「大卒なのを高卒」と詐称 神戸市の男性職員を懲戒免職(朝日新聞)
大卒なのを高卒と学歴詐称し、そのまま長年勤務していたなどとして、神戸市は26日、定年後に再任用されていた経済観光局の男性事務職員(63)を懲戒免職処分とし、発表した。
この職員は24歳だった1980年に市に採用され、2016年3月末に60歳で定年退職。同年4月に再任用されて引き続き市で働いていたが、最近になり、匿名の通報がきっかけで学歴を偽っていたことがわかったという。
市によると、職員は78年に大学を卒業していたが、そのことを伏せたまま、「高校卒」までを受験資格とする市の採用選考を受け、採用されていた。この職員は「申告する必要がないと思っていた」と話しているという。
さて「匿名の通報」がきっかけで神戸の市職員が懲戒免職になったことが伝えられています。大卒を高卒と――学歴を偽っていたとのことですが、市に採用されたのは1980年と遠い昔の話です。自身を高卒と偽ったのが採用時点の1980年であるとすれば経過した年月は38年、これで時効が成立しないのは殺人罪ぐらいしか思い当たりません。学歴詐称とは、かくも重い罪なのでしょうね。
ともあれ「高校卒」が受験資格であり、「大学卒」は採用の対象外であったわけです。大学を出たら受験資格を失うというのは、何とも理不尽な話です。まぁ日本は教育に公的予算を費やすことを好まない、高等教育修了者の増加をネガティブに語る人が経済筋に目立つ社会でもあります。ならば大学を卒業することによって不利益を被る、そんな制度があっても不思議ではありませんね!
一方ここで私が思い出したのは、官公庁における「障害者雇用」の問題です。今年の夏場に中央省庁における障害者雇用の大幅な水増しが続々と発覚し、結構な話題になりました。制度上は障害者手帳を持った人のための採用枠なのに、どうにも手帳を持っていない人ばかりが「障害者」として雇用されていたわけです。手帳を持っていない(それは当然、本人は心得ているはず)にも関わらず、障害者枠で受験して役所で働いている人とはどんな人なのか、当時は気になりました。
障害者として「手帳を持っていること」が受験資格であるはずの選考に、手帳を持っていない人が採用されていたこと、そして「高卒まで」が受験資格の選考に「大卒」が入り込むこと、一面では似たところがあります。もし受験資格を満たすために学歴を偽ることが懲戒事由として職員の責となるなら、手帳を持っていない「障害者雇用枠」の人はどうなるのでしょう。
逆に、「雇う側」こそ障害者手帳の有無を確認しなかったことに問題があると考えるなら、同様に雇う側である神戸市側が件の職員の学歴を、適正に把握しようとしなかったことに問題があると言えます。加えて処分を受けた職員が「大卒であること」によって市側に何らかの不利益を被らせたのか、「大卒であること」によって職務上の障害があったのか、そうした面も考慮されて良さそうなものです。