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戦後世界秩序の激変の下で混迷深める安倍外交(その1)

 〔以下の論攷は、市民の意見30の会発行の『市民の意見』No.171、2018年12月1日付、に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕
 

はじめに

 戦後世界秩序は今、大きく変化し始めました。その最大の要因はトランプ米大統領の登場です。「アメリカ第一主義」を掲げ、世界共通の利益よりもアメリカ独自の利益を優先し、交渉ではなく取引を重視する大統領の立場は、アメリカの内外政治に大転換をもたらしています。

 このような転換は日米同盟を主軸としてきた日本外交にも大きな影響を及ぼしています。とりわけ、6月の米朝首脳会談の開催によって朝鮮半島の非核化と平和体制の構築に向けての基本的な合意がなされ、日本周辺の国際環境を大きく変えました。これは南北朝鮮間の武力衝突の回避と緊張緩和措置の具体化などの形で、現在も進行中です。

 戦後世界秩序の激変に対して安倍政権は適切に対応できず、国際的な孤立を深めています。朝鮮半島の非核化・平和構築の足を引っ張り、拉致問題や北方領土問題を進展させることもできず、外交面で安倍政権は混迷の度を強めているのが現状です。

 

暗雲が漂い始めた日米関係

 世界秩序の激変は日本にも巨大な影響を及ぼしました。長い間、アメリカに追随するだけで独自の外交理念とビジョンを持たない日本は、トランプ大統領の気まぐれな外交攻勢に翻弄され、日米関係にも暗雲が漂い始めています。

 安倍首相はこれまで避けてきた貿易に関する2国間協議に引きずり込まれてしまいました。「日米物品貿易協定(TAG)」と看板をかけ変え、「全く異なる」と弁解していますが、基本的な内容は「自由貿易協定(FTA)」と変わりありません。合意文書の翻訳を日本政府が改ざんした疑惑まで生じています。

 日本との新たな通商交渉で、ムニューシン米財務長官は為替介入をはじめとする意図的な通貨安誘導を阻止する「為替条項」の導入を要求すると表明しました。物品だけの交渉ではない新たな「火種」の登場であり、このような攻勢は今後も強まるにちがいありません。

 米中間選挙で上下両院がネジレ状態になった結果、日本への圧力はさらに強まるとの観測が出ています。国連での決議をめぐって、核兵器軍縮問題でも日米の見解の相違が表面化しました。従米一本やりでやってきた安倍外交の真価が問われることになります。

 今後の貿易交渉では、自動車輸出を守るために農産物の関税引き下げを受け入れることになるでしょう。関税はTPPの水準を越えないとされていますが、どうなるかは分かりません。すでに、種子法の廃止で農業生産にとって大切な種子が多国籍企業の餌食とされ、「農業改革」によって家族経営の中小零細や兼業農家の切り捨てが始まっています。そのうえ、輸入農産物の関税が引き下げられれば日本の農業と農村は壊滅するでしょう。 

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