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“結婚したら専業主婦”は下流への入り口

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お金持ちの男性と結婚して主婦になった女性は「人生の勝ち組」なのだろうか。そうとは限らない。実際には夫との離別・死別によって「アンダークラス」に転落している女性が相当数いるからだ。どんな女性たちが転落してしまうのか。データを紹介しよう――。

※本稿は、橋本健二『アンダークラス』(ちくま新書)の第5章「アンダークラスの女たち」の一部を再編集したものです。

■非正規女性の人生をデータからみる

日本の社会学者らが10年に1度行っている「社会階層と社会移動全国調査」(SSM調査)によると、非正規労働者のうち、非常勤の役員、管理職、資格や技能をもった専門職とパート主婦を除いた人々は、2015年現在で約928万人いると推定される。

この層の平均個人年収は186万円。正規労働者の平均個人年収が370万円なのに比べて大きな差がある。

これまでは正規も非正規も同じ労働者階級としてまとめられてきたが、非正規の人たちは労働者階級とは別の階級をなしていると考えられる。そこで、この階級に属する人々を「アンダークラス」とよび、著書『アンダークラス』(ちくま新書)でその実態を考察した。

本稿では、アンダークラスの女性たちが、これまでどのような人生を送ってきたのかをみていくことにする。

SSM調査では、これまでに就いたすべての職業を、無職の期間を含めて尋ねている。しかも結婚したことのある人については結婚したときの年齢、そして離別・死別したことのある人については、そのときの年齢を尋ねている。だから質問紙による調査でありながら、回答者のこれまでの生活歴をかなり詳しく知ることができる。生活歴は配偶関係、つまり未婚・離別・死別のいずれであるかによって大きく異なるはずだから、区別してみていこう。

■未婚者の約6割は最初から非正規

図表1は、職業経歴の概要を示したものである。

(画像=『アンダークラス』使用図版をもとにプレジデントオンライン編集部作成)

未婚者は最初から59.8%までが非正規労働者で、正規労働者が35.7%だった。20歳から59歳までの若年・中年アンダークラス男性で最初から非正規労働者だった人は43.4%であり、これを16%も上回っている。離職を経験したことのある人は76.8%である。最初の仕事を辞めた理由は多様だか、「よい仕事がみつかったから」(30%)、「職場に対する不満」(28.8%)が多かった。「家庭の理由」(2.5%)は、ごくわずかである。そして最初の仕事を辞めたあとどうしたかを尋ねると、非正規労働者が42.8%と多く、次に多いのが無職(29.4%)で、正規労働者は17.6%に過ぎなかった。

表には示していないが、さらに詳しい集計を行ってみると、最初の仕事が正規労働者だった人のうち、次の仕事も正規労働者だった人は33.3%に過ぎず、非正規労働者が35.9%、無職が30.8%だった。最初の仕事を辞めたのを機にアンダークラスへと流入したり、あるいは無職期間を経てアンダークラスに流入したりした人が多いことがわかる。未婚者のほとんどは59歳以下だから当然なのだが、若年・中年アンダークラス男性と共通点が多いことがわかる。

■「家庭の理由」で最初の仕事を辞める

離死別者は、まったくようすが違う。最初に就いた職業は正規労働者が多く、離別者71.7%、死別者で86.2%である。死別者の方が多いのは、離別者より年齢層が高く、最初の職は正規雇用が当たり前という時代に就職したからだろう。離職経験のない人は、調査対象者には一人もいなかった。そして最初の仕事を辞めた理由をみると、「家庭の理由(結婚、育児など)」が約6割(離別者58.1%、死別者62.1%)に上っている。そして離職後は、離別者で48.8%、死別者で61.7%が無職となっている。アンダークラス女性には、結婚を機に無職となった経験をもつ人が多いということがわかる。

離死別者の職業経歴を、もう少し詳しくみてみよう。図表2は職歴データを用いて、結婚前後と離死別前後のようすをみたものである。

(画像=『アンダークラス』使用図版をもとにプレジデントオンライン編集部作成)

離別者・死別者とも、結婚直前には半分以上の人が正規労働者だった。非正規労働者が離別者(26.4%)で多く、死別者(8.6%)で少ないのは、やはり年齢層の違いによるものだろう。しかし結婚後は、正規労働者が大幅に減る。離別者ではわずか7.8%、死別者でも17.2%である。離別者ではその分だけ無職が増えているが、死別者では非正規労働者も同時に増えている。結婚を機に、正規労働者からパート主婦に、または専業主婦に転身したようすが、くっきりとみてとれる。

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