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【読書感想】トランプのアメリカに住む

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 現実には、アメリカの人口動態を考えてみると、「中流にしがみつきたい白人労働者」たちは、これから、どんどん少数派になっていくと予想されているのですが。


 著者が指摘している、日本とアメリカの大学制度についての提言は、興味深いものでした。

 要するに、アメリカの大学生活は、日本のよりもはるかにメリハリが利いている。働くときは集中して働き、学ぶときは真摯に学ぶが、時間が過ぎるときっぱりそこから離れる。もちろん日本の大学人だって、多くの人はそのほうが望ましいと思っているに違いない。しかし、日本の大学では決められるべきことが延々決まらず、多くの教職員が手続きや調整、意思決定に膨大な時間を使い、結果として業務が果てしなく続く。教員も職員も、先の見えない非効率な長大な時間を使い、結果として業務が果てしなく続く。教員も職員も、先の見えない非効率な長時間労働でやがては疲弊していくのが現実である。なぜ、ハーバードでごく自然に実現できていることが、日本のとりわけ国立大学ではまったく実現しないのか——。

 その最大の原因は、大学の諸機能の専門分化が進んでいないことにある。私が渡米してハーバード大学で諸々の手続きを始めたのは2017年8月のことだった。最初の二週間、私はライシャワー日本研究所の優秀なスタッフに助けられながら多くの手続きをした。おそらくは日本の大学ならば、この手の手続きは所属学部の総務課あたりに書類が揃っていて、その係員に助けられながらその場で書類に記入していくだろう。その際、決定権は職員にはないので、諸委員会を経て1か月くらい後に決定が下されることになる。ところがハーバードでは、私はあちこちの専門職員のオフィスに連れていかれ、質問に答え、提示される書類にサインをした。それ自体は面倒だが、その職員の承諾が得られると、その場で私に関するすべての事項が決定された。ちょうど入国ビザが、大使館の係官の面接によって決定・支給されるのと同じである。各専門職員は、自分の職掌の事項では直接、最終決定権を持っているのである。

 つまりハーバードでは、各分野で決定権を持った職員がおり、その人自身の判断で相当なところまで決裁できる。より上位の誰かに確認したり、委員会に諮ったりといった手続きは行わない。このように意思決定の専門化と分業化ができていることが、ハーバードという巨大組織の運営を効率化している。ところが日本のとりわけ国立大学では、意思決定を過剰に合議制に委ねているため、職員が決定権を持つ範囲が狭く、そもそも職員の専門職化も進んでいない。


 僕はアメリカの大学で働いたことはないのですが、日本の大学(多くの組織にもあてはまる)はなんでも決めるのに時間がかかるし、「みんなの意見をきいて」という名目で参加者の人数がムダに多くて、会議の数もさらに増えていき、とにかく効率が悪いんですよね。
 大学の偉い人たちは「自分たちの決定権を保持しつづけること」を重視しているのだろうけれど。

 日本の大学は、もっとみんなが時間を有益に使えるように、役割分担や専門性を考えて、効率化したほうが良いと僕も思います。

 ちょっと言い回しが凝りすぎていて、とっつきにくいところもありますが、こういう本こそ、頑張って読んでみるべきなのでしょう。

fujipon.hatenadiary.com
fujipon.hatenablog.com


ルポ トランプ王国?もう一つのアメリカを行く (岩波新書)


激震! セクハラ帝国アメリカ 言霊USA2018 USA語録 (文春e-book)

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