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日産・ゴーン氏のスキャンダルを海外メディアはどう伝えたか

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BBCは日本企業のスキャンダルを羅列

BBCの今回のスキャンダルについての報道は、そのいくつかがすでに邦訳されている。

日産ゴーン会長逮捕「重大な不正行為」あったと解任要求へ(BBCニュース)

【解説】カルロス・ゴーン、ルノーと日産の容赦ない「コスト・キラー」(BBCニュース)

事件の一部始終やゴーン氏のこれまでの業績、その人柄、失脚までを一通り紹介しているが、先のニューヨーク・タイムズの記事と比較して注目に値するのが、BBCニュースはゴーン氏の巨額報酬についての批判をそのまますっと紹介していることだ。

BBC自体は報酬が過度であったと思うかどうかは明確にしておらず、是非の判断を示していない。しかし、批判をそのまま出すことで、BBCも、つまりBBCの記事を書いている人も、「批判がまっとうのものであった」ことを暗黙で示している。

該当部分を見てみよう(【解説】カルロス・ゴーン、ルノーと日産の容赦ない「コスト・キラー」の記事から引用)。

「ゴーン容疑者の功績を称える声とともに、その報酬に対する批判の声も出てきた」

「ルノーは2016年の株主総会で、ゴーン容疑者に対する725億ユーロ(約9億3400万円)の役員報酬を54%の反対多数で否決した。これには同社の株式15%を保有するフランス政府も反対票を投じた」

「同社の取締役会はこの株主総会の投票を却下したものの、ゴーン容疑者はその後、当時財務相を務めていたエマニュエル・マクロン仏大統領から新たな報酬規制を適用すると脅され、報酬削減を受け入れた経緯がある」

「ルノーは数カ月前に、ゴーン容疑者に対する昨年分の役員報酬740万ユーロを株主総会で僅差で決定したばかりだった」。

最後は、ちょっとしたジョークである。

「ゴーン氏が現在、数々の問題に直面している中でも、報酬を実際よりも少なく有価証券報告書に記載したことで逮捕されたことは、多くの人から皮肉ととらえられるだろう」。

BBCは、過去の企業スキャンダルをまとめた記事も出している(「日本を揺るがせた企業スキャンダル」、20日付)。

この中に紹介されているのは、オリンパスの不正会計事件(2011年発覚)、東芝の不正会計事件(2015年)、タカタの欠陥エアバッグ問題(2017年)、神戸製鋼のデータ・スキャンダル(2017年)、日産の燃費・排ガス検査のデータ改ざん事件(今年7月)。

それぞれを淡々と記しているが、2017年10月17日付記事(邦訳)「日本企業に一体何が起こっているのか」がその理由を分析しているので、ご関心のある方は参照されたい。

日本企業に一体何が起こっているのか(BBCニュース)

FTは企業ガバナンスを厳しく見る

日本経済新聞社が親会社となるフィナンシャル・タイムズは、金融・経済を専門とすることもあって、今回のスキャンダルを刻一刻とかつ詳細に伝えている。

日産・ルノー・三菱アライアンスがどうなるかの予測や、いかにゴーン氏が日産を立て直し、最後には逮捕されるところまで行ったのかを記すプロフィル記事など充実しているが、世界中の経営陣が読んでいることを踏まえ、日本の自動車業界で大きな力をふるってきたゴーン氏の経営スタイル、報酬の巨額さを批判する姿勢を明確にしている。

英社会では一人のあるいは少数の人物に過度に権力が集中することや過度と思われる報酬を得ることに対し、毅然とした態度をとることが求められており、FTの報道はそれを反映したものといえる。

例えば、「会長カルロス・ゴーン氏の逮捕で日産株下落」(20日付)と題された記事は、最後の方にこのような表記がある。

「ゴーン氏の日産からの年間報酬は2016-17年度で11億円と発表されており、最新の会計年度では7億3500万円、この上に三菱自動車からは2億2700万円を得ている」

「2017年、ルノーからは740万ユーロの支払いを受けており、今夏の株主総会で株主からやっとのことで承認を得た」。

事実を記しただけだが、読者はその巨額さに驚くだろう。「株主からやっとのことで」承認を受けたという表現も、事実ではあるにしても「通常であればありえない金額」というニュアンスがにじみ出る。

最後の段落は、今年6月のゴーン氏のインタビューからの引用だ。記者が「もらいすぎだとは思わないか」と聞いたところ、額が大きすぎること自体を認めたゴーン氏はこう答えたそうである。「私が決めるじゃないんだ、取締役会が独自に決めるんだよ」。 巨額報酬を承認した側にも一定の責任があったのではと問いかけているように見える。

FTの姿勢がさらに明確になるのは、19日付の社説に当たる記事(FTの「編集委員会」名で書かれた論考)である。題名は「飛ぶ鳥を落とす勢いの最高経営責任者にとって、絶えず存在するリスクは尊大さだ」。

読む前に結論が分かってしまうような題名だが、要するに、株主や取締役会が素晴らしく才能がある経営陣を称賛したあまり、こうした経営陣は「自分が完全無欠で、取って代われない人材だという間違った結論に達する」。

ゴーン氏は「イカロスのように」太陽に近づきすぎたのかもしれない、とFTは言う。イカロスとはギリシャ神話の登場人物だが、蝋で固めた翼によって飛ぶことができるようになったが、太陽に近づきすぎて蝋が溶け、翼を失って墜落してしまうのはご存知の通りである。

「ゴーン氏の破滅は、(彼のような経営陣は)地上に降りるべきという重要な警告を発している」。

企業ガバナンスの重要性や経営トップが持つべきとFTが考える倫理・道徳観を明確にした終わり方となっている。

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