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アングル:北朝鮮に「無知」な韓国人、統一教育見直しへ


Joyce Lee and Jeongmin Kim

[ソウル 22日 ロイター] - いまだ戦争状態にある韓国と北朝鮮が、何らかの形で統一を見るのはまだかなり先の話だとしても、この1年の融和ムードにより、関係強化の見通しが立ち始めた。

だが、韓国の一般的な学校では、はっきりそうとは言えないかもしれない。

「何も知らない。年に2度、学校で統一や国家の安全保障、北朝鮮人の生活について学ぶが、大体いつも聞き流している」と、17歳のノ・ハナさんは言う。

今年進展した南北間の緊張緩和は、北の隣人に関する韓国人の無知を露呈させたと多くの専門家は指摘する。韓国政府は、国民が北朝鮮と統一について学ぶ方法を改善しようと努めている。

現在の教育方法では、若い韓国人に北朝鮮やその国民、同国の指導者である金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長について微妙なニュアンスを理解する大切さを教えることはできないと、韓国統一教育院を率いるBaek Jun-kee氏は指摘する。

「中学校や高校で、この問題に合理的にアプローチし、この問題が(生徒の)私生活にどう影響するのかを示すことができなければ、生徒たちの関心を引きつけておくことは難しいだろう」

南北間における文化交流や政府間の交流が増える中、北朝鮮専門家はますます重要になっているが、こうした教育上の欠点が一因で、官民双方の研究機関でこうした専門家が不足していると、専門家は口をそろえる。

「地方政府はどこも南北交流計画を打ち出しているが、専門家はおらず、知識もネットワークもない」と、韓国統一研究院(KINU)のホン・ミン研究員は指摘。「韓国大企業トップの一行が9月に平壌で開かれた南北首脳会議に同行したが、彼らのほとんどは社内に北朝鮮専門家を置いていなかった」

韓国の趙明均(チョ・ミョンギュン)統一相は今月、国会の公聴会で教育プログラムの財源削減を巡り批判を受け、統一に関する新たなカリキュラム作成は「喫緊の課題」だと語った。

<時間の無駄>

朝鮮戦争(1950─53年)が平和条約ではなく休戦協定により終結したため、厳密に言えば、北朝鮮とはいまだ戦争状態にあり、70年も分断されているせいで、多くの韓国人は統一を遠くて非現実的なゴールと思うようになっている。

各世論調査によると、若い世代の韓国人はとりわけ北の隣人について無知であったり無関心で、北朝鮮人のことを仕事や学校といったより差し迫って重要な問題から気をそらす厄介者と考えている。

高校生17人に取材した結果、大半が、この10年間における北朝鮮問題で鍵となる「並進」路線について一度も聞いたことがないと回答。また、ほとんどが北朝鮮経済で広がる民間市場について知らなかった。

「歴史の授業で朝鮮戦争について習ったほかに、学校ではこのような北朝鮮の問題を聞いたことがない」と、17歳の女子高生は話す。

「分断されていることが当たり前になっているので、友人たちもあまり関心がないみたい」

韓国の教育は大学受験に重点が置かれており、高校最後の年に全国で試験が実施され、プレッシャーは最高潮に達する。生徒は受験に将来を賭ける。

北朝鮮は「試験に出ない」と、生徒や教師は言う。したがって、「貴重な時間の無駄」だと思われていると、ある高校教師は話した。

一般的に、北朝鮮は1つの章として教科書で取り上げられ、小学校4年生と6年生のときに年に1度、中学校では簡潔に、また高校では1度だけ教えられると教師2人が語った。

一方、高等教育では近年、韓国の大学にあった北朝鮮研究を行う学部6つのうち5つが閉鎖されたり、他のプログラムに変更されたりした。志願者不足がその一因だ。

<活発な議論>

韓国とは対照的に、北朝鮮では学校で韓国についてよく議論されているようだ。脱北者たちは、プロパガンダに加え、韓国ついて事細かに教えられたと話す。

「韓国の地理について、各地方ではどんな鉱物や穀物がとれるかということまで教わった。韓国の地で何が起きたかという歴史も学んだ」と、平壌で朝鮮語と文学を教えていた脱北者は言う。現在は韓国の首都ソウルで脱北者の子どもたちに教えている。

「韓国人が北朝鮮のどこに何があるかについてほとんど何も知らないことにショックを受けた」とこの脱北者は言い、知らないことで北朝鮮人への共感がなくなりかねないと指摘する。

ロイターが取材した韓国の教育者5人は、北朝鮮という頭の痛い問題をうまく教える態勢が整っていないと感じている。ある高校教師は、北朝鮮について「敵であり、長年失われた兄弟であり、国境を共有する分断された国など、誰に聞くかで変わってくる」と答えた。

初等・中等の北朝鮮教育を監督する統一教育院は、教師が北朝鮮に関する教育法を学ぶための通年プログラムを初めて開設する。

統一に関する紋切り型の教え方から、平和により重点を置き、生徒たちの議論が活発になるよう意図された柔軟なアプローチへの転換もその一環である。

今年、91ページに及ぶ統一教育ガイドラインは、48ページに縮小され、その名称には「平和教育」という文字が入れられた。北朝鮮と平和な関係を築くことの方が、完全な統一よりも現実的で喫緊のゴールだとする文在寅(ムン・ジェイン)大統領の主張が反映されたものとみられる。

(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)

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