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北方領土、安倍首相が2島返還に方針転換 - 柴田鉄治

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 シンガポールで行われた23回目のロシアのプーチン大統領との首脳会談で、安倍首相は大きく舵を切った。北方領土の4島一括返還をあきらめ(とは言っていないが)、歯舞、色丹の2島返還で「実績をあげたい」という方針に変換したようなのだ。

 安倍首相の気持ちになってみれば、その変換は分からないではない。自民党総裁選で3選を達成して、戦後最長の長期政権を担うことになりそうなのに、実績らしい実績が何もないからだ。

 「もり・かけ疑惑」で悪名のほうはいやというほどあるのに、誇れるものは何もない。 憲法改正を最大の「実績」にしたいと考えてきたようだが、野党の反対だけでなく、与党内からも疑問の声が噴出して、かなり難しい状況になってきている。

「外交の安倍」も、訪問した国の数では大変なものだが、最も大切な近隣外交、中国と韓国との間がギクシャクしていては誇るわけにもいかない。

 トランプ米大統領の信頼が厚いといっても、貿易摩擦で厳しい目を向けられている。そうみてくると、安倍首相が誇れるものはプーチン氏との友好関係しかない。確かにプーチン氏との首脳会談は20回以上にもわたり、「意気投合」してきたことも確かである。

「平和条約を先に」プーチン氏の提案に乗る

 安倍首相の方針転換は、その前の首脳会談でプーチン氏から突然出てきた「平和条約を先に締結しようではないか」という提案に乗ったものだ。これまでの両国の交渉は、領土問題を解決してから平和条約を、という形で進んでおり、プーチン氏の提案はそれを突然ひっくり返すものだけに当然、日本は拒否するとみられていた。

 それを安倍首相が受けて立ったのは、プーチン氏の提案の背後に「4島返還は絶対に無理」というロシア側の意向を読み取ったからではなかろうか。2島返還だけでも実現させるために、ロシア側が懸念する「返還されても2島に米軍基地が置かれることはない」という約束までしたのだから驚く。

 歯舞、色丹の2島返還なら1956年の日ソ共同宣言で合意しており、あのとき米国の反対で日本側が反対しなかったなら、返還が実現していたはずのものなのだ。その後、日本側の「4島返還から平和条約を」という主張に沿った交渉が続き、1993年細川政権のときの東京宣言、2001年森政権のときのイルクーツク声明と少しずつ進んできただけに、それらを一気に放棄して2島返還に戻るのでは、これまで交渉を続けてきた外務省などが収まるまい。

 とはいえ、外交交渉には相手があることで、自国の思い通りにいくものではない。そう考えれば、安倍首相が言うように「2島の先行返還で、4島の交渉は続けるのだから方針転換ではない」という主張(いささか強引だが)も、分からないでもない。

 また、プーチン氏も「2島は返還してもその主権はどちらになるか分からない」と、2島返還にも「難癖」をつけている。恐らく2島返還でも「ロシアにとっては大変な譲歩なのだぞ」と日本の世論に呼びかける狙いなのではあるまいか。

 とにかく「2島返還と平和条約」という新しい方針を選ぶかどうか、この際、国民的な論議を展開し、国民が納得できるような決定をするよう期待したい。

サウジアラビアのカショギ記者の殺害を命じたのは誰か?

 サウジアラビア政府は、自国の政府に厳しい批判をしてきたジャマル・カショギ記者を在トルコの総領事館内で殺害したことを認めた。行方不明になった当初は、よく似た男を領事館から外に出して「帰った」などと言っていたが、世界中から「殺害したのではないか」という声があがり、外国からサウジへの投資を手控える動きまで広がって、認めざるを得なかったようだ。

 しかし、最高権力者のムハンマド皇太子に関与が及ばないよう、殺害に関与した政府関係者5人を解任処分にした。ところが、トルコの大統領が捜査結果を詳細に発表し、本国から呼び寄せた15人もの「暗殺団」によって、殺害され、遺体まで処理されたことが明らかになった。

 サウジの検察当局も動かざるを得ず、暗殺団を起訴し、うち3人に死刑を求刑する方針まで公表した。最高権力者の関与を否定するため、実行犯を死刑にするとは、と驚いたが、それでもことは収まらなかった。

 米国のCIAが、ムハンマド皇太子と弟の駐米大使の電話を盗聴し、「ムハンマド皇太子が命じたことが明らかになった」と米国のメディアが報じたことで、事態は一層、深刻になった。サウジは米国の同盟国で、米国から高価な武器を買っており、トランプ大統領も「事件は許し難いが、ムハンマド皇太子は無関係と思いたい」と言い続けているからだ。「自国主義」もここまでくると、やり過ぎだろう。

 サウジ、トルコ、米国のからんだこの事件で、中東がこれからどう動くのか、ますます分からなくなった感がある。

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