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「青春を追体験しているんです」部活に熱中するあまりに子どもの退部を許さないブラック保護者たち

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「やめたい。と言ったら親に厳しく叱られました」

「高い道具を買ってくれた親に、辞めたいと言えません」

“高校野球ブラバン応援研究家”として吹奏楽の応援について発信し、多くの高校生に取材しているライターの梅津有希子さんがブログにつづった「部活は嫌なら辞めていい。」のエントリには、部活に悩む中高生たちからの相談が日々寄せられている。

相談内容は、勉強との両立や人間関係など様々だが、子どもが部活を辞められない要因のひとつに、「部活を辞めさせてくれない親」の存在があるという。

「ブラック部活」で休日もなく疲弊する教員の働き方などが話題になっているが、部活に打ち込む子どもたちを支えているつもりの親が“ブラック化”してしまっているというのだ。

梅津さんに話を伺った。【取材:石川奈津美】

BLOGOS編集部

「甲子園有名選手はサイン攻め」混乱を恐れ野球部は文化祭参加禁止

今年の秋、とある甲子園常連校の野球部の生徒たちは、自分たちの高校の文化祭への参加を禁止されたという。理由は周囲の過熱ぶりだ。梅津さんがその理由を話す。

「甲子園やサッカー全国大会の常連校などの文化祭では、部員の子にサインや写真をもらうための順番の列ができているのをよく目にします。

そのとき、他校の女子高生に混ざって、『お目当ての選手のサインが欲しい』と部員の親がたくさん来るんですね。一緒に写真を撮ってもらったり、それをSNSに上げたり。まるでスターの“追っかけ”のようになってしまっています。甲子園で活躍した選手が人気者になるのは昔からのことですが、SNSによってさらに加速しているのかもしれません。

今回はそうした”混乱”が起きることを想定し、学校側が野球部の不参加を指示したようです」。

「自分たちも青春を追体験しているんです」

高校野球ブラバン応援研究家として、野球場などで取材活動を行う梅津さんは、他にも親の「熱狂振り」を目にすることがあるという。

「例えば球場に応援に駆けつけている親御さんを見ると、応援の掛け声や振り付けまで良く覚えているな…と感心してしまうくらい、一糸乱れぬ動きです。特に、強豪校になると、お茶係や送迎係などの役割分担もはっきり決まっていますし、何とか都合をつけて全試合に足を運ぶ親もいます」。

梅津さんが「何でここまで熱心なんだろう」と疑問に思い、保護者に直接聞いてみたところ、驚きの答えが返ってきたという。

「お母さんのひとりから、『自分たちも青春を追体験しているんです』と言われました。同じ夢を追っている子どもの親として一丸となって応援するのがとても楽しいのだそうです。

また、親同士の交流も、他にはない楽しさがあるそうです。会社の人間関係とも、塾のママ友とも違う、『目指しているものが同じ』という、一味違ったネットワークやコミュニティです。子どもの夢=親の夢という構図ができあがり、親も子どもと一緒に夢を追いかけます。子どもが卒業したあとも、親同士集まって食事をしたり、旅行に行くという父母の話もよく聞きますし、自分の子どもがいなくてもそのまま部の追っかけを続けるケースも多いです」

部活コミュニティから抜けたくない親のエゴが子どもを追い込む

一方、親がそうした「青春の追体験」に入れ込むがゆえに、子どもたちが簡単に「辞めたい」と言い出しにくい環境を作り出しているという。

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「すべてがそういった理由ではないとは思いますが、親の期待があるから辞めにくいと相談してくる子は多いですね。『今辞めたら親に悪いから』『親もずっとここまで一緒に手伝ってくれているから申し訳ない』と。

親も、部活に入れ込んでいると、子どもが部活を辞めてしまうとそのコミュニティも抜けなきゃいけなくなると必死になってしまうんですね。そういう心理状態だと、たとえ子どもから辞めたいと相談されたとしても、心から『辞めていいよ』とは言い出しづらくなり、つい『あと少し頑張りなさいよ』と言ってしまいます。

結局、親御さんも意図しないところで、熱すぎる思いが子どもをどんどん追い詰めてしまうという状況になっていってしまいます」。

顧問の教員は「LINEアカウントを親に教えたら終わり」

梅津さんはこうした親の熱狂振りの理由には少子化が影響している可能性を指摘する。

「子どもが1人しかいなかったりすると、親も過保護になりがちだと思うので、『うちの子が』というふうになってしまいます。学校の先生と話す機会も良くあるのですが、『何でうちの子レギュラーに入れてくれないんですか?』と学校に連絡が来ることもあるそうです。

ある先生は『LINEのアカウントを教えたらもう終わり』と嘆いていました。保護者からひっきりなしに連絡がくるそうです。親もひとりの子どもに対して、期待値が高すぎて、入り込んでしまっている印象です。

でも、子どもが悩んだとき、一番身近で相談できる大人は、本来『部外者』である親なんです。だから親が『そんなのあんたの考え方が甘いんだ』や『みんな他の子が頑張っているんだから』『あと少しなんだから頑張んなさい』というような否定はしないで欲しいなと思います。

子どもは疲れやすくなっていたり、『ケガをしてしまった』と話してきたり、何らかの不調のサインを出していることがあります。

内部に入り込みすぎてしまうと子どもも言い出しにくくなり、その結果、親自身も変化に気づきにくくなってしまいます。親は『部内者』になりすぎず、ちょっと一歩引いた視点も持って欲しいなとは思いますね。

楽しいという気持ちはもちろんわかるのですが、そのために子どもが辛い思いをしてまで続けるのはおかしいですし、親御さんとしても、望んでいることではないはずです。それこそ子どもが部活を辞めたとしたって親同士のコミュニティが崩れるわけではありませんから」。

子どもにとっての半年は大人よりも長い

自身も中学・高校時代に吹奏楽の強豪校で部活に打ち込んだ梅津さん。「子どもの世界はとても狭い」と話す。

「いま大人になってから思いますが、部活に打ち込んでいる子どもの世界は、クラスの中か、同じ学年の同級生か、部活の選択肢しかなく、すごく狭いんです。アルバイトができる環境でもないので、学校以外の人間関係がない。だから、部活を辞めてしまうと無視されるんじゃないかという不安は、人生が終わってしまうのではないかと感じてしまうくらい大きなものです。

また、大人の半年はあっという間に過ぎてしまいますが、中高生にとっては、とても長いものです。『あと半年だから、3ヶ月だから頑張りなさいと親に言われるけれども、もう限界』と私に相談してくる子たちは本当にたくさんいます。

私自身は、部活を楽しんでいましたが、こうしたある種閉ざされた環境には合わない子も絶対いるんじゃないかなと思うんです。集団行動が嫌いな子もいるし、みんなと一緒にいるのが苦手な子もいるので、向き不向きは絶対にあるということも言いたいですね。

そういったことも含め、子どもたちは自分のいる環境しかわかりません。だからこそ、子どもから相談を受けたときには、吹奏楽やスポーツを続けたければ部活以外の団体を教えてあげるなど、『そんな方法が他にあるの』とか『そんな考え方があったんだ』と別の世界や視点を持てるように親が提案をしてあげることがとても大切だと思っています。親は子どもにとって、最大の味方であるということを忘れないでいてほしいなと思います」。

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