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ゴーン逮捕は非常にショック、優秀な経営者を失った日産は大丈夫か〜田原総一朗インタビュー

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日産のカルロス・ゴーン会長が役員報酬を過少申告していた容疑などで、東京地検特捜部に逮捕された。経営のカリスマの突然の失脚は、国内外に大きな衝撃を与えている。これまでゴーン氏に2回、インタビューしたことがあるという田原総一朗さんは、今回の事件をどう見ているのか、話を聞いた。【田野幸伸・亀松太郎】

非常にハッキリものを言う男だった

僕はカルロス・ゴーンを経営者として非常に評価していたので、今回の事件はショックだった。

最初に彼にインタビューしたのは1999年。彼がルノーから派遣されて、日産のCOO(最高執行責任者)に就任したときだ。そのときの日産は経営不振のどん底だった。

就任3カ月後にインタビューしたとき、彼はこんなことを言っていた。

「日産の幹部たちに、なぜ日産は経営不振なのかと聞いた。そうすると、市況が悪いからだと答えた、市況が悪いというが、トヨタやホンダは調子がいい。なぜ日産はダメなんだと聞いた。そうすると全く答えが出なかった。要するに、日産が経営不振なのはこの連中がいるからだ。彼らを処分しないとダメなんだ。そう決意した」

ハッキリとそう言った。さらに、彼は「日産は非常に風通しが悪い」と言った。「閉鎖的な会社だ」と。

たとえば、経営者が販売台数を増やそうと社内に発破をかけると、販売部門は車を売るためにダンピング販売する。非常に風通しが悪く閉鎖的な会社なので、販売部門がダンピング販売していることを経営者に言わない。

一方で、部品などを仕入れる仕入部門は、トヨタやホンダに比べて、2割高く仕入れている。2割高く仕入れて、リベートを取っている。ダンピングして売って、高く仕入れたら、経営不振になるに決まっている。

ところが、日産は縦割りで風通しが悪く、閉鎖的なので、そのことを社員のほとんどが知らない。だから、社員たちに危機感もない。そこで、縦割りの壁を全部ぶち破って、風通しのいいオープンな会社に作り変えないとダメなんだ。

ゴーンはこういう風に決意した。そして、彼はわずか2年で、日産を見事に回復させた。

大きな工場を5つ閉鎖し、社員を2万人リストラした。思い切って、コストをカットした。だから「コストカッター」と言われた。日産を超スピードで復活させたので、日本で高く評価された。

インタビューで会ったときの彼の印象は「非常にハッキリものを言う男」というものだ。あいまいさがない。こんなにハッキリ言っていいのかなと、こちらが心配するくらい、ハッキリ発言していた。そして、言葉通り、ハッキリとやったわけだ。

2回目のインタビューは、日産が復活した後だった。非常に自信満々な姿勢が印象に残っている。

彼は非常に決断が早い。そして、決断したら実行する。日本人にはこういう経営者は少ないので、僕はすごいなと思った。それだけに、今度の事件は非常にショックだ。

フランス政府と日本政府の駆け引きがちらつく

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なぜ、こんな事件が起きたのか不思議だが、金持ちというのは、金を持つほど欲張りになるのかもしれない。アメリカやヨーロッパの経営者も似たようなことをやってるのか。ゴーンだけが欲張りだとは思えない。金持ちたちの考えることは、僕らには理解できないところがあるのかなと思う。

もう一つ疑問なのは、ゴーンが以前から報酬を過少に報告していたとしたら、会社の他の幹部たちも知っていたのではないかということだ。実態を把握していた役員もいるはずだ。なぜ、いまになって内部告発があって、東京地検の捜査を受けることになったのか。

背景として考えられるのは、ルノーと日産の経営統合に対する日産幹部の反発である。ルノーの筆頭株主はフランス政府だ。そのフランスのマクロン大統領とゴーンが話し合って、ルノーが日産を完全に統合するという話が現実味を帯びてきた。

ところが、日産の西川廣人社長などの幹部たちは反対している。このあたりから日産の幹部たちのゴーンに対する反発が大きくなって、何とかゴーンを追い出したいという動きが強まった。そして、東京地検特捜部に訴えた、と。

東京地検と日産の間では司法取引があったと報じられている。いまのところ、ゴーンとその腹心だったケリーの個人的犯罪として扱われているが、実態はもっと複雑だったのではないか。フランス政府とゴーンは事実上ルノーの支配下での三社統合を図ろうとしていて、日産がこれに「否」を突きつけたのではないか。

とすれば、当然日本政府も関わっている重大な問題だ。

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