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イヤガラセの道具と化した「憲法改正」 <改憲案の背景><改憲ってほんとにするの?> - 菅野 完

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気づけば報道でよく目にするようになった「改憲4項目」。これはいつ頃、どのように出てきたのでしょうか。その背景にあるものは。そして改憲勢力が憲法改正に焦り、こだわる理由とは。

野党欠席のまま強行開催された衆院憲法審査会。手前が森英介会長(2018年11月29日、写真提供:共同通信社)。

改憲勢力の進め方の不穏な動き

今の臨時国会で初めてとなる衆議院の憲法審査会が、11月29日に開かれました。開催は与野党の合意によるものではなく、森英介会長(自民)による職権での強行開催。取り扱う内容が憲法という国家の根本問題であるため、「静かな環境での議論」が大前提とされてきたこれまでの国会憲法審査会の長い伝統から考えると、会長職権による強行採決は極めて異常な事態と言えましょう。

臨時国会冒頭、安倍首相は、所信表明演説や代表質問への答弁で、改憲への意気込みを力強く語っていました。そのためでしょうか、産経新聞をはじめとする所謂「保守系」メディアでは、臨時国会冒頭から、憲法審査会の早期開催を求める声や、開催を拒否する野党を攻撃する論調が目白押しの状態でした。しかし、彼らが野党を批判するのはいささか筋違いです。

本来であれば、10月に行われた自民党の党役員人事異動で自民党の改憲推進本部長に就任した下村博文氏が、衆院の憲法審査会の理事に選任されるのが順当です。しかし、下村氏は国会冒頭に不用意な発言をしたため、理事就任が困難となりました。このように、衆院憲法審査会開催が遅延した原因は、野党の反発だけでなく、自民党側の党内都合にもあります。

にも関わらず、開催の遅延を「野党の反対」だけのせいにする保守メディアの論調は、詭弁と断ぜざるを得ないでしょう。

11月29日の衆院憲法審査会が、会長職権で強行開催されたことにより、さまざまな憶測が飛び交うこととなりました。残り少ない今の臨時国会の会期のなかで、憲法審査会を開催できるのは、あと一回が関の山です。いかに安倍首相が国会冒頭で改憲への意気込みを熱く語ったとはいえ、あと一回しか開催できない憲法審査会に、「自民党の改憲案」を提案することなどできない……と考えるのが、常識的な判断でしょう。

しかし、これまでの安倍政権の国会運営をみるとこの「常識的な判断」が通用しないことは自明です。特定秘密保護法案、安保法案、働き方改革関連法案、入管難民法改正案などなど、安倍政権が「重要」と位置付ける法案は、いかに甚大な影響のある法案でも、ことごとく強行採決されてきました。そのため、野党のみならず、自民党と連立を組む公明党からも「あと一回の開催とはいえ、自民党は、改憲案を提示してくるのではないか?」と危ぶむ声が出てきているのです。

24年憲法草案と改憲4項目の違い

ところでみなさん、自民党の憲法改正案をご存知でしょうか。

「自民党の改憲案」として最も有名なものは、平成24年に策定された「日本国憲法改正草案」(以下、「24年憲法草案」と呼びます)でしょう。平成24年といえば、民主党政権時代。つまり、自民党が野党だった時代です。野党だった自民党は「結党以来、憲法改正を党是とする政党」(注:結党時の自民党の「党是」は、「憲法改正」ではなく「自主憲法制定」でした。

いつの間にか「自主憲法制定」が「憲法改正」に後退した自民党の為体(ていたらく)についての解説は別の機会に譲ります)としてこの憲法草案を策定したのです。そして、24年憲法草案を掲げ、政権奪取選挙に臨み、みごと政権に返り咲きました。その後、幾度も国政選挙が行われましたが、その間、自民党が24年憲法草案を撤回した痕跡はありません。第二次安倍政権誕生以降ずっとあの憲法草案を掲げて選挙に臨み選挙に勝ち続けてきたのです。

したがって、この24年憲法草案こそが、今の臨時国会に自民党が提出する改憲案である……と考えるのが普通ですが、実態はそうではありません。

自民党は、数度の選挙の洗礼を受けてきたはずの24年憲法草案を、いつの間にか引っ込めてしまっているのです。その代わりに登場したのが、今年の3月に初めて公表された「4項目」と呼ばれる改憲案です。「憲法9条への自衛隊明記」「緊急事態条項」「参院の合区解消」「教育の拡充」からなる「4項目」は、24年憲法草案とは似ても似つかないものです。

例えば憲法9条の扱い。24年憲法草案では「国防軍の創設」「軍法会議の新設」とフルスペックの再軍備を謳っていました。しかし、この路線から大幅に「後退」(あくまでも「自民党からみたら後退」という意味です)し、「4項目」では、9条1項2項はそのままで、9条の2を追加して、そこで自衛隊を明記するだけという「何のための憲法改正なの?」と首を傾げざるを得ない内容になってしまっています。

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