記事

【読書感想】証言UWF 最後の真実

1/2


証言UWF 最後の真実

内容紹介
本書は、新間寿が1984年3月に創立、85年9月に活動休止した第一次UWF(ユニバーサル・レスリング連盟)、
そして前田日明が88年5月に旗揚げし、90年12月に崩壊した新生UWFに所属、関係したレスラーおよび関係者、
17名による証言集である。内紛、確執、不和……プロレスと格闘技の間を漂流し続けた男たちの魂の叫び――。

 17名、それぞれの証言を読みながら、僕は「真実」って、いったい何なんだろうな、と考えていました。
 芥川龍之介の『藪の中』みたいだ。
 『藪の中』はフィクションだけれど、UWFは実際に存在していて、たくさんの人に影響を与えた、というか、与え続けた存在です。
 UWFについての本も、たくさん出ています。
 新生UWFの崩壊から30年近く経って、関係者もようやく語れるようになった話、というのもあるのでしょう。
 実際に起こったことで、多くの人が関わっていたからこそ、「真実はいつもひとつ!」とはいかないというか、関係者それぞれに「自分にとっても真実」があるのです。

 ほとんど道場に来ず、みんなと練習しなかった佐山聡が悪い、という人もいれば、独善的で人の話を聞かなかった前田日明に責任がある、という人もいる。
 それより、不透明な経営をしていたフロントの問題だ、と考えている選手もいます。
 読めば読むほど、「人と人とが、とくに自分がナンバーワンになりたい、と思っている人たちが一緒にやっていくのは難しい」と思えてくるのです。
 そして、人は素晴らしい理想や理念には一時的に共感できても、最終的には「ずっと道場で一緒に苦しい練習をしていた」とか、「身銭を切って給料を払ってくれた」とか、「同じ釜の飯を食った」とかで、その人にとっての「正しさ」を判定しがちなのだな、ということもわかります。
 彼らが、ギリギリのところで戦っていたからこそ、そういう「人間というものの本質」が浮き彫りにされているのです。

 この本では、それぞれの人が、自分にとっての真実を語っています。

 格闘技色の強いUWFのスタイルは、従来のプロレスに飽き足らなくなっていた一部のプロレスファンたちの熱狂的な支持を得ていく。しかしーー。
前田日明「あの頃、佐山(聡)さんがユニバーサルの試合を全部真剣勝負にしたがっていたって話になってるでしょ。本人にはそんな気は全然なかったよ。そんなのは、それが本当だったらみんなの生活さえ保障できるならやりましたよ。全員じゃないにせよ、選手のうちの何人かは間違いなく真剣勝負をやりました。でも当時のユニバーサルの状況はというと、社員は旗揚げして間もなくからずっと給料をもらっていない。俺も藤原(喜明)さんもたいしたお金をもらってないんだけど、そこから道場のちゃんこ代を出し合ったり、あとは新弟子にも会社は給料を出してやらなきゃいけないのに、出せないからって俺と藤原さんのポケットマネーから小遣いを渡したりしてた。
 佐山さんはタイガージムをやったり、サイン会をやったりしてお金を稼いでいたからいいんだけど、そんな俺らの状況を知っていたくせに、あの人はそういう生活の不安のないポジションからああでもないこうでもないって理想だけを語ってた。やれ興行数を減らせ、やれランキング制にしてAリーグとBリーグに分けてやらないといけないとか。それはわかるんだけど、競技だけじゃなくて生活をできるシステムも一緒につくるのであれば誰も文句を言わないじゃん。それでメシが食えるのならば間違いなく言う通りにやりましたよ。なかにはガチンコを嫌がって辞める人間もいたと思うけど、半分以上は残っていたはず。それは間違いないよ。
 佐山さんとは最初の頃からギクシャクしていたわけじゃない。俺と高田(延彦)がタイガージムに行って、そこにシーサー(武志)さんが来てキックの練習とかをみんなでやったりしていたもんね。和気あいあいと。やっぱり関係がギクシャクし始めたのは『A、Bのリーグに分けてどうのこうの』って言い始めた頃からだよね。佐山さんはこっちの道場に全然来ないから俺らとはコミュニケーションもないし、それで試合は月にいっぺんとか、ふた月にいっぺんじゃないとダメだとか言ってて、『じゃあ、どうやって若いもんや社員を食わせていくの?』って言ったら、『そんなの、俺は知らないよ』って感じでしょ。まあ、佐山さんもそう口には出さなかったけど、そんなことはまったく頭にないんだよね。
 それであの人はね、すぐに『これが実現できなかったら俺は辞める』って言うんだよ。それでみんなは『タイガーがいないとお客さんも入らないだろうし、困ったね……』って頭を抱えてた。そこで『これを実行する代わりに、みんなはお金のことは心配するなよ』って言ってくれてたら誰も文句はないんですよ。あの頃、みんなが一番心配していたのは生活のことなんだから。

 この前田さんの言葉を読むと、やっぱり、理想だけじゃ人はついてこないよなあ、と感じます。
 佐山さん側からすると、「生活やお金のことばかり考えていて、理想の格闘技を実現しようとしない連中」に愛想をつかしていたのだとしても。  

あわせて読みたい

「読書」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    ワクチン供与と、国際的な情報戦と韓国外交の茶番劇

    佐藤正久

    06月18日 08:21

  2. 2

    ひろゆきで大流行!YouTube切り抜き動画の台頭と実際にやってみて分かったこと

    放送作家の徹夜は2日まで

    06月18日 08:06

  3. 3

    山尾志桜里議員引退へ。悪い意味での「職業政治家」ばかりの永田町の景色は変わるのか

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    06月18日 10:10

  4. 4

    元プロ野球選手・上原浩治氏の容姿に言及 コラム記事掲載のJ-CASTが本人に謝罪

    BLOGOS しらべる部

    06月17日 13:12

  5. 5

    緊急事態宣言の解除後も続く飲食店への制限 ワクチン拡大を待つしかないのか

    中村ゆきつぐ

    06月18日 08:40

  6. 6

    盛れば盛るだけ信用低下! 印象操作に走る菅総理の愚

    メディアゴン

    06月18日 09:06

  7. 7

    ほとんどの人が「延長は仕方ない」イギリスでロックダウン解除延期、なぜ感染再拡大?

    ABEMA TIMES

    06月17日 22:31

  8. 8

    菅首相のG7「はじめてのおつかい」状態を笑えない - ダースレイダー

    幻冬舎plus

    06月17日 08:40

  9. 9

    知っているようで知らない、チョコレートの真実 - 多賀一晃 (生活家電.com主宰)

    WEDGE Infinity

    06月17日 14:56

  10. 10

    山尾志桜里氏「今回の任期を政治家としての一区切りにしたい」

    山尾志桜里

    06月17日 15:40

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。