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なぜエレベーターは(そして仕事も)、一度にまとまって来るのか

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デパートに買い物に行った。行きたい階は、上の方だったから(なぜ男性用のフロアはいつも上階にあるのだ)、エスカレーターだと時間がかかって面倒そうだ。エレベーターにしよう、と決めた。ところがエレベーターの所に行って待っていても、なかなか来ない。しまった、これならエスカレーターの方が早かったか、と思う。

とくにイライラしたのは、3台並んでいるエレベーターが、みな同じような階を同じ向きで動いていることだった。自分は1階にいて、6階にいきたいと思っている。ところが数台あるエレベーターは、皆なぜか、8階あたりを上に向かって進行中だ。何だこりゃ。もっとばらけて動いていたら、待たずにすむのに、と思う。

なぜ、エレベーターというのは、複数台あっても同じような動きをしていて、来ないときはずっと待たせ、来るときは一度にまとまってくるのか?

オフィスビルでも、エレベーターの待ち時間は、たぶん似たような状況にある。あるはずだ、と思う。ただ断定できないのは、最近のオフィスビルのエレベーターでは、どの階にいてどちらに動いているのかを表示せず、単に近くまで来たらランプで知らせるような仕組みが多いためだ。各エレベーターの位置や動きを表示しないのは、それを表示すると利用者がかえってイライラするからだ、と聞いたことがある。
(デパートが現在位置を表示しているのは、逆にたぶん顧客サービスの観点なのだろう。)

それにしても、エレベーターが団子のように固まって動くと、どういう状態が生じるのか? ようやく来たエレベーターに乗り込んでから、あらためて考えてみた。たとえば1分に1台ずつ来る場合と、3分に3台がまとめてくる場合の、待ち時間を比べてみよう。前者では最大待ち時間が1分なのに、後者では最大3分待たされる。そのため、エレベーターホールに並んで待つ人数が、どうしても増えてしまう。つまり、いったん団子運転の状態が生じると、待ち時間にムラが生じるのだ。

では、待っている人数が増えると、どうなるか。当然、乗り降りに余計な時間がかかることになる。すると、エレベーターが階と階の間を移動する平均速度が、どうしても遅くなってしまう。そして、さらに待ちの人数が増えることになる。悪循環である。別にここで待ち行列理論など持ち出すつもりはないが、結局、ある限度まで人数が増えたところで、平衡点に達する。その人数は、平均的に分散して動いているときよりも、ずっと多くなる。

なぜ、エレベーターは適度に分散して動かず、団子になってしまうのか? これは、よく考えてみると当然の理由がある。たとえば、複数台のエレベーターが、同じ方向を、一定間隔をおいて動いている状態を想像してみよう。さて、進行方向の先の階に、利用者がいて、ボタンを押して呼んだとする。すると、その階に一番近い箱が、止まってその客を拾うはずだ。

するとどうなるか。先頭の箱(ちなみに、英語ではエレベーターの箱のことをCarと呼ぶ)は、利用者を乗せるため、平均の移動スピードが、他の箱よりも遅くなる。たくさん乗客を乗せた箱は、降りるために止まる階も増えるだろう。各階停車になりがちだ。他方、一群で動いている最後の箱は、平均よりも速いスピードで移動する。なぜなら、ほとんどの利用者を、前に走っている箱たちが拾ってくれるからだ。

集団で移動する群れにおいて、先頭が遅く、後尾が早くなったら、団子状態が生じるのは当たり前である。だからエレベーターは、はじめは均等に動き出しても、次第に団子運転に陥っていくのだ。


いったん団子ができると、利用者の到着がかなり減るまでは、解消しにくい。エレベーターには追い越しもあるが、追い越して先頭に行った箱は、やはり乗降客を先に拾うので遅くなる。満員通過もあるが、利用者の降りる階は通過できない。だから混んでいると各駅停車になりやすい。

そして、これと同じ事が、わたし達の仕事でも起きているはずだと、気がついた。

仕事というのは、なぜか知らないが、しばしばまとまって、やってくる。忙しいときに限って、さらに依頼だの注文だのトラブルだのが舞い込んでくるのだ。そして、これが、わたし達の仕事を、いっそう非効率で、ややこしいものにしている。

わかりやすいように、工場の例で考えてみる。建物のエレベーターではなく、工場の機械を想像しよう。機械は別に、階を移動したりはしない。しかし、かわりに、時間のなかを移動する、と考えてみる。1階ずつではなく、1日とか1時間という単位(タイム・バケット)ごとに、動いていく、と。載せるのは、利用者ではなく、加工対象のワークである。そのワークごとに、所要時間(=移動日数)が決まっていく。ちょうど利用者ごとに行き先の階が決まっているように。

ただ、エレベーターとは違い、別々の客(=異なる種類の品目)を混載することは、普通ない。だから機械の処理速度自体は、どれだけ注文が混み合って、その機械の前に未加工品の在庫の列が並んでいようと、変わらない、と思われている。いや、セットアップ・タイム(段取り時間)を考えれば、ロット数が大きいほど、むしろ全体の効率が上がるはずだ、と。

ところが、工場をよく観察していると、加工待ちの行列が増えるほど、機械の平均的な処理速度が落ちていく現象が、しばしば観察される。その主な理由は、モノ探しである。手前の行列が増えるほど、次に加工すべきワークの所在が分かりにくくなるからだ。加工速度は変わらなくても、セットアップ・タイムが長くなってしまうのだ。

とくに、個別性の高い多品種の組立加工をしている場合(今の日本ではたいていそうだが)、それに必要な部品が全部そろっていなかったり、ツールや金型を待ったりする可能性が増える。しかたなしに、製造順序を入れ替えて、別のワークを探しに行かなければならない。現場の製造順序が入れ替わると、下流工程や出荷日にまで影響が及ぶ。だから社内外の調整作業も発生する。本来そんな作業は不要だったはずなのに、余計な仕事が増えるのだ。

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