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蔓延する「情報汚染」への対抗策とは?——メディア・アクティビスト、津田大介氏が世に問う、情報社会を生き抜くための兵法書

メディア・アクティビスト津田大介氏の新著『情報戦争を生き抜く――武器としてのメディアリテラシー』(朝日新書)が11月13日に発売された。
本書は、2015年4月より朝日新聞の論壇委員(メディア担当)を務める筆者が、日本だけでなくアメリカ、ヨーロッパ、東南アジアなどの各国のメディアの現状を仔細に紹介しながら、「情報戦争」とも言うべき現代を生き抜くための実践的な戦略を探る内容になっている。

情報戦争とはどのような状況か。ソーシャルメディアの影響力が既存のマスメディアを超える一方、虚偽情報(フェイクニュース)が拡散され、論理や理屈よりも感情が優越されることで差別扇動の言動(ヘイトスピーチ)が蔓延する。メディアは「情報汚染」されてしまった。


責任はどこにあるのか

かつて、フェイスブックやツイッター、グーグルなどのプラットフォーム事業者は、あくまで自分たちは政治的に中立であり、個人が発信する情報の中身には関与しないという態度を取ってきた。

しかし、2016年を境とし、プラットフォーム事業者の中立性が疑われる出来事が相次いだ。2016年のアメリカ大統領選挙では、トランプ候補に有利に働くフェイクニュースが、アルゴリズム(トレンディング・トピックス機能)によってフェイスブックの閲覧の上位に表示される事態が発生した(2018年6月1日、フェイクニュース拡散への対策として同機能の廃止が発表されている)。

日本でもヤフーニュースのコメント欄に、民族差別などに裏打ちされた排斥意識の強いコメントがあふれていることが問題視されている(2017年以降、同社は健全化に向けた取り組みを開始しているが、十分な成果はまだ見られない)。

誰もが簡単に情報を発信できる時代だからこそ、影響力の大きなプラットフォーム事業者は、情報の内容について社会的責任を負うことになる。筆者はプラットフォーマーだけでなく、それを支える広告主にもまた、責任が生じることを指摘している。 2017年には、グーグル傘下の動画配信サイト、ユーチューブに対して、多数の企業が広告出稿を停止した。テロやヘイトを煽る悪質な動画に広告が表示されることや、子どもへの不適切な内容のある動画が放置されていることが問題視されたのだ。

広告主からすると、自動出稿システムにより不適切なサイトに広告が表示され、ブランド価値が損なわれることは避けなければならない。

情報汚染への処方箋

そもそも、フェイクニュースやヘイトスピーチといった「情報汚染」が蔓延するのはなぜか。
筆者は原因として、以下の4つの勢力を挙げる。「自分たちの政治的な正しさを主張するため、積極的にネットで攻撃する人たち」「ネット工作を請け負う専門業者」「扇動的な情報を提供することでアクセスを集め、広告費目当てで荒稼ぎするネットメディア」「歪められた情報を真に受けて拡散(リツイートやシェア)をする一般層」だ。本書では各勢力の実態が細かく紹介されている。

だが、この現実に対して、万能の処方箋は見つかりそうにない。
筆者が言うように、「もはや虚偽情報を〝根治〟することはできない」。そのため、「対症療法をどのように組み合わせて症状を軽くするのか、その方法論や包括的な対策が求められている」のだ。

われわれの誰もが情報を受発信する主体であるからこそ、「情報戦争」を生き抜くためには、個々人の情報を読み解く能力──「メディアリテラシー」が、いままで以上に求められる。本書には聞こえのよい気休めは記されていない。徹底して現場主義で実践的な兵法書なのだ。



ゲンロンカフェ(東京・五反田)では、本書の内容をもとにして、情報社会のいまを探るトークイベントを開催する。

11月29日(木)には、著者の津田氏のほか、気鋭の社会学者・西田亮介氏と情報社会学者・塚越健司氏を招く。「情報と政治」の関係を考察し続けてきた西田氏は、『メディアと自民党』『情報武装する政治』といった著作で、自民党を中心に各政党のメディア戦略の実態を解き明かしている。また塚越氏は著書『ハクティビズムとは何か』において、ハッカー文化が政府や企業にどのような影響を及ぼすのか、歴史的な潮流を踏まえて論じている。それぞれの研究成果を踏まえ、立体的に「情報戦争」の時代を議論していただく。

