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ジョージHWブッシュ大統領の手腕

トップ写真)Reagan with vice president Bush at the 1984 election

宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)

【まとめ】
・ステーツマンシップを体現した最後の米大統領。
・戦争体験がもたらしたHWブッシュの政策判断。
・G20 米中・日露首脳会談で見えたもの。

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真説明と出典のみ記されていることがあります。その場合はJapan In-depthのサイトでお読み下さい。】

現地時間の11月30日、41代ジョージHWブッシュ大統領が94歳で亡くなった。8月末にはマケイン上院議員が逝去したが、米メディアは前回以上に、このブッシュ41の功績と人柄を偲ぶ追悼記事や特別番組を「これでもか、これでもか」と報じていた。あたかもトランプ氏の登場で失われた古き良きアメリカ政治を懐かしむかのように。

ちなみに、息子のジョージWブッシュも後に43代大統領となったが、日本ではこの親子を「ブッシュ・シニアブッシュ・ジュニア」とか「パパ・ブッシュ息子ブッシュ」などと呼んでいる。だが、米国ではミドルネームが異なる息子をジュニアとは呼ばない。ブッシュ41、ブッシュ43と呼ぶ方が一般的だ。まあ、どうでも良いことなのだが・・・。

ブッシュ41については今週のJapan Timesと産経新聞に追悼のコラムを書いたので乞う一読。筆者が在米日本大使館政治部に赴任したのは1991年10月、時の大統領がブッシュ41だった。当時からホワイトハウス記者会見の雰囲気は厳しかったが、決して敵対的ではなかった。今のような喧嘩腰のやりとりはちょっと記憶にない。

ブッシュ41は真の意味で米国の本質的に善良なエリート層出身のステーツマンシップを体現した最後の大統領だったと思う。その後の大統領は、クリントン(育ちが違う)、ブッシュ43(父親と同じにはなり切れなかった)、オバマ(出身や背景がまるで違う)、トランプ(全てが異様なほど違う)、誰であれブッシュ41には遠く及ばないからだ。

ブッシュ41は湾岸戦争の目的をクウェート解放に限定したが、ブッシュ43は父親が拒否した「バグダッド侵攻とイラクの政権交代」という禁断の提案を易々と受け入れてしまった。イラク戦争の首謀者はチェイニー副大統領とラムスフェルド国防長官だが、前者はブッシュ41政権の国防長官だった。チェイニーは確信犯だったのだ。

写真)George W. Bush and former President George H.W. Bush
出典)White House

なぜブッシュ43はかくも弱かったのか。結局は戦争従軍体験の有無ではなかったかと思う。ブッシュ41は本当の戦争の悲惨さを知っている。彼自身も小笠原諸島で死にかけたし、間近で多くの戦友の死を見てきた。だからこそ、クウェート解放後に準備もなくイラクに侵攻すれば、夥しい数の米兵が死ぬことを恐れていたのではないか。

これに対し、ブッシュ43は「戦争は短期、米軍は解放軍として歓迎される」というラムスフェルドらの説明を信じてしまった。確かに戦争は短期で、米兵は死ななかった。当時筆者はバグダッドにいたが、多くの米兵はイラク戦争ではなく、その後のイラク占領時に武装勢力のテロ攻撃で亡くなっている。やはりブッシュ43は弱かったのだ。

〇東アジア・大洋州

先週末はブエノスアイレスで米中首脳会談が行われた。ホワイトハウスの発表によれば、「額は未定なるも、今後90日間に中国が米国から多額の農産物、エネルギー、工業産品を購入する一方、強制的技術移転、知財窃取、非関税障壁、サイバー攻撃、サービス、農産品につき中国が構造変革を行うことで合意した」そうだ。

米国は予定されていた25%への関税引き上げを凍結するが、上記合意が実行されない場合には引き上げを実施するという。トランプ氏は大はしゃぎだが、内容的には中国が米国の要求を満たすとは到底思えない。この発表文をよく読めば、報じられるような「一時休戦」ですらないことが分かる。米中の確執は今後も長く続くだろう。

写真)G20サミット(2018)
出典)首相官邸Facebook

〇欧州・ロシア

ブエノスアイレスでのG20 会合では日露首脳会談も行われた。プーチン大統領は日本側と「1956年宣言に戻ることで一致」し、ラブロフ外相を対日協議を監督させ、外務次官を大統領特別代表に任じたという。北方領土を日ソ・日露二国間交渉の観点から論ずるか、米中露間の戦略的覇権争いの視点で論じるのか。この点に関する日本国内の議論はまだ本格化していない。

筆者が個人的に注目するのは12月7日に予定される保守与党キリスト教民主同盟(CDU)党首選でメルケル首相の後任党首に誰が選ばれるかだが、今のところ、同党幹事長が優勢なようだ。メルケル氏は首相続投を表明しているので、当面は二頭立ての馬車ということになるが、これでドイツ内政は安定するのかが気になる。

〇中東・アフリカ

アルゼンチンでのG20会合にサウジの皇太子が何事もなかったかのように参加した。プーチン大統領とはハイタッチ(英語ではhigh fiveという)で挨拶を交わす等ご機嫌だったが、33歳の若い指導者には相当の精神的重圧ではなかったかと勝手に心配している。皇太子の政治家としての力量を占うには情報がまだ足りないが・・・。

〇南北アメリカ

米国ではブッシュ41逝去のニュースばかり。

〇インド亜大陸

 特記事項はない。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

出典)wikimedia commons

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