ。だが、笑神籤はオールタイムで臨戦態勢を取らなければならない。この常時スタンバイという過酷な状況が、漫才の出来を数%でも損なうのなら、この演出は見直したほうがいいと思う。

また、この笑神籤、前年はMCの上戸彩が引いていたが、今年はボクシングの井上尚弥や女子レスリングの吉田沙保里ら、三人の一流アスリートが引く演出になっていた。大会のスケール感を付加したという意図だろうが、これはM-1の場においては毒にも薬にもならないにぎやかしであり、本質的には何も生み出してない。

彼らの紹介と登場に費やす時間が無駄だ。こういう段取りの積み重ねがイベント全体を間延びさせ、リズムに差し障りをきたす。

何しろ笑神籤という苛酷なシステムを作っておきながら、その最重要な役割をふわっとした第三者にゆだねるのが腑に落ちない。結果に対し、演者がツッコミのひとつも言えないような誰かがクジを引くぐらいなら、勝敗占いをする動物にでもクジを引かせたほうが、まだスタジオが温まるはずだ。

ファイナリストにとって大事な大事な出場順を決めるのだ。クジを引く側にもファイナリスト達の運命を一緒に背負ってもらうレベルでないと。例えば、前年のM-1王者。となれば、物語もツッコミも生まれるのではないか。

が、どうあれこの笑神籤はファイナリストへの負担が大きすぎる。笑神籤がもたらす演出効果よりも、演者のパフォーマンスの質を高めるケアのほうが重要だと思う。

2、トップバッター問題

トップバッターだった見取り図

では、笑神籤以外で出場順を決めるにはどうしたらいいか。ちなみにM-1が過去に採用してきたのは下記の方式だった。

A 事前に出場者が抽選を行う ※(第1回~第11回)

B 事前に出場者が予備抽選を行い、その結果に従って希望するネタ順を選択する ※(第12回)

上記ABに共通するのは「事前に決定」ということだ。これが「本番中に決定」という笑神籤にとって代わったのだ。ファイナリストのコンディションを重視するなら、以前のように「事前に決定」へと戻すべきではないか。

そして、出場順におけるほぼ最大の問題はトップバッター問題だ。過去の結果を振り返ってみる。

< 「M-1グランプリ」でのトップバッター成績 >

<第一期>
2001 中川家     優勝
2002 ハリガネロック 5位
2003 千鳥      9位
2004 千鳥      9位
2005 笑い飯     2位
2006 POISEN GIRL BAND 9位
2007 笑い飯     5位
2008 ダイアン    6位
2009 ナイツ     4位
2010 カナリア    9位

<第二期>
2015 メイプル超合金 7位
2016 アキナ     5位
2017 ゆにばーす   8位
2018 見取り図    9位

トップバッターで3位以内に入ったのは、14組中わずか2組。いったいどうしたってトップバッターは不利だ。

待ちに待ったM-1本戦、その幕開けは誰もがそわそわと落ち着かない。スタジオも客席も掴みどころのない緊張に覆われている。空気が温まりきっていない中で務める漫才。トップバッターが上位に食い込めないのは、実力ではない。圧倒的に環境だ。

トップバッターであっても、それなりのウケを取ることは可能だろう。だが、優勝の条件のひとつとして挙げられる「漫才後半の爆発力」を起こすことは無理だ。それはおそらくファイナリスト全員誰でも、トップバッターになったら無理だ。

笑いは送り手と受け手の両者によって醸される。送り手である演者と、受け手である観客、両者が共にベストコンディションという条件が揃わなければ、爆発はのぞめない。

M-1放送前は、ピン芸人のくまだまさしが前説をしているという。彼がどんなに頑張ってもスタジオの空気を温めきることは出来ないのだ。

ちなみに、M-1にとって「スタジオの空気が温まっている」とは、どんな状態なのだろうか。あえて表現するならば、ファイナリスト、観客、審査員、スタッフ、スタジオの隅々までM-1のノリに満たされ、一体感のようなものが充ちた状態だろうか。

そしてこの、トップバッター不利問題を解消するにはどうしたらいいのか。

この件に関しては、昨年同時期にも考察している。敗者復活で決勝に上がった組がトップバッターになればいい――と書き記した。

【関連記事】M-1グランプリ2017 シビアな新ルール導入で見せた番組側の「覚悟」

次に、その敗者復活に関して考えてみる。

3、敗者復活問題

BLOGOS編集部

現在、敗者復活枠は決勝当日午後に敗者復活戦が行われ、視聴者投票1位がファイナリストに組み込まれるというシステムだ。つまり、敗者復活に選ばれた時点で他のファイナリストと同線上に並ぶことになる。

これはこれで、大いに改善されたのだ。振り返れば敗者復活が導入された第2回(2002年)から第12回(2016年)まで敗者復活枠は、大会途中で発表されるスリリングなプロセスはあるものの、演者は決勝ファーストラウンドのトリで出場していた。

M-1のようなコンテストにおけるトリは、重責ではない。むしろ有利だ。様々な笑いが横溢し、スタジオの空気が温まりきった状態、観客の集中力は高まりきった状態、そこで大きな注目を集めてネタが出来る。その結果が以下だ。

< 「M-1グランプリ」敗者復活枠の成績 >

<第一期>
2001 敗者復活なし
2002 スピードワゴン    7位
2003 アンタッチャブル   3位
2004 麒麟         3位
2005 千鳥         6位
2006 ライセンス      6位
2007 サンドウィッチマン  優勝
2008 オードリー      2位
2009 NON STYLE  3位
2010 パンクブーブー    3位

<第二期>
2015 トレンディエンジェル 優勝
2016 和牛         2位

最終ラウンドとなる3位圏内に、11回中8回入っている。2017年にルールが変わるまで6大会連続で敗者復活が3位圏内だ。

その最たる栄光が、敗者復活から奇跡の優勝を飾り、M-1史に語り継がれるサンドウィッチマンの大逆転だった。もちろん優勝に値する漫才力があってこその結果だが、敗者復活がファーストラウンドのトリで出る、というシステムがその背中を押したのは確かだろう。敗者復活は本戦において有利、それは大会を重ねるうちにわかってきたことだ。

BLOGOS編集部

そして、2017年にルールが改正された。これによって、敗者復活の出順がトリというアドバンテージが取り去られた。そして、敗者復活組の出順は笑神籤の結果次第となり、他のファイナリストと条件の差は無くなり、同じスタートラインに立つことになった。

ちなみに今回大会での敗者復活はミキで、笑神籤で出順は7番、ファーストラウンドの結果は4位だった。結果だけから言えば、ミキは得をした。

そして、M-1最大の問題、トップバッター不利問題を何とかするためには、敗者復活組にその役割を果たしてもらうしかない。

改めて考えれば、敗者復活組は敗者なのだ。負うべきハンデがあってもおかしくないのだ。プロ野球のクライマックスシリーズもそうだが、勝者と敗者の間にアドバンテージとハンデがあることで、むしろ大きな全体の公平感をもたらすのだ。

だからM-1は、通常のファイナリストにトップバッターにはならないというアドバンテージを担保し、敗者復活組にトップバッターを務めるというハンデを負ってもらうことが、この問題を前進させるのではないか。

さらに、M-1は今、トップバッターを含む序盤戦の「前半重い」問題が具体化している。この問題はどう対処したらいいのか。それもまた、敗者復活が関わってくるのだと妄想する。

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