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iPadがふるさと納税の「地場産品」になるカラクリ~自治体担当者がみる制度の光と闇~

12月は悩みどきらしい

年末が近づき、ふるさと納税をどこの自治体にしようか悩んでいる方も多いと思います。

京都府トップのふるさと納税額4億円を誇る亀岡(かめおか)市役所の地方創生担当部長の私としても悩みどころです。

納税額を増やすためには人気返礼品を用意したり、「返礼品割合」をできる限りお得にする、というアイデアが即座に浮かんできます。

ふるさと納税制度のメインテーマになってきた「返礼品」。横目でみていると、「え、ここまでできるの?」というものに出くわします。

「地元のアプリ」をインストールしたiPadは地場産品?

「ライバル」である他自治体の動向を注視していると、こんなニュースが目に入ってきました。

写真AC

福岡県行橋市へのふるさと納税による寄付額が飛躍的に伸びている。8月からタブレット端末「iPad」を返礼品に加えたことが後押ししており、市は今年度の寄付額を過去最多の8億4千万円だった昨年度の約3倍に上る25億円と見込んでいる。(朝日新聞デジタル2018年12月2日)

市は好調な要因について返礼品を見直したことなどを挙げ、現在の返礼品の種類は約1100件という。10月末現在の今年度の寄付額による返礼品人気ベスト3は①iPad(寄付額4億4千万円)②アップルウォッチ(1億2千万円)③アップルTV(3300万円)と、行橋の特産品ではないアップル製品が独占。特にiPadは2カ月ほどでトップに躍り出た。(朝日新聞デジタル2018年12月2日)

https://www.asahi.com/articles/ASLCZ3VNZLCZTLLS005.html

よくよく調べてみると、単なるiPadでなく、「地元商店街を飾る彫刻作品が3Dで見られるアプリをインストールした」iPadであるようです。

現場で感じる「地場産品の線引き」判断の難しさ

写真AC

「iPadのような電気機器」や「ジュエリー」など、換金性・資産性が高いものは自粛ねがいたい。

こうした通知が、2016年4月に総務大臣から各自治体へ出ています。

それ以後も、こうした商品が扱われているのは、なぜでしょうか?

自粛要請にとどまる通知だからということ以外に、「地場産品」という言葉が、最近のキーになっているように思います。

例えば、先ほどの朝日新聞の記事には、田中行橋市市長のコメントがあります。

「我々は市内の企業や個人が業として扱っている物は地場産品というくくりでやってきた。ルールが明確化されたら、それに従う」(朝日新聞デジタル2018年12月2日)

実際に関わってみると、「地場産品かどうかの線引き」は、難しい判断です。

下記の京都府の実例で、みなさんは、セーフかアウトか、どのように思われるでしょうか?

市と「まちづくり連携協定」を結んだ後援企業が、一般に流通している自社の飲料商品を、市内別業者が作る別商品とセットで販売(亀岡市のケース)

市内の企業が、「ロシアやカナダ産のカニなどの海産物をボイル加工」して、流通・販売(宮津市のケース)

どちらもアウトとして、掲載を取りやめています。こうした色々なケースについて、「地場産の線引き」をどうするか、という問題が生じています。

全国の自治体で完全なルールを作ることは不可能

基本的な線引きのルールを総務省が定めつつ、実際には、個々に発見・照会されたグレーな事例を、ケース・バイ・ケースで判断していくことになる、と思います。

というのも、ふるさと納税をめぐる商流(生産→加工→流通→販売の流れ)は、地域間にまたがることが多いです。

また、事業者の生産活動の拠点は、別の地域にも存在するケースがあります。

そのため、どこからどこまでが「地場産品」か、津々浦々1,700の自治体で生じている事例を網羅して、完全なルールを作るのは不可能です。

私がいる亀岡市を例に、「地場産品ではない」として自主的に取り下げた返礼品を見てみると、色々な事例があることがよく分かると思います。

☆キリンビール一番搾り:実は、亀岡産大麦は、キリンビールで使用されています。しかし、「どの商品に亀岡産大麦が使用されているか、原材料の表示上では不明である」ため、提供を自粛

とくに返礼品としてのビールは人気が高いため、無関係の他府県自治体が堂々と提供している現状を見ると、不平をかこってやけ酒したくもなります。

さらに、「生産人口や地域の規模」が小さい市町村や、そもそも特産品が少ない自治体は、規制が厳しいほど、「ふるさと納税」を活用する余地がなくなります。

その結果、ある程度の企業数や生産エリアを備え、売れやすい特産物(肉・米・フルーツ・魚)をもった自治体だけが躍進する、ということにもなりえます。

ふるさと納税の返礼品が年間売り上げの約1割を占める企業も

亀岡にあるJA京都の農産物直売所「たわわ朝霧」。

900名の農家をかかえるファーマーズマーケットですが、「ふるさと納税」も活用しながら、大躍進を遂げています。

(朝11時、客で賑わう「たわわ朝霧」の店内。https://jakyoto.com/tawawa/)

亀岡市の売りである
・プロの料理人や一流ホテルの料理長も仕入れに来る旬の「京野菜セット」
・2016年に農林水産大臣賞を獲得した希少ブランドの「亀岡牛」
・2年連続で特A米である「キヌヒカリ」

農家の方々が丹精を込めて育てた京野菜や京都の食材を、ふるさと納税を通じ、全国に届けることができるようになりました。

今年8億円の売上げ高を目指す中、ふるさと納税がその概ね1割を占めます。

(千枚漬けにも使われる京野菜「聖護院かぶら」。京都産のほぼ100%が亀岡産です)

こうして成長していく事業者や返礼品もある一方で、思ったほど伸びない返礼品もあります。

また、ヒアリングをしてよくよく聞いてみると、<すでに築き上げてきた地元の販路がある中で、「ふるさと納税への供給量を増やせない」という企業もあります。

事業者の方が安定供給に努めるのなら、行政も、ふるさと納税サイトへの商品掲載を安易に取りやめたりしない、という点も大事です。

そのためにも、あらかじめシロ・クロをはっきりさせることが重要です。

その中で、ふるさと納税の「利用者ニーズ」をつかみとり、

・京野菜やブランド米の安定した「定期便」を生み出したり、

・「食の安全や美味しさにつながる生産者の顔や思い」が見えるようなPRにつとめる

など、地道な努力を、亀岡市も事業者と一緒に重ねてきています。

「超高額所得者」向けにメディアを騒がすような「超豪華返礼品」をやっているのは、あくまでも一部の自治体だろうというのが、担当者としての実感です。

読者のみなさまも光と闇の部分、双方を冷静にみていただければと思います。

そして、京都府有数の穀倉地帯として亀岡(かめおか)市が誇るイチオシ返礼品を、年末にぜひ一度お試しあれ。

(クリックしたら申し込みサイトにとびます)

通常の和牛より肥育に年月をかけ、きめ細かな霜がのる希少な「亀岡牛」


☆朝霧と寒暖の差がツヤツヤにした「京野菜セット」


☆2年連続最高ランク特Aを獲得したブランド米「亀岡産キヌヒカリ」定期便


☆京の奥座敷と称えられる「湯の花温泉」露天風呂付き客室チケット


☆地元の名店で味わう秋冬限定の京都丹波「ぼたん鍋」食事券


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