記事

日産会長金商法違反事件-司法取引は国民目線で考えよう

今週は火曜日から木曜日まで東京で仕事をしておりましたので、大阪の事務所には多くのテレビ・ラジオや新聞等の取材依頼がございましたが、すべてお断りさせていただきました。私はテレビ・ラジオの取材はお断りさせていただいておりますが、時間さえ合いましたら新聞、経済誌の取材には(できるかぎり)対応させていただくつもりでおりますので、またよろしくお願いいたします。<m(__)m>

さて、本日(11月22日)夜、日産の臨時取締役会でゴーン会長の解任決議がなされ、ゴーン氏は「元会長」と称されることになりました(ルノー社については留任が決定とのこと)。日産の幹部社員と検察との間で日本版司法取引の合意があったと報じられてから、さまざまなメディアで日本版司法取引(刑事訴訟法上の協議・合意制度)の解説がなされていますが、制度開始にあたって最高検が「国民の常識に沿う形で運用してまいりたい」と述べていたことを(少なくとも)私は信じたいです。

まず、MHPS社の適用第1号案件に関する11月7日のエントリーでも少し述べましたが、日本版司法取引は、そもそも日本の刑事司法の「取調べの可視化」を進め、人権侵害のおそれが高い「自白偏重主義」から脱することを目的として条文化されたはずです。そして、自白に頼らずとも重大犯罪の摘発が可能となるよう、他人の犯罪に関する情報提供に(自己の犯罪に対する)刑の減免を認めたものです。したがって、国民の常識に適うよう、(情報提供に基づいて積み上げた)客観証拠によって立件が可能となるような運用がなされるのが原則だと思います。

22日の朝日新聞1面トップに「ゴーン氏が虚偽記載をメールで指示していた」と報じられていましたが、これなど客観証拠のひとつと考えます。

ところで11月21日の産経新聞朝刊一面に「不正な投資金支出 ゴーン容疑者、是正を拒否」との見出しで、興味深い記事が掲載されました。証券取引等監視委員会は、数年前に(証券会社の検査において)ゴーン氏による不正な投資金支出に関する疑惑に気づき、日産側に是正を求めたそうです。日産側は、再三にわたりゴーン会長に不正な投資金支出をやめるように説得したものの、ゴーン氏がこれに応じなかったとのこと。

そして、21日の朝日新聞ニュースによれば、今年3月、投資金支出の不正に関する内部通報がなされたと報じられています。そして6月には検察にも内部告発があったようで、その後複数の幹部社員と司法取引の協議が行われるわけですが、その協議の経過は不明です。

この流れからしますと、検察は会社法違反でも(関係者との間で)司法取引ができたのではないか、とも思えるのですが、①会社法違反で司法取引を進めますと、ほかの取締役や監査役の方々の共犯(不作為のほう助)を調べる必要があるのではないか・・・との疑念が湧いてきます。

また、②(後述の山口幹生先生のコメントでも触れられていますが)業績連動報酬や会社資金の私的流用、会社経費の流用についても、検察はどうも「報酬の一部」として取り扱っているようなので、そうなりますと会社の損害とはいえない可能性があります。

これらの理由から、金融商品取引法違反(虚偽記載)を持ち出して司法取引の合意に至ったのではないかと推測いたします。たしかに金商法違反においても、ゴーン氏の過少な報酬額の開示については虚偽記載の認識(故意)が他の役員にも認められるのではないか・・・との疑問もあるかもしれません。しかし、ほとんどの上場会社において、個々の取締役の具体的な報酬額決定は社長に一任されているのが現状です。したがって、(ガバナンス上の問題を指摘することは可能だとしても)金商法違反で立件するのであれば、おそらく指示した者と実行した者だけで済む・・・という理屈が成り立つものと思います。

なお、本日あらためて山口幹生先生(大江橋法律事務所 元東京地検特捜部検事)からコメントをいただきましたが、私もまったく同感です。たとえ50億円の過少記載だとしても、それが投資家の投資判断に影響を及ぼすほどの「重要な虚偽記載に該当するのか」という点は疑問が出てくるはずです。一般の投資家が、代表取締役の報酬額をみて投資判断を決めているといえるかどうか。。。

コメント欄で一老さんが指摘されているとおり、今回の件を金商法違反容疑で立件するとなりますと、またまた副作用がいろんなところで発生するおそれがありそうです。コメントをいただいたJFKさんやunknown1さんのご指摘も参考にしながら、私も国民目線に留意しつつも、実務感覚をもって本件の流れをもう一度見直したいと思います(皆様方の忌憚のないご意見、ご異論、お待ちしております)。

あわせて読みたい

「日産自動車」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    「大規模会場予約 67% 空き」はお役所仕事の想像力欠如 ~ なぜ「高齢者」に拘り続けるのか

    近藤駿介

    06月14日 14:19

  2. 2

    オリジナルを常に超越してくる 愛すべきガーナの手描き映画ポスターの世界

    木下拓海

    06月14日 11:34

  3. 3

    歳を取ると「厄介な人」になりがちな理由

    内藤忍

    06月14日 10:57

  4. 4

    「ディズニーランドのついでに予約」女性向け風俗の利用者が爆増しているワケ

    PRESIDENT Online

    06月14日 15:30

  5. 5

    東大・京大も志願者減で止まらぬ「国公立離れ」 その最大の要因は何か

    NEWSポストセブン

    06月14日 08:38

  6. 6

    LGBT、夫婦別姓…“憲法改正”は令和に必要か? 憲法学者「最高裁や国民がしっかりしないといけない」

    ABEMA TIMES

    06月14日 09:28

  7. 7

    チュートリアル、友近…ギャラ100万円芸人がリストラ危機なワケ

    女性自身

    06月14日 12:27

  8. 8

    私がDHC吉田会長の在日コリアンに関する妄想は相手にしなくていいと思う理由

    宇佐美典也

    06月14日 12:00

  9. 9

    小池百合子「女帝」の最後の切り札 五輪中止に動くタイミングはあるのか? - 石井 妙子

    文春オンライン

    06月14日 08:32

  10. 10

    東芝報告書で思い知った調査の破壊力の大きさ

    企業法務戦士(id:FJneo1994)

    06月14日 09:07

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。