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内部告発を受けた記者さんへの企業側の対応について

今年も3月7日の東京プリンスをもって日本監査役協会主催セミナーの全国ツアー(大阪2回→名古屋→福岡→東京3回)が終了しました。今年は内部通報・内部告発への監査役対応ということで、レジメでは設例を3つご用意いたしましたが、時間の関係で、残念ながらどこの会場でも1つくらいしか解説できませんでした。そのなかで、皆様方から反響が大きかったのが以下の設例でした。

(設例3)

某新聞社の社会部記者からM社広報に電話連絡があった。「御社の件で、M社従業員と名乗る人から、『M社の○○部門のことだが、販売商品に関する試験データの改ざんが長年行われている。試験用の製品を別に作って、これを検査機関に持ち込んでいる』との告発があった。こちらとしても、すぐに記事にはできないので、とりあげず真偽を取材させていただきたい」との話。

M社広報は、とりあえずもう少し詳しく聞かせてほしいとして、社会部記者に尋ねたところ、たしかに試験データ改ざんを疑わせる書類のコピーを入手している気配があったが、その告発者が事情をよく理解していないこと(つまり噂に基づいて告発したこと)から、指摘された内容には多くの事実誤認があった。ただし社内で調査した結果、告発事実に近いデータ改ざんは長年にわたって行われていたことが判明。
M社としては、これにどう対応すべきか。

最近のエントリーにコメントをいただいている皆様方のご意見からすれば、過去の不正は明らかにすべき、とりわけマスコミから取材を受けているのだから当然のことだ、と思われるかもしれません。でも、「後だしジャンケン」の発想ではなく、取材を受けたときの役員さんの印象からすると、過去に重大なコンプライアンス違反があった、というのは半信半疑でしょうし、社内調査の結果と社内の噂とのズレが認められるのであれば、取材に対して「そのような事実はございません」と回答することも虚偽ではないわけで、とりあえずは社内調査の結果を公表しない、とするところが多いのではないでしょうか。(ここからが本当の解説部分ですが、そこはブログで書くにはちょっと長くなりますので省略させていただきます)

ところで、最近、上記設例によく似た事件が発生しております。朝日新聞の記者さんから取材を申し込まれた巨人軍の経営執行部の対応に関するこちらの記事(巨人対朝日新聞・高額契約金報道」で勃発)ですが、本件はたまたま話題性が強い事件であるために、大きく取り上げられておりますが、実は似たような件は結構どこでも発生している、ということであります(上記設例も、私が経験した実例を修正したものです)。どなたが機密資料を持ち出したのかはわかりませんが、保管を厳重にしていたからといって、機密情報が外部に流出してしまうおそれがなくなるわけではございません。上記ニュースによりますと、ジャイアンツの常勤監査役さんが朝日新聞の社会部記者さんと面談されたそうですが、やはりこういった有事において監査役さんが前面に出ることも現実にありえる話です。

また、内部の機密資料を持ち出す・・・ということに対して、内部告発者を刑事告訴したい、というのが企業のホンネではないでしょうか。正当な目的(たとえばマスコミに対する公益通報目的)で社内の機密文書を社外に持ち出す行為は形式的には窃盗罪に該当するかもしれませんが、おそらく違法性は阻却されるでしょうし、不正競争防止法による刑事罰も公益通報目的による情報取得行為には適用されない可能性が高いと思われます。ただし巨人軍の事例では、かなり以前の「業界ルール違反のモラル」が問われているもので、これは公益通報者保護法上の公益通報にはあたらないので(2012年2月現在、434本の法律違反行為が公益通報の対象となります)、告発者による機密情報の外部持ち出しにつきましては、その目的や持ち出し行為の態様、他の立証手段の有無等を検討したうえで違法性の有無が検討されることになります。

会社としては、「とりあえず否定」といった発表をしますと、さらに有力な証拠が出てきて、「なんでウソをついたのか」と反論され、さらに窮地に陥る可能性もあります。米国ではゴールドマンサックスの元社員の会社批判が大きな話題となり、GS側は反論されていないみたいですが、その背景には「ここで反論したら、何が飛んでくるかわからない。とりあえず様子をみよう」といった気持があるからではないかと。

朝日側も、信憑性には十分に自信があるようなので、ジャイアンツ側の今後の対応も含めて、注目されるところです。

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