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アメリカ パウエル議長の変心

アメリカFRBのパウエル議長の今日の記者会見での声明が世の流れを大きく変えたかもしれません。

そのたった一言がこれです。
“Interest rates are still low by historical standards, and they remain just below the broad range of estimates of the level that would be neutral for the economy‑‑that is, neither speeding up nor slowing down growth.” (金利は歴史的にはなお低く、その中立レンジをやや下回る水準にある)
この文章の中のキーワードは「just below」であります。

パウエル議長はFRB議長になる際、ハト派と思われていました。ところが、就任以降、利上げのピッチを緩めることなく歩を進め、先行きについても現状のアメリカの経済を考えれば利上げはふさわしいという趣旨の発言を繰り返してきました。

トランプ大統領は中間選挙を控えていたころ、経済への刺激を継続し、株価がある程度の水準を維持し、アメリカに夢と希望と未来を作り出すため、パウエル議長にツィッターで「利上げしすぎ!」と介入しないと言いながらも吠え続けたのであります。

しかし、吠えたのはトランプ大統領ではなく、市場参加者、そして多くの投資家やビジネス従事者が景気のピークを認識し始めたことに同調したといってもよかったと思います。にもかかわらず、先月もパウエル議長は「金利の中立レンジまでには長い道のりがある」と発言していたのです。

金利の中立レンジとは景気が加速も減速もしない金利水準のことを言います。利上げをするという意味はまだ景気がスピード超過をしているので利上げをしてブレーキを踏むという意味で、景気後退期には利下げというアクセルを踏むということになります。

ところが本日の声明でjust belowに変わったのです。「長い道のり」がひと月で「ほんのちょっと下回る」と表現が変わったところにFRB議長のステートメントを読み込むドキドキするほどの楽しさがあるのです。

市場とは現金なもので、数日前には金利の上昇サイクルの終焉はアメリカ景気のピークアウトを意味するので株価には芳しくない、という解説が聞かれました。ところが、今日は金利のピークアウトが近いと聞いた途端、ダウは600ポイント以上上昇し、カナダもつられて上昇、たぶん、中国を含む新興国には良いギフトになるはずです。

では、パウエル議長はなぜ、ここに至ってそのような180度とは言わなくても120度ぐらい転換した発言をしたのでしょうか?

私が思うのは一つに10月以降の株式市場と国債市場、付随的なVIX(恐怖指数)などにみられる市場の揺れ、またカショギ氏問題以降、揺れるサウジ問題で原油価格がコンスタントに下落したこと、住宅や自動車業界で明らかに息切れがみられること、ドル高が進みすぎたことなど世間一般に言われる理由を総合的に勘案したものと思います。

が、もう一つ、私が注目しているのは今週末にアルゼンチンで開催されるG20,そして11月1日に予定されるトランプ大統領と習近平国家主席の会談への予防線ではないかと思っています。パウエル議長にその会談の方向性は知らされていない、あるいは予想不可能とすれば会談で何が起きても市場が耐えうる下地を作っておく必要があります。そのためには会談で合意がなされず、貿易戦争がさらに激化しても「それを理由に金融政策を急変させない」工夫が必要としたらどうでしょうか?

逆に合意すれば中国側の懸念が和らぎ、世界経済が再び軌道に乗りやすくなるし、パウエル議長にとっても次の手を打つ選択肢が増える、という発想です。

私が感じる世界経済の問題とはアメリカ一極集中にあると思います。世界中見てもこれほど調子のよい国はありません。欧州は各国問題山積です。アジアは中国、韓国がひどい状態です。ロシアも冴えないし新興国はマネー流出と通貨防衛に苦しんでいます。多分、アメリカと日本ぐらいじゃないでしょうか、経済に極めて安定感があると思える国は。

とすればトランプ大統領の経済政策は極めて強力かつ、実行力があり、その分野においては歴史に残る大統領になりうる可能性すら秘めているとも言えます。そんな中、別の意味でなかなか困難な金融政策のかじ取りを担っているのがパウエル議長となるのでしょう。

私の予想は12月の利上げの公算は7-8割、2019年の利上げ回数は市場予想の中心の3回から2回ないし1回程度に減るとみています。

では今日はこのぐらいで。

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