記事

入管法審議と民主主義の危機 ~これから日本政治には何が起こりうるのか~

 今臨時国会で最大の焦点になっている出入国管理法改正案に関して、野党の攻防が続いているが、野党は数で与党に大きく劣る上に内輪もめが続いており攻め手を欠く。今回は、改めて安倍政権の政治姿勢を批判したうえで、野党がどうすれば政権をとれるのか、それに対して安倍政権はどのような行動をとりうるのかを考えてみた。

やっていることはどこかの独裁政権と同じレベル

 出入国管理法改正案は、わずか17時間の衆院法務委員会での質疑の後、本会議に送られ衆議院を通過した。私はかねてより基本的に外国人労働者の受け入れ拡大と秩序ある移民の受け入れに賛成しており、この問題に対して日本政府はできるだけ速やかに答えを出すべきだと考えていた。

しかしながら、これは国のあり方を変える大きな政治課題である。受け入れるだけ受け入れた外国人労働者が、劣悪な労働環境で低賃金労働を選択せざるを得ない状況に置かれ、不況時には即解雇されることになれば、社会不安が増大するのは目に見えている。逆に少子高齢化対策として移民を受け入れるということになれば、彼らをどのように日本社会に統合させていくのか政府はしっかりとした計画を示す必要がある。

 しかしながら、安倍政権は今回も問題の本質から目をそらし、民主主義のプロセスを無視した形で中身がブラックボックスな法案を強引に成立させようとしている。「野党から内容を追及されるのが嫌なので法案の内容を曖昧にし、数の力でそれを強引に成立させ、後から政省令の施行という形で自分達の都合が良い政策を実行する」、まさに安倍政権の常套手段である。やっていることは、ロシアのプーチン大統領やトルコのエルドアン大統領といった独裁者と同じレベルだ。

アメリカのトランプ大統領も彼らと同様の傾向を持つが、先月の中間選挙における下院選の敗北で下院が民主党のコントロール下に置かれることになり、暴走に一定の歯止めがかかるようになった。しかしながら、日本では衆議院・参議院とも与党とほぼ与党のゆ党、日本維新の会で2/3を占めていることから、安倍経験の暴走に全く歯止めがかからない。

野党のまとまりがないのは国民民主党が他党と違うから

 こうした民主主義の危機を招いているのは野党の脆弱さであり、私は本質には野党間での政策の違いが原因だと考える。立憲民主党・共産党・自由党・社民党の4党と国民民主党の間で、脱原発と共産党も含めた野党共闘への態度に大きな差があり、特に国民民主党が原発推進派の旧同盟系・製造業系労組の影響下にあることを考えれば、野党共闘がなかなか進まないのは当然の結果である。

 では、今後どうなっていくのであろうか。ズバリ言えば、今のままでは立憲民主党が順調に党勢を拡大させる一方で国民民主党が解党または取るに足らない少数政党になるまで、野党が自民党政権を脅かす存在になるのは無理だろう。

現野党で主要政党として残っていけるのは立憲民主党と共産党だけだろうが、衆議院で小選挙区制度が続く以上、小選挙区で共産党候補が勝利するのは厳しく、野党第一党は立憲民主党であり続けるだろう。しかしながら、現状で国民民主党所属の国会議員が衆議院で37名・参議院で22名いる以上、彼らが淘汰されるまで一定の時間がかかり、野党間のいざこざは続きそうである。

 今回、対案路線を標榜する国民民主党は「入管法」の改正案を提示した。個人的には今回のような重要な問題に対して対案を提示したことには好感が持てる部分があるが、それで同党の支持率が上がっていくとは到底思えない。

現野党支持者にとって最も重要な政策課題である脱原発に対して同党が後ろ向きである以上、野党支持者にとって同党を支持する理由は全くないし、無党派層にとっても野党転落後の旧民主党のまとまりのなさ・方向性の曖昧さという悪い部分を集めただけの同党を支持する理由はないからである。

 最近の参議院選挙での旧民進党の旧同盟系・製造業系労組の合計得票数は100万票前後で、1%という今の国民民主党の支持率から考えると、同党は来年の参議院選において、比例で1議席・選挙区で大塚元共同代表の1議席の計2議席プラスアルファくらいしか期待ができない。

参院選大敗後は、再び大量の離党者が発生し党の存続自体が怪しくなる。ただし、離党者の全てを立憲民主党が受け入れるとは思えないし、立憲民主党が政権交代を見込めるだけの候補者数を擁立できるようになるのは、複数回の衆議院選挙を経る必要があるだろう。

