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プレゼンで"ポインタ"を使ってはいけない

どんなに立派な資料でも、伝わらなければ意味はない。IT業界屈指のプレゼンテーターに、プレゼン本番直前に点検できるチェックポイントをきいた。

■下を向かせないために、資料は配らない

プレゼンを成功させるには、最初の20秒から3分の“つかみ”がとても重要。そのために、事前に相手のことを知っておきましょう。私は本番直前まで、ツイッターでお客様の名前、社名、地名を検索します。ツイッターは他のSNSや検索サイトより、新鮮なニュースをピンポイントで探すのに便利。地名から近くの施設や飲食店の情報を集めておき、「近くの○○って店、魚料理が美味いみたいですね」などと振ると、「よく知っていますね」とその場の空気がほぐれます。相手との共通項があれば、距離が一挙に近づきます。

“いじりやすい”のは見た目、服装、持ち物です。相手が傘を持っていれば「雨が降ってきましたか」。時計やネクタイもいい。やってはいけないのが、相手の体調や内面に関するいじりです。

プレゼンが始まってからは、最初はゆっくり話すのがコツ。できるだけ、わかりやすく短い言葉で展開していきます。相手がスピードに慣れてきた頃を見計らって、後半に向かってスピードを上げていくようにします。スピードアップするタイミングは、相手の相づちの数が多くなってきた頃です。

会場での「突発的な事故」「段取りの悪さ」には絶対に注意してください。コネクタが繋がらない、電源・無線が入らない、プロジェクタの接続が上手くいかない等々で手間取ると「こいつ自信がないな」「言っていることは大丈夫か」などと信頼度が下がります。開始時間にスムーズに始められるよう、余裕を持って対応してください。

■「画面ズーム」と「蛍光ペン」を使うと伝わりやすい

目線を誘導するためにレーザーポインタや指し棒を使う人がいますね。でも見えづらいのでお勧めしません。みなさん意外と使っていませんが、パワーポイントの「画面ズーム」を利用してスライドを拡大したり、「蛍光ペン」で丸をつけたり線を引いたりすると便利です。

言葉を添えるとよりわかりやすくなります。「上から2行目ですが」や「右側の髭面の男性ですが」など、画面の場所や位置、人物の写真や図表の様子を言葉で伝えると、目で追いやすくなります。

合わせて自分の手や指の動きも、上手く取り入れてください。動かすのは「大きさの説明」「位置や場所を示す」「私は、みなさんは、など立場を示す」「数を言う」「順序の説明やカウントをする」といったときです。カウントしながら指を折ったり、日本人はあまりやりませんが、指を鳴らしたり机をトントン叩いたり手を叩くのも効果的です。孫正義さんや故スティーブ・ジョブズもよく音を鳴らしてましたよね。

自分の目線の動きにも注意してください。登壇した際は、会場を4分割して、後方左ゾーンから前方右、前方左、後方右という感じで対角線上に目線を動かすと落ち着いた仕草に見えます。

相手に下を向かせないことも大切です。私は資料をほとんど配りません。配った際も「資料は後ほどご覧ください、前を見てください」と言います。紙に書いていないことを伝えるのがプレゼンのプレゼンたる所以です。配らないときは、QRコードでスマホにダウンロードできるようにしています。

■紙芝居のように、煽りながら展開

相手をさらに集中させるには、会話の中に接続詞を入れるといい。「しかも」「実は」「続いて」「さて」などの接続詞を、抑揚をつけて入れるといいアクセントになります。口語ならではの語りかける雰囲気が演出できて、場が和みます。池上彰さんは終助詞の「ね」を上手く使いますね。「これがね、地球の裏側なんですよね」という話し方をよくされています。

言い間違いもよくありますよね。プレジデントの取材を受けつつ、「プレジデントの最新号読みました」と言うところを、間違って「ダイヤ(モンド誌)」と言いかけ、「じゃなくて……ごめんなさい」となるケース。言い間違いが多いと信憑性や信頼度が下がります。こういうときは、咄嗟に「ダイヤ……モンドも読むんですけど、プレジデントの最新号読みました」と言い切って切り抜けます。かなり上級テクニックですが、慣れと訓練で、できるようになります。マルチタスクの練習をやると効果的です。例えば、紙に計算式を書きながら、まったく違う内容について話をする練習です。これ、ゲーム世代の若い人だと意外とできますよ。

プレゼンで最大の効果を発揮するのが「繰り返し」と「ブリッジ」という技術。絶対に覚えてもらいたいことや、本質的なことについては、何度も繰り返しながら伝えます。

ブリッジとは、スライドとスライドの間を繋ぐフレーズのことです。たとえば「はい、こちらが交通事故の原因の分析です。事故原因の分析の結果、上位にこんなものがあります」と切れ切れの説明にブリッジを入れると「こちら側が交通事故の統計です。日本ではこういった事故がたくさん起きていて、このような統計です。では、これらの事故がどういう原因で起きているのか、それがこちらの資料です」と繋がります。次のスライドを「呼んでくる」ひと言を入れることで、上手く誘導できます。紙芝居のように煽りながら相手を引き寄せ、スライドを展開するのがコツです。

私は元々エンジニアで、普段は黙々と作業をしていました。あるとき「こんな凄いのをつくった」「こんなところを工夫した」などと言いたくて堪らなくなりました。その「言いたい」が募って、これからは伝える能力を磨かないと生き残れない、と思うようになりました。今は伝える手段がいくらでもありますよね。伝える能力を磨くのは絶対にお得です。ぜひ、みなさんにもその能力を磨いてほしいです。

▼直前→本番check point
(1)直前までtwitterで情報収集
(2)相手の見た目・服装etcから話題を拾う
(3)トークは始めゆっくり、後からspeed up
(4)パワポ「画面ズーム」「蛍光ペン」機能
(5)順序・カウントは指を折る
(6)目線は会場の対角線上を動かす
(7)言い間違いは否定・謝罪ナシで繋げ
(8)「繰り返し」と「ブリッジ」

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西脇資哲(にしわき・もとあき)
日本マイクロソフト業務執行役員
1969年生まれ。日本オラクルなどを経て2009年日本マイクロソフト入社、唯一の日本人エバンジェリストに。14年より現職。累計5万人超、200社以上が受講するプレゼンメソッドの講師。

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(日本マイクロソフト業務執行役員 西脇 資哲 構成=篠原克周 撮影=的野弘路)

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