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特集:G20+米中首脳会談を読むヒント

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今週末(11/30-12/1)はブエノスアイレスで G20 首脳会議が開催され、12 月 1 日夜には注目の米中首脳会談が行われます。米中はディールできるのか、それとも貿易戦争、もしくは新冷戦が続くのか。いやがうえにも関心が高まるところです。

トランプ大統領の登場以来、既成の外交秩序はどんどん崩れている感がありますが、特に首脳会議や会談の変質ぶりが顕著です。今週末の米中会談も事務レベルの積み上げはほどほどで、首脳同士の出たとこ一発勝負。本誌としても、結末を知らずに書くことになりますから、まことにやりにくい。とはいえ、いちばん関心の高いテーマを避けるわけにも いきません。今週末の外交イベントの見どころについてまとめてみます。

●G20 首脳会議はどんな形で始まったか?

第 1 回の G20 首脳会議は、リーマン危機直後の 2008 年 11 月に行われている。会議の立ち上げにはどんな経緯があったのか、以前から気になっていたのだが、近著『リーマン・ショック――元財務官の回想録』(篠原尚之/毎日新聞出版)に詳しく描かれていた。

著者の篠原氏は、パリバショック当時の 2007 年夏に財務官に就任。さらに 2009 年からは IMF 副専務理事を務めている。いわば国際金融危機をど真ん中で体験した人物が、10 年後の現在になって当時の体験をごく淡々と語り起こしている。

本書によれば、リーマンブラザーズ社の経営破綻から 1 か月もたたない 08 年 10 月 11 日、米国の呼びかけで G20 財務相・中銀総裁会合が開催された。米国の住宅バブル崩壊の影響は、既に急速に全世界に広がっており、議長役のポールソン財務長官は”apologize”(謝罪する)という言葉を何度も使ったという。 さらに会合の終わりにはサプライズが待っていた。ブッシュ大統領が会場に現れ、出席者全員と握手をしたという。今ではとても考えられないような米国の低姿勢ぶりだが、それくらい経済危機が深刻であったということであろう。

それまで G20 財務相・中銀総裁会合は、1999 年から毎年秋に行われていた。この年の席上で初めて、「首脳レベルの会議を米国主導で開きたい」という打診があった。篠原氏は、「G20 は多様な国が入っており、国の数自体も多過ぎる」と否定的であったが、それでも結局、11 月 14-15 日にワシントンにおいて、G20 メンバーによる初の「金融・世界経済に関する首脳会合」が開かれることになる。

それまで経済問題は G7 の専管事項であった。金融危機や債務危機が起きるのはいつも新興国においてであり、それを先進国たる G7 が助けるというのが通例であった。しかし米国で発生した火事が全世界に延焼する事態に際し、G7 の当事者能力には疑念があった。さらに言えば、貿易自由化、気候変動、資源管理といった課題を扱う際に、新興国抜きで物事を決めることに限界が見え始めた時期でもあった。

さらに GDP で行けば、G7 は全世界の 5 割程度を占めるにすぎないが、G20 ならば 8 割以上をカバーすることができた。要は 2003 年頃からの BRICs ブームによって、それだけ新興国が急速に経済力をつけていたのである。G20 メンバーによる首脳会議を行うことには、時代の要請があったとも言える。

第 1 回の G20 首脳会合が行われる直前、11 月 4 日には米大統領選挙が行われ、バラク・オバマ氏の当選が決まっていた。ブッシュ氏は「大統領任期のフィナーレを飾るいい出番という感じ」(篠原氏)で、終始上機嫌であったという。初の G20 首脳会議はリーマン危機の後始末という重い任務を抱えていたが、「ブッシュ大統領にとっての花道」でもあったということで、なんだか拍子抜けするような話である。少なくとも今の「米国第一主義」の大統領と比較すると、何とも隔世の感がある。

かくして 2008 年から G20 首脳プロセスが始まった。特に第 2 回のロンドン会合は成果が多く、政策協調の成功例であった。新興市場国が参加したことにより、国際機関のガバナンス改善にも寄与した。とはいえ、「既に G20 会合の肥大化は始まっていた」と篠原氏の評価は辛い。参加国は明らかに多過ぎた。事前の準備作業も膨大になり、非効率化していった。外務省のシェルパと財務省のサブ・シェルパの混乱という問題もあった。

やはり金融危機への対応は、G7 が主力になるべきではなかったのか。しかるに G20 首脳プロセスが確立するとともに、G7 はメッセージを発信する機能を失っていく。篠原氏の以下のコメントは何とも冷ややかである。

石油ショックやアジア通貨危機など、世界的な経済ショックのたびに、新たな国際的枠組みが作られ、古い枠組みはなかなか消えていかない。次のグローバルなショックのときは、どんな枠組みが提起されるのだろうか。

●そろそろ G20 の存在意義は薄れてきた?

G20 サミットのメンバーは、G7(仏・米・英・独・日・伊・加・EU)に加え、亜、豪、ブラジル、中、印、インドネシア、メキシコ、韓、露、サウジアラビア、南アフリカ、トルコからなる。さらにメンバー国以外にも、招待国(オランダやスペイン1)や国際機関(IMF、世銀、IEA、ECB など)も参加する。首脳が 1 人 10 分話しただけでも大変な時間になってしまう。誰がどう見ても、実のある議論の場としては参加者が多過ぎよう

しかも国際金融危機の影響が薄れるにつれて、G20 の存在意義はどんどん曖昧になっている。それでも会議は今年で 13 回目を迎え、そろそろ 1 巡目の後半にさしかかっている。来年は日本が議長国であり、その次はサウジアラビア。まだ議長国を経験していないのは、イタリア、インド、ブラジル、南アフリカ、インドネシアの 5 か国である。

○G20、過去の開催地


それでは G20 にはどんな意義があるのだろうか。
ひとつには、普段は会議において Revisionist Powers(現状変更勢力)として振る舞う中国やロシアであっても、議長国が回ってくるとおとなしくなる、という指摘がある。これは APEC 首脳会議のときも同様で、会議をまとめなければならないという Peer Pressure(同調圧力)が働くからであろう。トルコのエルドアン大統領も同様で、独裁者タイプの指導者であるからこそ、メンツにかけても真っ当に議長を務めようとするものらしい2

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