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ミシュラン1つ星の広尾「Ode」生井祐介シェフ 25歳未経験からの料理人人生

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外国人観光客の増加、SNSの普及。
現在、飲食店のアプローチの仕方が大きく変化している。

東京・広尾にある「Restaurant Ode」の生井祐介シェフは、自らシェフを務めてミシュランの1つ星を獲得した前店を去年辞め、自分の店をオープンさせた。積極的に海外レストランとのコラボを行う生井氏に、料理人人生を振り返ってもらいながら、食へのアプローチについて話を聞いた。


海外の客は料理人をクリエイターととらえる

――お店をオープンしたころ、インタビューで「海外からお客さんに来てほしい」ということをよくお話しになっていましたが、どういう思いだったのでしょうか?

インバウンドの需要が増えていましたが、ただやみくもに席を埋めるのではなくて、意識の高い、食に関心のある人たちに、わざわざ目指してもらえるようなレストランにしたいと考えたんです。

――海外からわざわざ来るお客さんは、やはり食に関心のある方が多いのでしょうか?

食に関心があるということに加えて、料理人がどういう”クリエイティブ”を行うのかということに期待していると感じます。

わざわざ東京に予約してまで来るお客さんとは、出てくる料理をただ「美味しい」というだけではなくて、「なぜこういう料理になったのか考えを知りたい」といった会話になる。

そうやって、対ヒトとして向き合って食べてくださるお客さんは、僕から料理以外の色々な情報を引き出してくれる気がします。

ただ食事に来た、美味しかったということ以外に記憶に残る旅のひとつになる。そういうことをスマートにやれる方が海外の方は比較的多いです。

――海外の方たちは、シェフ個人を超えてもっと広く日本人、日本に対してどういったものを求めているのでしょうか?

日本に来るお客さんは、「いま京都の紅葉がきれい」だとか色々なことを知っています。

日本のことを調べてきてくれるお客さんからは、その上で「なぜこういう風になっているのか」「なぜこういう食材を使うんだ」と聞かれることがあります。

どういうことをすれば興味を持ってお店に来てもらえるかを常に考えていて、例えばアミューズでドラ○ンボールという料理を出しています。海外の方の反応もとてもいいです。

1品目に出される「ドラ○ンボール」

25歳と遅いキャリアスタート

――シェフは料理の世界に入られる前は音楽活動をしていたと伺いました。

高校卒業後、料理とは無関係の専門学校を出た後、一度就職しましたが2年で我慢できなくなってしまい、地元の埼玉に戻りました。軽音楽部で一緒に活動していたような友人たちと、音楽活動がしたくなったんです。

――専門学校に行ったのは、何か目指すものがあったのでしょうか?

根拠も目標もまったくなく、ただ学生の時間を引き延ばしたいという安易な考えでした。

今考えると埼玉に戻ったのも、仕事から逃げて、友人たちと遊びたかっただけで。25歳まで、そんな感じでダラダラ過ごしてしまいました。

――そこから料理の世界に入ったのはどのようなきっかけがあったのですか?

2人の方が関係しています。

1人はお世話になっていた千葉のライブハウスのマスター。
元料理人で、当時お金のなかった僕たちにツケで飲み食いさせてくれていたんです。
それが全部美味しくて、料理って面白そうだなとぼんやり感じていました。

もう1人は当時付き合っていた大学生の彼女です。
就職が決まった彼女が大阪に行くことになり、離れ離れになったときにちゃんと職を持ってくれていないともう無理だ、と。
それで必死になったんですよね。

最初はマスターに料理を教わった後、他のお店を紹介してもらいキャリアがスタートしました。

――ちなみにその恋人というのは…

今の奥さんではないです(笑)。

――ないんですね(笑)。

なのでここはあまりフォーカスしないほうが…(笑)。


フランス行きを諦め軽井沢へ

――東京で数軒修行された後、軽井沢に行かれたとか。

フランスや海外で修行するというのも、年齢的に最後のチャンスだと考えていました。

それでも師事していたシェフに誘われて結局軽井沢に行きました。

――決め手になるものはありましたか?

「どこで働いていても、自分が何をするかが大事だよ」という話をされて、それが響きました。

フランスに修行に行っても”一緒くた”になってしまう人が多い中で、全然違うところでもそこで”自分”を磨けば”個”として立つのではないかと。

軽井沢では、スーパーの野菜と違って農家さんが「今はまだこれくらいだけど、生でもおいしいよ」とか、成長の過程を教えてくれて、そのつど色々な形、テイストのものを食べられる。今まで”ズッキーニとはこうだ”という固定観念で考えていた料理とは全く違う発想が生まれるようになりました。

また作り手によって味の違う野菜の個性にビックリさせられて、この料理には○○さんのルッコラ、○○さんのトマト、と指定して使っていました。

――そんな軽井沢から東京に戻ろうと思ったのは、なぜでしょうか?

東京は料理の世界でも日本の中心です。

東京で活躍しているシェフが憧れでしたし、田舎の軽井沢で、専門誌に自分と同年代の人たちがどんどん出てくるのを見ると、自分は全然スポットライトを浴びていないという思いがありました。

Facebookで増やした料理人の”友達”


ちょうどFacebookとかSNSが料理人の間で広まってきていて、僕は専門誌で見た有名なシェフに片っ端から友達申請していたんです。こういうことをやっています、と添えて。

友達になってしまえば、その人たちのタイムラインに自分の投稿がアップされる。そのころ軽井沢で暇だったので、頻繁に料理をアップしていたんです。

写真を撮って、加工アプリでカッコ良くする、という作業をとても楽しんでいました。

――自分の料理がどう映えるか、というのも少し意識したりしましたか?

少しどころではなかったですね。とても意識してやっていました。
だから料理を作っちゃ撮って、上げて、と続けていたら色々な人が気にしてくれて。東京に行きたいというのは、リアクションがぽつぽつ出てきたころでもあったんです。

――では今お客さんが写真を撮ってSNSに載せて、ということにネガティブなイメージはありますか?

まったくありません。

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