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「胃がんは防げる」知られていない“医療の常識”と医療否定本がはびこる日本の現状

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がんは防げる——著名人ががんで亡くなると、こうした話をよく耳にする。この点に関して、予防医療の専門家でもある筑波大学附属病院つくば予防医学研究センターの副部長・鈴木英雄氏は「早期で発見できれば胃がんは防げる病気」だと強調する。堀江貴文氏の著書『むだ死にしない技術』『健康の結論』を監修する、予防医療普及協会の設立メンバーでもある同氏に詳しくお話を伺った。【取材:島村優】

胃がんのほとんどはピロリ菌が原因

——著名人や有名人の方が、胃がんで亡くなると「防げたかもしれない胃がんだった」という話を耳にします。堀江さんの本—『むだ死にしない技術』というタイトルもすごいですが—この本を読んでもやはり同じことが書いてあります。胃がんは防げるというのは本当なのでしょうか。

「むだ死に」というタイトルは、実は版元ともかなり綱引きがあったんですけど、議論を呼んだとしてもまず多くの人に伝えたいことがあったので、最終的にこの書名で発売したという経緯があります。

胃がんの原因がピロリ菌という感染症であること、そしてその多くは防げるということに関しては、消化器を専門にする医者の中では20年ほど前から常識のように考えられています。エビデンスが発表されたのは2001年。

——そうなんですね。

ただ、まだまだ一般の人には浸透してないかなというのが実感です。言葉を知っている人は多いと思いますが、ピロリ菌が胃がんの原因だということはあまり知られていません。

上村直実先生(現国立国際医療研究センター国府台病院・名誉院長)というピロリ菌の権威の先生が、ピロリ菌に感染している人と感染していない人を追いかけたところ、感染していない人からは胃がんが見つからなかったけど、感染している人からは10年で約3%発見されたんです。これがアメリカの有名な医学雑誌に掲載されたのが2001年です。

——比較的最近になって科学的な根拠が見つかったと。

その後にも、同じようなデータがいろいろと見つかって、早期胃がんを内視鏡治療したあとでピロリ菌を退治した人とそうでない人で分けると、退治していない人は別の部位からの再発が多かったという研究結果も出ました。

——胃がんが手遅れにならないためには、まずはピロリ菌を検査すれば安心と考えて良いのでしょうか。

発がん因子は他にもありますが、基本は胃の中にピロリ菌がいて、そこにタバコや塩分などが加わることでよりがんになりやすくなると考えられています。ピロリ陰性の胃がんというのは1%以下で、非常に稀です。ただし、ピロリ菌に感染していた人が除菌に成功してもここまでリスクは下がりません。

そのため私たちはピロリの除菌と、その後は年に1回胃カメラを勧めています。ごくまれにピロリ以外の因子で胃がんになったとしても早期で見つけられますし、食道がんが見つかることもあります。こうした対策を取っていれば、基本的には胃がんで命を落とすことはありません。

——そこまで胃がん対策が進歩しているという情報は、確かに一般にはそれほど広まっていないように思います。

私たちの活動のきっかけでもあるんですけど、堀江貴文さんの「ホリエモンWITH」というメディアで各界のイノベーティブな人物にインタビューするという企画があります。その中で上村先生に取材することがあって、堀江さんもインタビューで初めて「胃がんの多くにピロリ菌が関係している」ということを知ったそうなんです。

そういう、医療関係の人にとっては常識だけど実は一般の方が知らない情報、というのを知ってもらうことには意義があるんじゃないか、と盛り上がって発信してみようかという流れで生まれたのが現在の予防医療普及協会です。

予防医療にクリエイターが関わる理由

——そうだったんですね。予防医療普及協会にはどんなメンバーが参加しているのでしょうか?

現在、取り組んでいる様々な病気の専門医に加えて、クリエイターやデザイナーといったビジネス出身で世の中に「伝えること」「表現すること」を専門にしているメンバーも含まれています。

専門を持ったドクターとプロモーションが得意なメンバーが、世の中に伝えたいことと実際にできそうなことを考えて、最初の活動として選んだのがクラウドファンディングでピロリ菌の検査キットを買ってもらうプロジェクトです。

——国内最大のクラウドファンディングReadyforで実施したプロジェクトはかなり反響があったようですね。

このキャンペーンはかなり手ごたえがあって、1000万円が目標のところ1400万円弱集まって、支援者総数でも当時の歴代1位になりました。

想像以上の反響があって、これだけの人が検査をしてくれたということは、そのうちの少なくない人の命を救えたんじゃないか、という感触がありました。それから本格的に組織にしていくことに決めて、一般社団法人を設立しました。

Ready forのプロジェクトページ

——鈴木先生自身が、医師として予防医療普及協会の設立メンバーに加わったのには、どんな思いがあったのでしょうか。

私たちは、例えばピロリから来る胃がんでも、これまでに何百例、何千例という治療が間に合わなかったケースを見てきています。初めて診察した時にすでに手遅れという患者さんも珍しくありません。胃がんという結果に対処しても、原因のピロリ菌の問題をどうにかしないといけないという思いはずっと抱えていたんです。

今、毎年胃がんで5万人が亡くなり、大腸がんはそれを上回る数の人が亡くなっているんですけど、こうした万単位で亡くなっている人たちも、予防医療に力を入れることで救える可能性があると感じています。一方で、こうした情報がまだ世の中に広がってないことをもどかしく思っています。

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