12月13日(木)には、津田氏と社会学者・毛利嘉孝氏との対談が行われる。日本におけるカルチュラル・スタディーズ紹介の第一人者である毛利氏は『ストリートの思想』『文化=政治』などの著作で、新しい社会運動や政治運動の動向を踏まえながら、実践的な運動の可能性を問い続けている。監修を務めた新刊『ツイッターと催涙ガス』(ゼイナップ・トゥフェックチー)は、SNS時代の政治運動をさまざまな角度で調査し分析し、大きな話題を呼んでいる。また毛利氏は音楽を始めとするポピュラー文化の研究でも知られ、その点でも津田氏と重なる。

人類にインターネットは早すぎたのだろうか? 汚染された情報社会を生き抜く術を、各分野の専門家とともに探っていく。



イベントは直接観覧できるほか、ニコニコ動画の「ゲンロン完全中継チャンネル」で生放送される(いずれも有料)。生放送は「タイムシフト」機能により、イベントの1週間後まで視聴可能。

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津田大介×西田亮介×塚越健司
メディアは破綻したのか? ウェブ新時代の対抗軸!
――『情報戦争を生き抜く』刊行記念イベント

11月29日(木) 18時開場、19時開演
会場:ゲンロンカフェ(JR・都営浅草線・東急池上線五反田駅西口徒歩3分)
イベント詳細:https://genron-cafe.jp/event/20181129
チケット予約:https://peatix.com/event/558869
生放送:http://live.nicovideo.jp/watch/lv316952371

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津田大介×毛利嘉孝
SNS時代とは何だったのか(仮)
――『ツイッターと催涙ガス』&『情報戦争を生き抜く』W刊行記念イベント

12月13日(木) 18時開場、19時開演
会場:ゲンロンカフェ(JR・都営浅草線・東急池上線五反田駅西口徒歩3分)
イベント詳細:https://genron-cafe.jp/event/20181213
チケット予約:https://peatix.com/event/570031
生放送:http://live.nicovideo.jp/watch/lv316952432



登壇者プロフィール

津田大介(つだ・だいすけ)
1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。 大阪経済大学客員教授。早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース非常勤講師。東京工業大学リベラルアーツセンター非常勤講師。一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)代表理事。メディア、ジャーナリズム、IT・ネットサービス、コンテンツビジネス、著作権問題などを専門分野に執筆活動を行う。ソーシャルメディアを利用した新しいジャーナリズムをさまざまな形で実践。ポップカルチャーのニュースサイト「ナタリー」の創業・運営にも携わる。 世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2013」選出。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)、『動員の革命』(中公新書ラクレ)、『情報の呼吸法』(朝日出版社)、『Twitter社会論』(洋泉社新書)、『未来型サバイバル音楽論』(中公新書ラクレ)ほか。2018年11月13日に『情報戦争を生き抜く』(朝日新書)を刊行。2011年9月より週刊有料メールマガジン「メディアの現場」を配信中。

西田亮介(にしだ・りょうすけ)
1983年京都生まれ。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院/環境・社会理工学院准教授。博士(政策・メディア)。専門は公共政策の社会学。著書に『ネット選挙――解禁がもたらす日本社会の変容』(東洋経済新報社)、『ネット選挙とデジタル・デモクラシー』(NHK出版)、『無業社会――働くことができない若者たちの未来』(工藤啓との共著、朝日新書)などがある。

塚越健司(つかごし・けんじ)
拓殖大学非常勤講師。学習院大学非常勤講師。TBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』火曜ニュースクリップコーナー担当。一橋大学大学院 社会学研究科博士後期課程単位取得退学(2014年)。専攻は情報社会学、社会哲学。著書に『ハクティビズムとは何か』(ソフトバンク新書)、共編著『「統治」を創造する』(春秋社)、共著に『日本人が知らないウィキリークス』(洋泉社新書y)、『間メディア社会の<ジャーナリズム>』(遠藤薫編)(東京電機大学出版局、2014年)など。

毛利嘉孝(もうり・よしたか)
社会学者。専門はメディア/文化研究。1963年生。東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科教授。京都大学卒業、広告会社勤務後、ロンドン大学ゴールドスミスカレッジでPhDを取得。特に現代美術や音楽、メディアなど現代文化と都市空間の編成や社会運動をテーマに批評活動を行う。最近では、路上演劇の演出も手がける。ポストメディア・リサーチネットワーク(PMRN)主宰。雑誌『5: Designing Media Ecology』編集委員。主著に『ストリートの思想』(日本放送出版協会)、『文化=政治』(月曜社)、『増補 ポピュラー音楽と資本主義』(せりか書房)、編著に『アフターミュージッキング』(東京藝術大学出版会)。

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