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「できなかったことができるようになったときに人は前向きになれる」 重度障害者が働くロボットカフェが都内にオープン

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ロボットがコーヒーや紅茶を運ぶ、近未来の世界のようなカフェが11月26日、都内に期間限定でオープンした。

(BLOGOS編集部)

ロボットの名は「OriHime-D」。一見“ペッパー”のようにも見えるこの人型ロボットだが、AIで動くのではなく人間が実際に遠隔で操作し「分身」として動く。

さらに、今回このカフェで働くのはALSなどの難病や身体に重い障害を持つ人たちだ。中には寝たきりの状態で視線を動かしロボットを操作し働くスタッフもいるという。

ロボットの「中の人」たちは、一体どのような人たちなのだろうか?カフェの店頭にフロアリーダーとして立つ、村田望さん(33)に話を聞いた。

自宅から遠隔操作をすることで店頭に「立つ」

村田さんはOriHime-Dを使って店頭に”立つ”(右)(BLOGOS編集部)

「いらっしゃいませ!分身ロボットカフェへようこそ。当店はロボットと人間を区別いたしません」。

オープンしたカフェの名前は「分身ロボットカフェ DAWN ver.β(ドーン バージョン・ベータ)」。東京・虎ノ門の日本財団ビルの一角に、12月の障害者月間に合わせて2週間限定で営業している。

人間の代わりにオーダーを取りに行ったり、商品を席まで運んだりするのは、オリィ研究所(東京都港区)吉藤健太朗代表が開発した身長120センチの分身ロボット「OriHime-D(オリヒメディー)」だ。

オリヒメディーにはカメラ・マイク・スピーカーが搭載されているため会話ができるほか、ドリンクを提供したり、移動も可能だ。たとえ肢体不自由でも目線を動かせば操作ができ、スタッフは自宅から遠隔操作することで店頭に立つという。

「バスのステップを昇りづらくなった」 発症したときは就職活動中だった

村田望さん(BLOGOS編集部)

今回のカフェでフロアリーダーを務めるのは村田望さん(33)。体の筋肉が動かなくなっていく難病「自己貪食空胞性ミオパチー」を発症したのは大学3年、就職活動中のときだった。

「初めの異変は些細なものでした。バスのステップに昇りづらくなったり、歩いていても何度も転びそうになったり。

就職活動中だったので、リクルートスーツにパンプスでしたが、本当に疲れやすくなっていて。同級生たちが数十社の説明会や面談を受けている中、私は数社受けるだけで精一杯でした」。

身体の不調に違和感を持ちながら臨んだ就職活動だったが、無事にIT企業から内定を得ることができた。だが、階段の昇り降りが難しくなるなど病気は徐々に進行していった。

「いよいよおかしいなと思い、約1年後の大学4年のとき、検査入院をしてやっと病気が判明しました。でも、お医者さんからは『筋肉の病気だけれども、いまある病気の中に当てはまるものがない』と病名は分かりませんでした。

急にわけのわからない病気になってしまったと、どうしたらいいのかわかりませんでしたが、『まずは休養しないと』と、会社の内定を辞退しました」。

それでも、大学卒業後、「働きたい」と思った村田さん。接客業が元々好きということもあり、地元駅前の惣菜店のレジなど立ち仕事が多いアルバイトをしていたというが、外出時に車イスを使い始めると、少しずつ自分がやりたい仕事を選ぶことからは遠ざかっていったという。

「26歳のときに障害者手帳を取得して、障害者枠で仕事を探し始めましたが現実はとても厳しいものでした。接客のような求人はほぼゼロ。庶務作業など事務職がほとんどでした。

なにより、仕事内容よりも企業のオフィスの設備が最優先事項になっていきました。私の場合は車イスなので、多目的トイレがあるということを大前提として探さなければいけませんし、運よくトイレがあったとしても『社内のフロアが狭いから』と断られることもよくありました。

障害者枠雇用枠で働き始めてからも、『やりたいことを主張すると、わがままと思われてしまうんじゃないか』と思い、周囲にもあまり言えませんでした」。

できることが少なくなる中で「寝たきりになっても働けるという希望」

転機となったのは昨年4月。自宅で転倒し右足を骨折したことだった。入院先の病院に偶然、研究所の吉藤代表が訪問したことが縁で9月に同研究所に入社。現在は在宅で代表の秘書として月に60~70時間働いている。

オリヒメで出勤する村田望さん。画面越しには同僚の姿が見える(BLOGOS編集部)

「今回のカフェで働くスタッフは、ALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症したり、事故で頚椎損傷になったりして、人工呼吸器を付けているため寝たきり状態など、身体が不自由になってしまった人たちです。

私もそうですが、事故や病気の発症の前には、何の不自由なく身体を動かしていた人たちも多いんです。

やれることが段々と少なくなっていってしまう中で、できることが増えるというのは本当に希望だと思っています。私自身も、不安がある中で、たとえ寝たきりになっても働けるということに自信を持てることは、病気を前向きに捉えるとても大きな力になりました。

メンバーの方たちには事故で障害を持つ前には、飲食店やカフェで勤務をしていた人たちもいて、応募してくださったときにも『ケガをしてから接客の仕事はもうできないと思っていたけれども、できるんじゃないか』『諦めていたことができるようになるかもしれないと思った』と、すごく期待をしてくださっています。

オリヒメのようなテクノロジーが広まっていくことで、これまで働くことを諦めていた人たちの働き方が広がっていったらいいなと思っています」。

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