- 2012年03月15日 23:00
みんな大好き自衛隊
自衛隊「良い印象」9割超=震災支援評価97.7%-内閣府調査(時事通信)
内閣府が10日発表した「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」によると、東日本大震災に関わる自衛隊の災害派遣活動を「評価する」と答えた人は97.7%に達した。自衛隊の印象について「良い」と答えた人は91.7%で、1969年の調査開始以来、過去最高。震災活動の評価が自衛隊の好印象につながったとみられる。
調査は1月5日から同22日まで全国の成人男女3000人を対象に個別面接方式で実施し、有効回収率は63.1%。
自衛隊の印象について「良い印象を持っている」と答えた人は、「どちらかといえば良い印象」と合わせて91.7%で、3年前の前回調査より10.8ポイント増加した。「悪い」は5.3%で8.8ポイント減少した。
相変わらず、自衛隊はどこでも好意的に迎えられているみたいですね。自衛隊員だって公務員なのですが、武装の有無でこうも違うのでしょうか。公の場で官僚なり自治体職員なりを罵倒しては喝采を浴びる政治家に事欠かない昨今ですが、紛れもなく公務員であるはずの自衛隊員を前に同じパフォーマンスを披露した政治家を、私は見たことがありません。政権交代直後、驕り高ぶる民主党議員の中には早速、報道陣の前で官僚を詰って見せたバカ閣僚もいたものですが、それが自衛隊員の前となると随分と恭しい対応であったのが印象に残っています(参考、みんな自衛隊が好き)。ワシントンは父親が大切にしていた桜の木を切り倒してしまいましたが、斧を持ったまま謝りに行ったら許されました。一般の公務員も政治家に会うときは武器を携えていった方がいいのかも知れません。迷彩服と小銃がすぐに準備できなくとも、取り急ぎ金属バットとか鉄パイプとか角材とか、その辺を手に構えて接するようにすれば、自衛隊員と同じようにしかるべき敬意を以て扱われるようになる……と良いですね。
それにしてもまぁ、どうしてこう自衛隊ばかりが肯定的に評価されるのでしょうか。被災地では自衛隊以外の公務員も電力会社の社員も活動したわけですが、決して好意的には見られていないように思います。まず先に軍隊ありきの思想が根底にあって、軍人さんの活躍を日頃から期待しているところもあるのかも知れません。災害派遣活動に当たったのは自衛隊だけではないにも関わらず、あくまで賞賛を集めるのは自衛隊なのです。これがもし、自衛隊ではなくレスキュー活動専門の部隊であったならどうなのか? 「人殺しの練習(埼玉県知事上田清司談)」に時間を割いている人ではなく、元から救援活動に特化した集団であればさらなる効果を上げられたのではないかとも考えられるところですが、しかるに自衛隊と同等の動員力を誇るレスキュー部隊が組織されていたなら、さぞかし無駄だと糾弾されていたことでしょう。事業仕分けの格好のネタにされ、その削減や人件費カットを唄う政治家が支持を集めていたであろうことは想像に難くありません。日本中の誰からも愛されている自衛隊だからこそ、その規模を維持することができているのだと言えます。
研修と称して新入社員を自衛隊に体験入隊させる企業は決して少なくありません。大学なり専門学校なりで教育を受けてきた人を、わざわざ自衛隊に入れて再教育する、それが日本の企業のトレンドです。あるいは道徳家の中にも若者を自衛隊に入れよと説く人は珍しくない、加えて「40歳代くらいの職員を対象に自衛隊での研修を検討したい」と述べた知事すらもいます(参考、一つだけいつもと違うところがあるね)。結構、不祥事で警察のお世話になる自衛隊員も多いのですが、それでもなお我々の社会にとって自衛隊とは日本人の鑑であり教師なのでしょう。自衛隊員のような立派な人になって欲しいと社会が願っている、そんな風に元から尊敬を集めている自衛隊員だからこそ、その活動が感謝されている部分も少なくないように思います。
ことによると、本来業務「ではない」ことが重要なのかも知れません。自衛隊が災害時に支援活動に当たれば大いに感謝されるものですが、それが本来業務だと思われている人々が同じことをやった場合はどうでしょう。「それが仕事なのだから当たり前だ」ぐらいに扱われるばかりで、むしろ仕事の不手際を咎め立てされるのが関の山、というケースも多々あるはずです。(自衛隊を除く)公務員が住民のために奉仕するのは当たり前と我々の社会では考えられていますし、東京電力と関連会社社員がいかに献身的に原発事故収束のために行動しようとも、自衛隊と違って感謝されることなどあり得ないですよね? それは当然のことをしているだけだ、もっと早く片付けろと、そういう罵りしか浮かんでこないわけです。一方で自衛隊が軍隊と認識されているからこそ、軍事行為こそ本分と認められているからこそ、災害時の活動は「本来ならやらなくても良いことなのに手伝ってくれるなんて、なんて立派な人達だ、偉い!」と輪をかけて好意的に評されているところもあるのではないでしょうか。
「企業の社会的責任」だとか「(企業の)社会貢献」みたいな、流行のフレーズがあります。日本では専らCSRと称して非営利の慈善事業や社会活動などへの寄付や支援(そこに社員を強制的に参加させるなど)が行われているわけです。何とも、馬鹿げた話ではないでしょうか。企業にできる最大の社会貢献、社会的責任の果たし方とは、即ち雇用の拡大、賃金の増大に他なりません。CSR活動に積極的と対外的にはアピールしつつ、人員削減と賃金抑制を進めて失業者を街に溢れさせる、そんな企業のどこが社会に貢献している、責任を果たしていると言えるのか。むしろ社会の寄生虫と言ってすら過言ではないように思います。
だいたいの場合、CSRとは企業のアリバイづくり、単なるパフォーマンスに過ぎません。社会貢献のために頑張っていますよ、お金も出していますよ、社員も参加させていますよとポーズだけ取って、その実は社会の構成員たる労働者を食い詰めさせているのですから。それでも、社員の雇用を守ろうとする企業、社員の賃金を高く保とうとする企業よりは、CSRに積極的な企業の方が対外的なイメージは悪くないように思います(むしろ組織が従業員を守ろうとすればするほど、社会的な非難の対になることの方が多いとすら言えないでしょうか? 国民にとってリストラとは「最初」の手段であり、従業員の削減や賃下げを大々的にアピールしないと世間の非難から逃れられないのもまた現実なのですから!)。利益を上げて、社員を増やし、賃金も増やす、こうした本業で頑張るような企業よりも、売り上げが減った以上に社員を減らし、賃金をカットすることで利益を確保しつつCSR活動をアピールする、そんな企業の方が世間のウケは悪くないとしたら、まぁ色々と間違っています。でも、企業なり組織なりの本分から外れたところでの活動を見せるほど、無償で社会に貢献しているみたいなイメージが膨らみ、「善」の体現者として好意的に受け止められがちなのかも知れません。本来業務より、本来業務「ではない」ところで頑張る人(企業/組織)を、我々の社会は肯定的に受け止めてはいないでしょうか。自衛隊とは、そうした我々の社会の「ツボ」を突いた存在とも言えそうです。



