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仏首相、燃料税増税の延期を発表 抗議行動受け

パリ中心部では車が燃やされたり、商店が損傷を受けたりした。逮捕者は数百人に上った AFP

仏政府が発表した燃料税増税に対する全国的な抗議行動を受けて、エドゥアール・フィリップ仏首相は4日、来年1月1日から予定されていた増税の実施を6カ月延期すると発表した。

フィリップ首相はテレビ演説で、政府は国民の怒りを見ているし、耳にもしていると述べた。

3週間前から続く抗議行動によって、仏各地の主要都市で損害や破壊が続いている。

フランスでは、全車両が視認性の高い蛍光黄色の服を搭載するよう法律で義務付けられている。この黄色のベストを着た人たちが道路で抗議をしているため、抗議行動は「ジレ・ジョーヌ」(フランス語でイエロー・ベスト、黄色いチョッキの意味)と呼ばれる。

燃料税増税に反対する運動として始まった「ジレ・ジョーヌ」はこのところ、政府に対する広範囲の怒りを反映し、勢いを増している。

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エマニュエル・マクロン仏大統領は昨年5月、抜本的な経済改革を実行するとの大規模公約を掲げて大統領選に勝利した。しかしここ数カ月、マクロン氏は「富裕層のための大統領」だとの批判が高まり、支持率は急速に低下している。

政情不安が始まって以来、これまでに死者4人が出た。また、結果として広がった暴力や破壊行為は広く非難されている。

首相の発言内容

仏政府は来年1月1日から、自動車燃料に対する炭素税と呼ばれる増税を実施予定だった。しかしフィリップ首相は、これを6カ月延期すると発表した。生活水準の悪化を緩和するため、増税と並行してどのような対策が可能か、仏全土で協議するためという。

フィリップ首相はまた、この冬予定されていたガス代と電気代の引き上げを中止し、車両の排ガス試験に関する規則厳格化も延期するとも述べた。

マクロン大統領はこれまで、気候変動に取り組み、国の財政赤字減少の目標を達成するため、増税や燃料代引き上げは必要だと主張してきた。それだけに今回の延期は、政権にとっては大きな譲歩となる。

フィリップ氏は与党「共和国前進」所属議員との会合後、「この怒りを見なかった、あるいは聞かなかったことにするには、耳をふさぎ、目を閉じるほかない」と語った。

「黄色のベストを身につけたフランス人たちは、税の撤回と、納税するための仕事を求めている。それは我々が望むものでもある。もし私が説明しきれず、政権与党も仏国民を説得できなかったなら、何かを変えなければならない」とフィリップ氏はテレビ演説で付け加えた。

「国家の団結に危険を及ぼすに値する税金などない」

ただフィリップ首相は、暴力の中止が必要だと強調。「今後も抗議行動を続けるなら、事前に通告し、穏やかに実施する必要がある」と述べた。

さらに首相は国民に、減税を要求しながら公共サービスの改善を期待しないよう釘を刺した。

怒りが広がっている理由

マクロン氏は経済再建の主張を基盤として大統領に選出された。失業率を下げ、経済に弾みをつけることで、仏国民の生活を向上させると公約していた。

しかし、そのような変化は起きていないと、多くの人が感じている。仏公共政策研究所が発表した2018年度予算案の分析もその一例だ。分析によると、仏政府の政策下では、下位25%の低所得世帯の収入は大幅に減少するか横ばいのままとなる。

この分析では、中所得世帯の収入は若干増加する。しかし最も利益を得るのは、既に富裕層である上位1%の高所得世帯だという。引退済みの人に対する分析はさらに悪い。引退した人はほとんど全員が収入を減少させるという。

