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仏各地で燃料税めぐり大規模デモ マクロン大統領は治安対策を緊急協議

1日にフランス各地で起きた数万人規模の反政府抗議行動を受け、エマニュエル・マクロン仏大統領は2日、治安対策を話し合う緊急協議を開いた。

1日のデモでは、パリのシャンゼリゼ通りや凱旋門(がいせんもん)の一部が破壊された。マクロン氏は被害状況を視察後、仏大統領府で治安対策に関する緊急協議を開いた。協議にはクリストフ・カスタネール仏内相や治安当局高官らが参加した。

協議に参加した閣僚らは、どんな選択肢も除外していないものの、国家非常事態宣言の発令は議論していないと述べた。協議に先立ち、宣言が検討されるのではとの報道が出ていた。

燃料税の増税をめぐり始まった抗議行動は、生活費全般の高騰への怒りとなって膨れ上がった。

カスタネール内相は、「ジレ・ジョーヌ」(フランス語でイエロー・ベスト、黄色いチョッキの意味)として知られる運動に対する広い支援を示すため、仏全土で約13万6000人が抗議行動に参加したと発表した。

仏警察は、パリでは治安部隊員23人を含む100人以上が負傷し、400人近い逮捕者が出たと発表した。2週間以上前にデモが始まって以降、抗議行動をめぐって3人が死亡したという。

ニコル・ベルベ仏司法相は、暴力行為の当事者には最大限の法的拘束力を行使すると明言した。

仏政府のバンジャマン・グリヴォー報道官は協議に先立ち、仏ラジオ局ユーロップ1の番組に出演。国家非常事態宣言の発令は可能性のある選択肢だと述べた。「これらの問題が再び起きないようにするため、取れる可能性のある対策を、我々は考えなければならない」とグリヴォー報道官は語った。

誰が抗議に参加したのか

フランスでは、全車両が視認性の高い蛍光黄色の服を搭載するよう法律で義務付けられている。この黄色のベストを着た人たちが道路で抗議をしているため、抗議行動は、「ジレ・ジョーヌ」と呼ばれる。抗議者は、ディーゼル燃料に対する税金の急速な増加に不満を示している。

マクロン氏は増税が環境対策だとしている。しかし抗議する人たちは、都市部を出れば生活に自動車は不可欠で、大統領はそうした実態を把握していないと反発している。

抗議行動にはっきりとした指導者はおらず、ソーシャルメディア経由で勢いを増している。極左の無政府主義者から極右の国家主義者、その間にいる多くの中間層まで、参加者の幅は広い。

11月17日にあった初の全国規模のデモには、30万人近い人が参加した。

1日に起きたこと

3度目の「ジレ・ジョーヌ」行動となった週末のデモ行進は1日、南西部ナルボンヌ、西部ナント、南部マルセイユを含む仏全土の通りで起きた。

南部アルルでは、抗議行動の道路封鎖に重い荷物を積んだ運搬車が衝突し、運転手1人が死亡した。仏憲兵当局の話としてロイター通信が伝えた。

パリ中心部のシャンゼリゼ通りでは、マスクをした抗議者が物を投げたり建物に火をつけたりした。警察は催涙ガス、閃光弾、高圧放水銃などを発射した。

カスタネール内相は、火事が190件近く起きたほか、建物6棟に火がつけられたと発表した。

暴力行為により、デパートや地下鉄駅などは閉鎖された。

マクロン大統領の発言

マクロン大統領は1日、主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)参加のため訪れたアルゼンチンのブエノスアイレスでの記者会見で、「私は暴力を決して認めない」と話した。

マクロン氏は、「当局者への攻撃、商店への略奪、通行人もしくはジャーナリストへの脅迫、凱旋門を汚す行為、これらを正当化する理由はない」と述べた。

マクロン氏は長年、燃料税の引き上げ政策は地球温暖化への対策に必要で、野党は同氏の経済再建策を妨害するため、抗議行動を利用していると批判している。

先週マクロン氏は、燃料税の課税方法に関する提案を歓迎すると述べ、融和的な論調を押し出そうとしている。

抗議者の怒りを引き起こしたもの

フランス国内の自動車では、ディーゼル燃料が最も一般的に使われている。このディーゼル燃料の価格は、過去12カ月で約23%上昇し、平均で1リットルあたり1.51ユーロ(約194.61円)となった。この価格は2000年代前半以降で最も高い。

世界の石油価格は1度上昇した後再び降下しているが、マクロン政権は今年、炭化水素油税をディーゼル燃料1リットルあたり0.076ユーロ、ガソリン1リットルあたり0.039ユーロ増やした。この増税は、環境汚染度の少ない自動車と燃料を導入する運動の一環として実施された。

2019年1月1日から、さらにディーゼル燃料1リットルあたり0.065ユーロ、ガソリン1リットルあたり0.029ユーロの増税を実施するとの決定が、最終的な抗議行動のきっかけとみられている。

<解説>マクロン氏は亀裂を修復できるのか?――ヒュー・スコフィールド BBCパリ特派員

空港から直接パリ市内に向かったマクロン大統領は、声援と非難の両方に迎えられ、燃やされた車の残骸や、破壊された窓を視察した。

凱旋門では、マクロン氏や仏政府を標的にする門外部の落書き、門内部にある破壊されたチケット売り場や待合エリアなど、抗議者による損害を視察した。

その筋書きと暴力性が国中に衝撃を与えている一連の出来事に、どんな対応策を取るか、マクロン大統領と閣僚は今、決断しなくてはならない。

首都パリで起きた理不尽な破壊行為が転機となり、多くの一般的な「ジレ・ジョーヌ」たちはこれで満足したと感じていると、マクロン氏は希望を持ちたいのかもしれない。

だとしたら、それは早急な計算だ。もっと大きな問題は、税金の上昇と生活水準の低下をめぐる大勢の不満なだけに、まだ大勢がこの抗議行動を支援している。

(英語記事 France fuel protests: Macron holds urgent security meeting

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