- 2018年12月06日 16:30
「0円タクシー」が都内で運行開始 日本の交通不全に挑むDeNAの野望
1/2DeNAが東京で「0円タクシー」をスタート
「日本の深刻な交通不全」にビジネスチャンス
AI活用も視野にタクシー業界の抜本改革を狙う
ディー・エヌ・エー(DeNA)が東京都内で「0円タクシー」をスタートし、話題になっている。
同社は12月5日、この0円タクシーを可能とするタクシー配車アプリ「MOV」の発表会を開いた。同社オートモーティブ事業本部執行役員/事業本部長 中島宏氏は、「日本は深刻な交通不全に陥っている」と指摘する。その課題解決に挑むと意気込む「MOV」の取り組みを探る。

タクシーのビジネス革新で日本の交通不全に挑む
中島氏が指摘する「交通不全」とは何か。鉄道路線廃止営業キロ数が1,100km、渋滞による経済損失が年間12兆円、東京圏の鉄道平均混雑率が171%といった深刻な課題が並ぶ。「スマートフォンのOSアップデートを怠るとサービスが使えなくなることもあるが、社会についても同じ。社会にとってのOSである交通のアップデートを怠ると、即日配送などの機能が使えなくなる」(中島氏)。こうした課題を改善するために、「インターネットとAIの力で、仕組みそのものからアップデートする」(同)という。

(写真右)日本には交通不全の課題が山積している
そこでまずは「最も身近な交通であるタクシーの抜本的な効率改善に繋げたい」(中島氏)として、DeNAが神奈川県タクシー協会と共同で、県下のタクシー事業者にタクシー配車アプリ「タクベル」を提供したのが今年4月のことだ。
タクシーの課題は、集約すれば「使いたいときになかなか使えない」という点だ。国内に比べると海外ではライドシェアが普及しており、スマートフォンアプリから配車するサービスが市民権を得ている。タクベルも同様のサービスだが、少し事情が異なるという。
「大前提として日本のタクシーは質が高く、ライドシェアは必要がない」と中島氏。問題は、各社のシステムがバラバラになっていて、従来の電話と新たなアプリによる配車で整合性がとれていないため、同時に配車されてしまうなど、「最適化されていない」こと。タクベルではこれを重点的に改善した。
これまでのタクシー配車アプリは、タクシーの無線システムと接続して使うことが前提だったが、タクベルでは、それぞれのタクシー乗務員がスマートフォンを持ち、そのアプリ同士が連携する「アプリ連携方式」を採用した。無線システムには繋がず、従来の電話配車のシステムと共存したことで、電話とアプリのダブルブッキングが発生しないようにした。さらにメーカーと組んで、タクシーメーター連携もできるようにした。

実際、4月からタクベルがサービスを提供したところ、実績があったほかのサービスと比較して、「爆発的に(乗車を)伸ばすことに成功した」(中島氏)。結果として、5~6倍の乗客数を達成したという。

競争は一層激化、MOVの勝算は? AI活用も視野
「アプリ連携方式とメーター連携で爆発的に数字が伸び、タクシー事業者の経営効率を改善できた」(中島氏)ことから、東京への進出を決め、サービス名称も「MOV」へと変更した。
ただ、「タクシー配車アプリは乱立の様相を呈している」という問題がある。各社がサービスを提供しているが、中島氏は無線機連携の方式ではタクシーの業務改善に繋がらないため、アプリ連携とメーター連携によるMOVのような配車アプリに優位性があると主張する。
また、中島氏は「ようやくシェア争いが始まった。2018年を皮切りに、2020年にかけて日本でもタクシー配車アプリ戦争が起きる」と、競争が本格化するのはこれから、という認識も示す。日本のタクシーは24万台ともいわれているが、どの配車アプリも数千台から1万台程度のタクシーしか対応しておらず、MOVとも大きな差はないというのが中島氏の認識だ。
そうした中でMOVの勝算は、タクベルでの実績だ。他社比で5~6倍という配車数に加え、月間6.5万件の乗車件数は「神奈川県という立地に限った件数では他社の追随を許さない。かなりの競争力がある」(中島氏)。
さらに、MOVに参加したタクシー事業者にはQRコード決済用のタブレットや、クレジットカードなどに対応した対面用決済端末もレンタルする。別途決済端末を用意する必要がなくなり、初期費用を抑えることもできる。決済手数料も、MOV参加事業者というボリュームを生かして低廉化できるため、キャッシュレス化にも貢献できるとしている。

- NewsInsight
- ニュースインサイト “ニュースが一歩、深化する”