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「東京会議」プレ企画「代表制民主主義は信頼を回復できるのか」 オープニングフォーラム 報告

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 ここまでの議論を受けて、工藤は「今回の日欧の世論調査に共通する傾向は、市民と政党に乖離があることだ。つまり政党が市民のために動いていないとなると、そもそも政党の存在意義は何なのか」と代表制民主主義をとる上での根本的な問いを提示。さらに、政党が極端な民意を利用して地位を得る傾向が、ヨーロッパのみならず日本にも見られると分析し、このような現状を立て直すことは難しいのか、パネリスト諸氏に問いかけました。


 「難問だ」と応答したのはレニエ氏です。「全ての政党が危機にある、ということは正しい認識ではない。もっともヨーロッパを見ると、明らかにポピュリストは台頭していることは事実であり、一般国民と政治家との乖離は、今に始まったことではない」と、ヨーロッパに関する自らの見解を主張。また、政府としては一般国民と理性的な議論をすることが難しい時代になったと指摘し、このような時代では、共通の利益がどこにあるのかを見定めることは難しいのではないかと分析しました。

 工藤は、石破氏が所属する自民党について、様々な人々から支持を受けているのか、それとも棄権する人々が多いために相対的に支持基盤を獲得できているにすぎないのかを問いかけました。

 石破氏は、「国政選挙の投票率は50%程度しかない。そして50%の得票率で当選できるということは、25%の積極的支持で、70%以上の議席を獲得してしまっている。したがって、当然民意との乖離は生じてしまう」と、選挙制度の構造的な部分に原因があることを指摘しました。


 また、日本の両院制は両院が同様の権限をもってしまっていることにも触れ、「同じようなものが二つあって意味があるのか」と、少数意見を尊重できない現行の両院システムに異議を唱えました。また、自らの自民党総裁選出馬経験を踏まえ、本来であれば総裁選に勝利した安倍総理が、石破氏を支持した45%の議員の意見を取り入れなければ、次回の選挙では辛酸を舐めることになる可能性が高いが、野党がバラバラである現状では負けることはないだろうと、日本の政治構造そのものにも疑問を投げかけました。

議会は行政の追認機関にすぎなくなってしまったのか

 ここで工藤は、日本にあるような与党審査制度はヨーロッパ諸国にも存在するのか問いました。ラックマン氏は、「一般的にはそのようなことに基づいている」と回答。さらに、国民が政党に対して信頼をしていないのはなぜか、という問いに関して、「フランスの国民戦線やトランプ大統領の出現に代表される社会の分断の中で、政党は社会を代表できていないと考えられているのかもしれない。亀裂を代表できている党が現れれば、人々は国会や政党に信頼を寄せるのではないか」と語りました。

 工藤は、国会の信頼度が低いことをどう捉えるのか。また、「日本には与党審査という制度があり、その中で揉まれている問題に国民はあまり触れられない」と、与党審査の抱える問題についても問題提起すると、石破氏が答えます。「与党審査があるのだから、与党は政府を持ち上げるような質問はしなくてもよいのではないか。また、野党もバラバラに質問するのではなく、どこに国民の興味があるのかを把握し、本質的な議論をする必要がある」と指摘。また、小泉政権時代の有事法制についての長期間の野党との議論と調整の末、二党を除いて合意を結べた経験を振り返りながら、「よりよい議論の一致を見出すのが議会の役割。国会は追認機関なのであれば意味がない」と力強く主張しました。

 この発言を受け、工藤が「党議拘束と与党審査をやめるのは無理なのか」と問うと、「与党が運営する政府で与党審査をやめたら意味がない」と石破氏は返答。また、党議拘束については、全てに党議拘束をかけるわけではないと述べ、実際に過去にも、脳死など死生観に関わる事柄については党議拘束を外したことがあると語る石破氏でした。


正確な情報を提供し、政府批判を恐れないことがメディアにとって重要な役割

 次に工藤は、「メディアはインフラとしての機能を果たせていないのではないか」という問題意識を提示。ラックマン氏は、トランプ大統領の登場に懸念を示します。「彼は、メディア攻撃、不信感醸成を正当化している。アメリカでは報道の自由が確立されているので多分メディアは生き残るが、世界中のメディア叩きを助長しているのは事実だ。その結果、世界で投獄されている記者数は記録的だ」と語りました。また、報道に対して過剰に批判的になることにも問題意識を示し、「民主主義の抱える問題にはメディアへの攻撃も含まれているからだ」と話すのでした。


 「メディアに対する攻撃がある」という点について理解を示しつつ、工藤は最後に、一方でフェイクニュースの問題に世界の既存のメディアはどのように取り組めばよいのか、と問いかけました。

 「諸外国と日本だと状況は違うと思うが」と前置きしつつも、「日本だと、メディアと権力が癒着すると社会が滅びるということは間違いない」と断言するのは石破氏です。「(第二次世界大戦)当時は大政翼賛会しかメディアがなく正確な情報がないために、実に都合がよいストーリーしかなかった。いかにして正確な情報を提供し、政府の批判を恐れないかということが重要だ」と、戦時中を振り返りつつメディアの持つ役割の重要性を提示しました。また、近年のメディアについて、各々の論調がはっきりしてきたと指摘。「ただ、市民は普通一種類の新聞しか読まない。それでは一つの論調に市民の意見が固まってしまいよくない。メディアは自分とは違う立場についても紹介すべきだが、商業ジャーナリズムの下では困難だ」と、現代メディアが抱える役割とそれを果たす困難についても言及しました。

 今回の議論を振り返った工藤は、「当初の期待よりも何十倍も高いレベルの議論ができた。この議論を後のセッションへ引き継ぎたい」と満足感を示し、オープニングフォーラムは終了しました。

文責:小菅生草太(言論NPO インターン )

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