野党が早期に政権を取るウルトラC

 そうなってくると、野党が来年夏の参議院選挙と次期衆議院選挙で続けて勝利し、政権交代を実現するには、よほどの奇策が必要だ。例えば、マレーシアで野党が御年92歳のマハティール元首相を担ぎ上げて政権交代を実現したように、野党が脱原発実現・安保法制の抜本的な改正をスローガンにして76歳の小泉純一郎元首相を次期首相候補に担ぎあげれば大激震が起きるだろう。

全くもってオーソドックでないやり方で、個人的には立憲民主党が主体の政権を目指すのが王道だと思うが、手っ取り早く政権交代を実現するにはこういう方法しかないかもしれない。ある意味、オール沖縄をオールジャパンで実現するようなものである。

 マレーシアで野党連合による政権交代が初めて実現したのは、マハティール氏という大ベテランを首相候補としたことで、保守層に対して野党政権による統治への安心感を与えたことも大きいだろう。その点、小泉純一郎氏は5年間の統治経験があるので保守層にも信頼感を与えられるだろう。小泉氏のような保守政治家を担ぎ上げた場合は、保守分裂が起こる流れになるだろうから、構想実現には今回の自民党総裁選で石破氏に投票した議員の離党・新党結成が不可欠になってくるだろう。

政党間で共通公約を決定しイタリアで中道左派連合政権を実現させた「オリーブの木」のような政党連合を、保守新党も含めた野党間で組むというストーリーである。もっとも、共通公約の中心が脱原発の早期実現だとすれば国民民主党は参加できないかもしれないが、それは自業自得である。

 小沢一郎氏あたりはそう言ったストーリーを考え続けているのかもしれないが、間違ってもそこに橋下徹氏や前原誠司氏を引き込まないでいただきたいものである。そんなことをすれば、立憲民主党と共産党は絶対に乗ってこないだろう。また、共産党を排除するという選択も極めて不誠実かつ非合理的である。

野党支持者は同党が安保法制反対と脱原発で果たしてきた役割に一定の評価を与えている。でなければ、2017年の都議会議員選挙での共産党の躍進はなかっただろう。野党支持者はこれまで共産党を含む野党共闘を評価しており、そこからの逸脱は旧民主党⇒共産党⇒立憲民主党と支持が変化したような有権者の支持を、再び共産党に向かわせることになるだろう。野党政権実現にはこれまでの野党支持者からの継続的支持が必要なのは言うまでもなく、言うならば「左からの取りこぼしをなくす」ということである。

安倍首相が脱原発を言い出す可能性

 最後に、ここまで書いてふと思った。ちゃぶ台返しをするのだが、もしも安倍首相が来年の参議院選挙直前になって、「脱原発」を公約に掲げたらどうなるだろう?保守色が非常に強いと思われていた安倍氏という政治家が、実質的に移民受け入れ政策を実現するのである。彼は元来、思想的に保守なわけではなく、権力を手に入れるために保守を利用してきたのだと指摘する人も多い。

であれば、これまで自身の権力を強固にするため原発推進の経産省と組んできたのだが、G7で最も国内権力基盤が強固な首脳になった以上、もはや経産省や産業界に配慮する必要はないかもしれない。自身のレガシーを残すために憲法改正と脱原発をセットで進めると言い出しても不思議ではない。野党はいろいろなシナリオを考えておくべきだろう。

あわせて読みたい

「出入国管理及び難民認定法」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    選挙で敗け続けるリベラルの弱点

    BLOGOS編集部

  2. 2

    米女優 脅迫にヌード公開で反撃

    女性自身

  3. 3

    老後2000万円問題は存在しない

    吊られた男

  4. 4

    タピオカブームはヤクザの資金源

    NEWSポストセブン

  5. 5

    HUAWEI 米制裁で予想以上の打撃

    ロイター

  6. 6

    噛む力失う? 歯列矯正に潜む危険

    幻冬舎plus

  7. 7

    百恵さん 素顔撮影で復帰に期待

    NEWSポストセブン

  8. 8

    安倍政権に逆風 同日選が再浮上

    PRESIDENT Online

  9. 9

    イランによる船襲撃としたい米国

    猪野 亨

  10. 10

    宮迫の闇営業弁明に関係者「嘘」

    SmartFLASH

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。