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アマゾンが10年以内に失速する5つの理由

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時価総額1兆ドルを超えたアマゾン。実店舗での展開にも乗り出し、成長は衰えをしらない。だが世界的な小売コンサルタントのダグ・スティーブンスは「この大成功のなかにこそ衰退の種がある。私は10年以内にアマゾンは失速すると考えている」という。彼が指摘する「5つの理由」とは――。

■小売界では「最も巨大な企業」も倒れ得る

「その企業は激しく革新的で、絶えず破壊的で、徹底した顧客第一主義である。同社の象徴でもある創業者は、人類史上で最も豊かな人間の1人だ。その成長軌道はあまりに驚異的で、モノを売りたい企業にとって、こことつきあうかつきあわないかという選択の余地はほとんどない。真正面から戦うのは茨の道だ。この企業は恐れられ、賞賛され、嫌われてさえいる。そしてなにより無敵に見える」

ときけば、誰でもアマゾンの話だと思うだろう。だが、この“最上級の賛辞”は、それほど遠くはない過去に、別の小売業者に向けて送られていたものとまったく同じだ。ウォルマートである。アマゾン創設者のジェフ・ベゾスは、パートナー企業と協業しながらマーケティングや営業活動を展開する「Go to market」の哲学をウォルマートから学んだ。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/jetcityimage)

1962年から2000年代初頭にかけてウォルマートは小売業界に君臨し、大小さまざまな競合をなぎ倒しつつ巨大化していった。2010年までに4393店舗をオープンしたが、うち3000店は1990年以降の開店である。まさに、小売界のローマ帝国だった。

しかし、その伝説的な繁栄にもかかわらず、2015年、ウォルマートは45年前の上場以来初の売上減を経験し、その後はかつての勢いを取り戻そうと、存亡をかけた第4四半期決算ごと戦いを余儀なくされている。いまも、過去60年の膿を出し、新たな環境に適応するための自己改革に、なりふり構わず取り組んでいる最中だ。

ウォルマートがこの小売の新時代を生き残れるかどうかは議論の余地があるが、一つだけ確かなことがある。最も巨大な企業も倒れ得るのだ。

■大惨事をもたらす「成功のワナ」

皮肉なことに、ウォルマートを最強の小売にした要素の多くが、アマゾンのような破壊的な競争が現れたときに致命的な弱みとなった。アマゾンがこうした「成功のワナ」にかかるとき、それはウォルマートの場合を上回る惨事となろう。

なぜなら、変化や競争、そして消費者の志向が比較的ゆるやかに推移した工業中心の時代にビジネスを拡大したウォルマートとは異なり、今日の小売業界は新しいアイデア、コンセプト、テクノロジーが光のスピードで移動するデジタルインフラの上に構築されており、顧客ロイヤルティもまったくつかみどころがないからだ。

わたしは、アマゾンは10年以内に失速すると思っている。なぜか。以下にその根拠をまとめた。

■失速の理由1:組織的刷り込み

コダックはフィルムの販売に成功し、ブロックバスターはビデオのレンタルに成功し、タワーレコードはレコードの販売に成功したが、それぞれの成功は、同時に盲点も生んだ。極端な成功ゆえに明らかな市場、技術、消費者の変化を見落としてしまったのだ。

小売コンサルタントのダグ・スティーブンス

1960年代の社会学者、アーサー・L・スティンチクームの言葉を借りると、これは「組織的刷り込み」と呼ばれる。企業が最大の成功をおさめた時代の組織構造と戦略は、その後何年も、場合によっては何十年にもわたって「凍結」されてしまうのだ。

同様に、アマゾンの現在のビジネスモデルでの成功は、電子商取引における重要な社会的、経済的、技術的変化を見えにくくしている可能性がある。実際に、最近のインタビューでジェフ・ベゾスは次のように述べている。

「顧客は低価格を望んでいるのです。いまも、10年後もそれは変わらない。彼らは迅速な配送を望んでいます。充実した商品数も望んでいます」。

そのとおりかもしれないが、危険なのは、過去にアマゾンを成功させた要因が将来もアマゾンに成功をもたらすと信じることだ。

1990年代にウォルマートは、生活用品から食料品まで、膨大な商品をワンフロアに展開するスーパーセンター(SuC)で大成功し、オンラインコマースへの投資を減らしてSuCの増設に振り向けた。この戦略は失敗に終わり、同社はそれによる損失をまだ回復できていない。成功した組織は市場を見る角度を完全に変えないかぎり、危機や機会が視野に入ってこなくなる。

■失速の理由2:楽しくない

アマゾンでの買い物体験が優雅で楽しいと言うのは、チェーンソーが優雅で楽しい機械だと言っているようなものだ。実際、アマゾンはチェーンソーに似ている。チェーンソーのように1つのことだけを行う目的でつくられているのだ。最大の品数のなかから比類なき利便性をもって最速の配送で消費者にものを届ける。探しているものがわかっていれば、すばらしい仕組みである。

問題は、わたしたち人間が買い物をするのは「モノを手に入れる」だけが目的ではない。少なくとも、常に「モノを手に入れる」のが目的ではない。われわれは新しいモノに出合うために買い物をし、友だちと楽しみ、自分を満足させるために買い物をする。

わたしたちは、ハンティングのようなスリルを味わうために買い物をする。狙ったものを見つけたときには、脳内物質のドーパミンが出て気持ちよくなる。アマゾンはこうした買い物の副次的な楽しみにはほとんど関心がないようだ。アマゾンでの買い物は、孤独で、静かで、心躍らない体験という点で、カタログショッピングがオンラインになったというだけだともいえる。

わたしは毎週のように、より没入型でインタラクティブで面白くてソーシャルなショッピングのアプリをつくることに取り組んでいる若いスタートアップの創業者と話す機会があるが。こうした企業が成功をおさめたとき、アマゾンは路線変更できない状態になっているかもしれない。

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