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「痩せなくては」と自分を追い込むスポーツ選手たち~次々と明らかになる女性アスリートの摂食障害、どう向き合うか~

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体重の数値だけが自分を認めてくれる

写真AC

「トップ選手の自己ベストと身長体重が書かれた表を見たとき、自分よりもはるかに身長が大きい選手が、自分より軽い体重だったことを強烈に覚えているんです。体重を減らせば、努力が認められるかもしれないと思いました」

社会人1年目のりんさん(仮名、25才)は、陸上部だった高校2年のときから約8年間、摂食障害に苦しんでいる。

「当時は17才だったので、受験へのストレスや人間関係の悩みもありました。そんなとき、部活で短距離から中距離に種目を変えて、体重が少し落ちたのがきっかけで減量がやめられなくなったんです」

身長が高くて体重が軽い人のほうが速く走れるだろう、という考えもあった。食事を我慢すれば、我慢した分だけ体重が落ち、タイムも伸びる。りんさんは食事をほとんど取らず、睡眠時間を削って部活と勉強にのめり込んだ。記録は伸びたが、次第に体力が落ちて走れなくなった。

体重が33キロを切った高校3年のとき、「拒食症 」(注1)と診断された。自宅療養を勧められ、部活も勉強もできなくなった。

本人が告白しないとわからない、水面下で広がる病

BLOGOS編集部

日本摂食障害協会によると、摂食障害は主に以下の3つに分類される。

①食事をほとんど取らなくなる「拒食症(神経性やせ症)」
②大量に食べた後、嘔吐や下剤の乱用などをする「過食症(神経性過食症)」
③嘔吐などはしないが大量に食べてしまう「過食性障害」

厚生労働省が2015年度に行った調査では、国内での拒食症の患者は約1万2000人で摂食障害全体では約2万6000人。過食症の場合は本人が告白しないと把握ができないため、拒食症患者の5~10倍いると推計されているといい、潜在的な患者は推計で数十万人にのぼるとされている。

フィギュアスケートやマラソン 女子選手の摂食障害が次々と明らかに

健康であることが前提のスポーツ界で、女性選手の拒食症や過食症が次々と明らかになっている。

昨秋、1人のフィギュアスケート選手が電撃引退を発表した。ソチ五輪で活躍し、日本でも人気のユリア・リプニツカヤ選手。原因は拒食症だ。フィギュアスケート界ではリプニツカヤ選手だけでなく、米国のグレイシー・ゴールド選手も昨年、摂食障害を理由に休養した。日本でも鈴木明子選手が、拒食症だった過去を公表している。

また、昨年、女子マラソンの元世界選手権代表の女性が、スーパーで菓子などを万引きしたとして逮捕された。彼女は30代後半で、学生時代に、過度な減量から摂食障害を発症していたとされる。

現在は過食症で、むちゃ食いするための菓子などを万引きし、やめられなくなるクレプトマニア(窃盗症)に罹患していた可能性が高い。競技生活のストレスが、引退後の人生を変えてしまったともいえる。

選手生命も絶たれることに

体力的、精神的な問題から競技を楽しめなくなり、選手生命が絶たれてしまうケースもある。

前出のりんさん(25)は、陸上選手時代に33キロまで体重を落としたあと、拒食症と診断された。部活も勉強もできなくなり、希望の大学へ行けず、進学した別の大学では陸上の同好会に入ったものの、半年で行かなくなったという。原因のひとつが過食症だ。

「大学に入ってから、今度は過食がひどくなりました。食べ物なら何でも食べてしまう。砂糖やきなこを袋のまま食べたり、麺とかも茹でる時間がもったいないから、そのまま生で食べたり。ゴミ箱に1回捨てたものを拾って食べたこともあります。体が重いとタイムも出ないし、周りから『太ったね』と言われるのがイヤで、競技はやめてしまいました」

りんさんのような選手は決して珍しいケースではない。スポーツ選手の摂食障害は、業界全体にじわじわと広がり、選手たちにマイナスの影響を及ぼしている。何より本人が最も辛いのだ。

子供のような体型の方が短期的には好記録を出しやすい

日本摂食障害協会理事の西園マーハ文氏は、スポーツ界に特有の問題を指摘する。

日本摂食障害協会理事で白梅学園大学教授の西園マーハ文氏

「強豪校と呼ばれる学校では未だに、コーチが皆の前で選手の体重を測り、理想の数値が出なければ叱りつけるといった指導が行われています。選手同士の競争も厳しい。本来、思春期の心と体の成長に使われるはずだったエネルギーが、スポーツに全て奪われてしまうのです。不安な心が、選手を過剰なダイエットに向かわせます。

フィギュアスケートや体操、マラソンなどは、細くて子供のような体型の選手が好記録を出しやすいとされます。その結果、競技開始年齢はどんどん早まり、今や小学生の頃から過剰な競争をさせるのが当たり前。選手が体重にこだわってしまうのも無理はありません」

子供のような体型を維持しようと、食事制限にのめり込み、摂食障害になってしまう選手が後を絶たないのだ。

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