発表への反応は

政府の今回の譲歩に、抗議する人たちが満足するかがまずは注目される。

仏北西部ロリアンの抗議行動参加者の一部は、給油施設の封鎖を続けると明言している。次の土曜日となる8日に、さらなるデモを求める声もある。

「ジレ・ジョーヌ」の広報担当者バンジャマン・コシー氏は、運動は増税の延期ではなく中止を求めていると述べた。

コシー氏は仏南部トゥールーズで、クリス・ボックマン記者に対し、「今日発表された対策に、我々は全く満足していない。理由は単純で、対策は不十分だからだ」と述べた。

「仏国民は、全面的な政治変革を求めている。過去30年間続いてきたやり方の変更を求めているのだ」

「増税と公共サービスの質の低下に、我々はうんざりし、疲れている。家計をやりくり出来ない人が毎月どんどん増え、路上生活者も増えているのに、税金は上がり続ける。そのお金はどこだ? どこで使われているんだ?」

今週末も続くとみられる首都パリでの暴力的な抗議行動を懸念し、仏サッカーリーグ1部リーグ・アンのパリ・サンジェルマンは、8日にホームスタジアムで実施予定だった試合の延期を決めた。

抗議者は誰なのか

「ジレ・ジョーヌ」運動は、ディーゼル燃料への税金増税に反対する動きとして始まった。フランスにはディーゼル燃料を使う車が多い。またディーゼル燃料は、他種の燃料に比べて税率が低い状態が続いていた。

ディーゼル燃料の価格は過去12カ月で約23%上昇し、平均で1リットルあたり1.51ユーロ(約194.61円)となった。この価格は2000年代前半以降で最も高い。

価格上昇について、9カ月に及ぶ世界原油価格増加の影響だとマクロン氏は主張しているが、一方で化石燃料での増税は、再生可能エネルギーへの投資に必要だとも述べている。

仏政府は2019年1月1日から、ディーゼル燃料1リットルあたり0.065ユーロ、ガソリン1リットルあたり0.029ユーロの増税を決定していた。最終的な抗議行動のきっかけはこの決定だったとみられていた。

抗議する人たちは、都市部を出れば生活に自動車は不可欠で、大統領はそうした実態を把握していないと話している。

地方の疎外化や生活費の高騰、マクロン大統領の経済政策一般に対する怒りなどを反映し、運動は拡大している。

抗議行動にはっきりとした指導者はおらず、ソーシャルメディア経由で勢いを増している。極左の無政府主義者から極右の国家主義者、その間にいる多くの中間層まで、参加者の幅は広い。

ここ数日で、救急車の運転手や学生らが、それぞれの生活に関係する改革政策に反対する抗議行動を始めた。

<解説>マクロン氏の困難――ヒュー・スコフィールド BBCニュース(パリ)

これで十分なのか。それが最初の疑問だ。「ジレ・ジョーヌ」たちは、政府の譲歩を大きな勝利だと感じ、抗議行動を終了させるのだろうか?

今も、より多くの対応を求めるたくさんの声が聞こえてくる。なぜ増税中止ではなく、延期するだけなのかと。政府が来年6月、再び予定通り増税しないという保証はどこにあるのか。さらに圧力をかけるべきだという声も、出てくるかもしれない。

ただし、譲歩で全員を満足させる必要は、仏政府にはない。政府に必要なのは、「ジレ・ジョーヌ」内にいる「穏健派」の相当数を満足させ、バリケードから引き離すことだけだ。

もしそうなれば、運動は勢いを失うだろう。そうすれば、運動がすぐには終わらなくても、終結は視界に入ってくる。

私はそうなる方に賭ける。世論調査では、政府の譲歩に多くの支持が見られるだろう。「ジレ・ジョーヌ」の集団抗議は揺らぎ始めている。ただ、強硬派による抗議行動は8日にも行われる。

強硬派の抗議は、最後の抵抗になるかもしれない。しかしそれでも、だからこそ、危険な瞬間になる可能性もある。

  • スコフィールド特派員の解説全文はこちら(英語)

(英語記事 France protests: PM Philippe suspends fuel tax rises

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