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無給医と医局 大学という教育と臨床と研究の組織 今の医療費の問題がそこにある

M3と協力しデータを集め、NHKで放送された無給医の実態厚労省が精査するようです。中山先生が医師としてコメントされています。無給医について以前書いた記事です。

この無給医の問題、間違いなく存在する事実です。正直半数近くの大学で存在しています。(月数万の給料を入れるともっとかもしれません)

ただそこには大学医学部という組織の特徴、研修医の動き、人員定数の矛盾(国立時代の名残)、病院医療収入の限界、医師の給料体系(バイトと正規の給料の違い)、教授の力、医局の人事などを考えないといけません。そう稼いだだけいっぱいもらえるという正常な労働形式では成り立たない?大学における医療の現実が存在します。

その中で大学医学部という特殊性について書いてみます。

大学医学部の医師は、患者をみる臨床(病院での仕事)、学生を教育する教育(大学での仕事)、新しい医学を進歩させる研究(医局の研究室での仕事)、この3つを同時に行わなければいけません。3つとも大切なもので、そこには間違いなく大量の人力がいります。

それこそ昔は大学の病院(母校だけでなく)での研修がほぼ必須で、中にある医局で面倒見てもらえなければその地域で医師を続けることはできない雰囲気がありました。そう国家資格を持っていても医師としての職業を続けていくには大学の医局に必ず所属し研鑽する必要があったのです。それゆえなんの募集もしなくてもコンスタントに若い医師が医局に存在しました。絶対的買い手市場だったのです。

しかし今は研修医が働く場所を決めることができるマッチング制度ができて、教育体制がしっかりした各総合病院でも研修が可能となりました。昔と異なり1−2年目の研修医の給料が決められ(無給医はいません)過重労働が制限されています。結果、大学の研修希望は減少しました。(またQOLを優先する研修医も増え、つまり仕事が大変な専門科の医局の医師は減少し、大学の医局でも医師の数に差があります。)ある意味医局の力の低下です。

その反動で大学病院の3年目以降の医師の労働はある意味さらに厳しくなっています。しかし大学には給料を払う医師に定数が存在(公的機関であった時期の名残)し、それ以上の医師は無給にしなければならない現状があります。(すぐに有給にしてくれる医局は、人数が少ない、つまり仕事が忙しく当直などが多いという現状があり、それはそれで問題です。また教育などで人気がある科は人が多くなりその分無給になる割合が増えます)

しかし先ほど述べたように、大学が決めている定数では仕事量が多く大学病院の医療含めた業務は成り立たないのですが、新たに人を雇おうにも人件費を引っ張ってくることはできません。収入である医療費は保険点数で決められている以上、どんなにいい医療をやってもある意味上が決まっているからです。(そこに患者が望む医療との乖離が生まれますし、個室代請求みたいのが生まれています)そう人件費が増えても医療費を上げれない、それゆえいい医療をやればやるほど病院全体が赤字になるという大学病院医療の産業構造がそこにあります。(だから救急などには補助金がついているのです。)

大学に入学する学生からの授業料など教育の大学としての収入はありますが、実験など出ていく経費は多く、総合大学と違い学生数は少ないため利益の効率はそこまでよくはありません。また寄付、補助金がエクストラで入りますが固定したものではありません。

つまり人は足りない。
もともとそんなに高くはない人件費は上限が決まっているから理屈上増やせない
(大学病院の医師の給料は総合病院医師の大体2/3)
でも高度な医療に人はいる
そして医局に入ってくれる若い先生のなかには勉強したい人がいる
そんな医師にボランティアを強制させればなんの問題もない

この流れが今の無給医が存在する構図です。そうただ単に「働いているのに給料を払わないのはおかしい」と外から言うだけでは解決しない問題なのです。

もちろん、医局の地域医療における医師派遣ブローカーとしての機能、つまり無給医に給料を与える仕事、俗にいう医療のバイトの斡旋はちゃんと行われています。それゆえ無給医はなんとか生活はできるため、今後医師としての仕事を行うために若い先生はこの数年を我慢しなければいけないとまわりから洗脳されているのです。そして忙しい中堅の医師たちも、「自分が若い頃もやったんだから今の若い医師たちもやるのが当然」というバカなパワハラも存在しています。まあそれを指導できないトップがバカなんですけど。

正直医局という独特の組織、医療の理想?必要悪?相撲部屋?多分そんな簡単に答えが出るものではないと思っています。

それこそ医療の働きかた改革で色々検討されていますが、この無給医世代で生きてきた上のポジションにいる医師たちは大学病院において裁量労働制をどうやら取り入れようとしているらしいです。なんだか専門医認定含めて医局への縛りの強化含めて根本的に労働問題をいい方向に変えるつもりはないようです。

長くなりました。

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