- 2018年12月07日 10:35
人工知能は人間の舌を攻略できるか? チョコレート開発からレシピ提案まで「AI × 味覚」サービスを一挙紹介
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衣食住という言葉があるように、人間の生活の基本といえる「食」。ビジネスとしてのスケールも大きく、農家やシェフ、商品開発者、マーケターなどさまざまな業種の人が関わっています。
それらのどの業種においても、「味覚」を扱うことは欠かせません。しかし、味は人によっても好き嫌いがあり言語化も難しく、一筋縄ではいきません。
本記事では、そんな味覚の分野にAIを導入することで何ができるのか、現在どのような取り組みがおこなわれているのかをまとめました。詳しく見ていきましょう。
味覚の定量評価からマーケティング支援まで。味覚の分野でAIができること
味覚の分野へのAIの活用のされ方は、主に以下の4つに分けられます。
- 味覚を数値として表現
- 食材の相互作用を加味し、食べ合わせやレシピを提案
- 色や形から食材の状態、味を予測
- 嗜好やトレンドの分析・予測によるマーケティング支援
言語化するのが難しい味覚をAIで数値化することで客観的に味を伝えたり、食材の総合作用を分析し、意外性のある食材の組み合わせを見つけたり、AIを用いるメリットは多々あります。
今回は味覚の分野にAIを用いている取り組みをいくつか紹介します。
- 味覚センサーレオ
- AIソムリエ(SENSYソムリエ)
- おいしさの見える化技術(マクタアメニティ)
- 時代のムードを反映させたチョコレートの開発
- Gastrograph
- Food Pairing
- Plant Jammer
- HALLA
- Spoonshot
味覚センサーレオ ―― 味覚センサーで味を数値データとして出力
味覚センサーレオは、測定した電気信号を機械学習で分析することで、味を定量的な数値データとして出力します。
以下のチャートのように、甘み・旨味・塩味・酸味・苦味の5つの項目で表現されます。
また、味の相互作用を加味したデータ解析をもとに、食べ合わせを考案することも可能。
実際に味覚センサーレオは、十勝スマートチーズやキリンの生茶といった商品のマーケティングに活用されています。商品を科学的に分析し、競合商品との差別化を測ったり、商品の良さ・特徴のアピールなどに使われています。
味は人によって好き嫌いもあり、従来では評価が難しかったですが、数値として定量的に扱うことで、マーケターはより科学的に分析ができ、消費者も商品の購買材料として活用できます。
AIソムリエ ―― 嗜好の分析によるお酒のパーソナルレコメンデーション

AIソムリエ(SENSYソムリエ)は、人の感性を理解するパーソナル人工知能「SENSY」を開発する企業株式会社SENSYによって開発されました。
評価レビューからユーザーの好みを分析し、オススメのワインを提案。食べあわせる料理に合うワインを提案することも可能です。
三菱食品と共同開発がおこなわれ、百貨店やスーパーを中心に導入される予定だそう。試験導入した店舗では10日間で8,1本/1000人から11.7本/1000人へと実績は上昇。大きな成果を残しています。
ほかにも、わたしワインというAIが自分のワインの好みを教えてくれるワイン通販サイトもあるように、種類や産地が多く選ぶのが難しいとワイン選びと、AIによるパーソナライズの相性は良さそうです。
「おいしさの見える化」技術 ―― 野菜や果物の画像から味を予測
マクタアニメティは、農業の視点から味覚分野にAIを導入している会社。『おいしさの見える化』技術の構築を掲げ、野菜など農産物の画像を解析し「おいしさ」を計測します。
スマートフォンやタブレットのカメラで撮影可能。5種類のチャートとともに短いメッセージが提示されます。
設備や機材を購入する必要がなく、食材を加工する必要もないため、コストを抑えておいしさを計測できるといいます。食材の品質管理の負担を減らします。
あの頃はCHOCOLATE ―― 時代のムードを反映したチョコレートの開発
NECの取り組みはほかの会社と一味違い、「あの頃はCHOCOLATE」の開発です。
AIを使い、チョコレートで時代のムードを再現するこのプロジェクトでは、新聞記事から読みとった時代のムードを味覚指標で表現します。
技術面ではNEC the WISEを用いおり、新聞に出てきた頻出単語を味覚に変換します。下の画像は単語を味に変換している表。「若い」がフルーティ、不安が苦味など単語のイメージに近しい味へと変換しているようです。

このチャートをもとに、チョコレートメーカーのダンデライオン・チョコレートが5種類のチョコレートを制作。