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陸自のAH-Xを分析する その2

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離陸しようとする2機のAH-64D 出典:陸上自衛隊HPより引用

清谷信一(軍事ジャーナリスト)

【まとめ】

陸自・航空部隊の予算は逼迫。

・調達、運用コストカットには既存機の輸入か?それとも・・・。

・大きな障害を抱えるネットワーク化に打つ手はあるか?

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て掲載されないことがあります。その場合は、Japan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=43061でお読みください。】

前回は陸自のAH-X(次期攻撃/武装ヘリ)について現時点での分かっていること、特に日本メーカーが提案するであろう武装ヘリ、軽攻撃ヘリについて述べた。今回は主として外国製の攻撃ヘリと陸自の航空部隊の予算事情などについて述べる。

AH-Xの仕様要求で陸自が専用の攻撃ヘリよりも、安価な既存機を武装化した武装ヘリに傾く可能性は小さくない。陸自のヘリ部隊の予算は逼迫している。現在陸自のヘリの稼働率は、公表はされていないが、関係者によると平均で6割程度に過ぎないという。これは整備予算が減らされていることが大きいという。

飛行時間も10年ほど前は年220時間程度だったものが、現在では年120時間程度に減らされているという。常に災害派遣という「実戦」に投入される可能性がある汎用ヘリの稼働率維持が優先され、戦闘ヘリや偵察ヘリの稼働率は後回しにされる傾向がある。

▲写真 FFOS(遠隔操縦観察システム) 出典:著者撮影

しかも陸自は現在ティルトローター機、V-22オスプレイ17機を調達中である。その調達費用3600億円は、概ね陸自のヘリ調達予算300億円の10~12年分である。またオスプレイ1機の整備費は1機年間約10億円といわれており、17機ならば170億円だ。対して陸自のヘリの整備予算は年間210~220億円程度に過ぎない。オスプレイが揃えばその2/3を喰うことになる。

▲写真 V-22オスプレイ 出典:the United States Marine Corps(Public Domain)

更には2セットで調達・運用費が8,000億円以上は掛かると言われているイージスアショアの導入も予定されている。そうなればただでさえ不足している維持整備費は逼迫を免れない。当然ながらAH-Xや次世代の偵察ヘリの調達予算も圧迫される。実際に2018年度予算で陸幕は航空機を含め装備の調達が抑制され、維持整備費を増額している。調達される機体はV-22、4機のみである。陸幕では航空隊の維持整備の確保のためにAH-Xの調達及び運用コストをできるだけ抑えたいという事情があるのだ。

▲写真 イージス・アショア 出典:USNI News(Public Domain)

であれば、安価な武装ヘリで済ませようということも、ある意味現実的な選択であると言えよう。このため各社とも汎用ヘリの武装型をAH-Xの候補と考えてきた。一般に攻撃ヘリより武装ヘリは安価である。これを導入し、輸送任務には武装を降ろして対応し、デュアルユースで運用すれば機数を減らして運用コストも下げようという考えも陸幕には存在する。

だが現実はそう簡単では無い。MHI、KHI、スバル三社とも武装ヘリの火器管制装置を開発した実績がなく性能に不安がある。またAH-Xの調達は少数、恐らくは30~40機程度であり、1機あたりの武装型の開発費は極めて高価になる可能性がある。このため汎用ヘリを利用して安くあげる、というコンセプトを実現できなくなる可能性がある。また武装ヘリと汎用ヘリを完全に両用で運用するのは訓練の面からも問題がある。

単に「安価な武装ヘリ」を求めるのであれば、UH-XやUH-60などの中型汎用ヘリよりも、より調達運用コストの低い偵察用ヘリと共用化する方が合理的だ。そうであればOH-1やOH-6Dの後継の偵察ヘリを採用し、武装ヘリを共用化する方がコスト面では有利となろう。またコスト削減という意味では国産ではなく、既存機の輸入に切り替えるべきだ。

▲写真 南アフリカ空軍・BK117 出典:著者撮影

現実問題として軽輸送や連絡に使われている観測ヘリが激減しており、これらの任務に支障がでている。AH-Xよりもむしろ観測ヘリの更新が必要では無いか。その場合旧式化したOH-6Dは勿論、全機が飛行停止から復帰するに10年はかかり、観測機能も低いOH-1も全機廃棄して、新たな観測ヘリを導入し、これの武装型を当てるというのも合理的である。

例えばOH-1、OH-6の後継機として武装型が存在するエアバスヘリの双発のH135Mを導入し、その一部を武装型とするならばLCCは大幅に低減されるだろう。武装化には同社のHフォースという武装キットを使用する。この場合新たな開発費が必要無い。H135Mの民間型は日本国内でも広く使用されており、海自も民間型のTH135を練習機として採用している。整備拠点も存在するので初度費もさしてかからない。

▲写真 airbusH135M 出典:Airbus

また既存のOH-6を延命化する、一部を追加調達するという手もあるだろう。OH-6にはボーイングの武装型のAH-6iが存在する。この場合既存の整備や訓練インフラを流用できる。陸自の既存のOH-6に延命措置を施し、あわせて新造のOH-6やAH-6iを輸入で導入するならばコストはかなり低減できるだろう。

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