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経営者は現代の貴族なのか?

先週日産の元会長カルロス・ゴーン氏が逮捕され、国内外を巻き込んだ大スキャンダルになっています。

過少申告されたという報酬金額の巨額さもさることながら、私が一番ショックを受けたのは、ゴーン氏が2016年に再婚した際にその披露パーティーをソフィア・コッポラ監督の映画『マリー・アントワネット』を模した演出で、ブルボン王朝時代のベルサイユ宮殿大トリアノン城で開いていたこと、そして、東京、パリを含む世界6か所に自宅をもち、その費用を会社に負担させていた可能性が高いという報道でした(結婚パーティー費用も会社もちだったという報道もあります)。

「ザ・コスト・カッター」の異名で知られるゴーン氏の経営手腕は誰もが認めるところであり、経営危機に陥っていた日産を見事に復活させた業績は逮捕後も高く評価されています。しかし、上記の報道を見る限り、ゴーン氏には経営者としてあるべきコスト感覚やバランス感覚が欠落していたように私には思えてしかたありません。

まず、結婚パーティーの件。

マリー・アントワネット妃を筆頭とする王家メンバーや貴族たちがギロチンで残酷に処刑されるという悲劇の原因は、度重なる戦費調達に加え、様々な宮殿の建設費や王侯貴族たちの贅を尽くした享楽的な生活を支えるための俸給の出費などにより国家財政が破たんしたこと、また物価高騰に苦しむ庶民の生活がひっ迫し、王朝に対する不満が高まったことからでした。

コスト・カッターとして辣腕を振るったゴーン氏ならば、日産社員をはじめ、納入業者や販売店がどれだけの苦労をしてコストを削り、厳しい競争を勝ち抜いてきたかを知らないはずがありません。そうした夥しい数の人々の努力によって少しずつ積み重ねられてきた利益を、こともあろうにフランス革命が起きたその地で、その原因となった王侯貴族の生活を模したパーティーで享楽的に使ってしまうというセンスが私にはどうにも解せません。

世界各地に構えたとされる邸宅も同じです。

自分や家族が常に住む家ならまだしも、出張時や休暇時に短期間利用する目的で豪邸を所有するのは、コスト面から言ってまったく合理的ではありません。購入資金はもちろん、固定資産税や管理費、修理費など購入後にもさまざまな経費がかかってくるからです。それらのコストを考えれば、出張のたびに最高級ホテルの部屋を使ったほうが安上がりですし、社内から不満が出ることもないでしょう。今回は経費を会社もちにしていた可能性があるということですが、もしも購入資金も含め必要費用をすべて自腹で支払っていたとしたら必要経費だけで最低でも年間数千万円、場合によっては億を超える総額になる可能性が高く、それこそ10億円程度の年収ではとうてい足りないのではないかと推測します。

つまり、これらの報道が真実だとすれば、ゴーン氏は自分自身がしたい生活にかかるコストを収入と均衡させることができなかったために自身が経営する会社に負担させ、さらには社員たちの目にその行為がどう映るのかを判断して自分の行動を律するバランス感覚を欠いていたと思われます。ゴーン氏の逮捕後に開かれた記者会見での西川社長の表情から推察する限り、ゴーン氏のこのような振る舞いを側近として決して好ましく思っていなかったという様子がうかがわれました。

ゴーン氏は自分が受け取る報酬額について常々「世界水準から比べると高くない」と話してきたそうですが、このような傾向が始まったのは1970年代後半以降。役員報酬が高いことで知られる米国でも、それまではCEOと被雇用者の平均給与の差は30倍程度が平均だったそうです。例えば、一般社員の給与平均が年間500万円とすれば、CEO報酬は1億5千万円程度。それが現在では数千倍という企業も珍しくないとのこと。これをスタンダードにすれば確かにゴーン氏の報酬は法外な額とは言えず、日本の株主がうるさいから報酬をこれ以上高く設定できないのであれば、それ以外の経費を使うことにより不足分を補うという発想になったのかもしれません。

ブルボン王朝時代の貴族の仕事は戦争で功績をあげることであり、それに見合う俸給を求めたのかもしれませんが、彼らの金銭や生活感覚が一般庶民とかけ離れてしまったゆえにフランス革命が勃発しました。同じく、現在、グローバル企業で起きている役員報酬高騰の潮流は、やはりいつまでも続けられるものではないという事実を、今回のゴーン氏の逮捕劇が示唆しているように思えてなりません。

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