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日産・ゴーン氏のスキャンダルを海外メディアはどう伝えたか

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Getty Images

日産自動車の会長カルロス・ゴーン氏が19日、東京地検特捜部に金融商品取引法違反容疑で逮捕され、日本ばかりか世界中に衝撃が広がっている。

米英メディアで報道された、「ゴーン・ショック」の様子を若干紹介してみたい。

ロンドン時間の20日昼(日本の同日夕方)時点で、大部分の報道には以下のような点が含まれていた。

-仏ルノーの会長兼最高経営責任者、三菱自動車会長、そしてルノー・日産・三菱アライアンス(連合)代表を務めるゴーン氏が失脚

-突如明らかになった事態に驚愕

-海外諸国をまたにかけて活躍する敏腕経営者の限界、反省する点があるのではないか

―アライアンスの将来はどうなるか

―日本を異質なものとする視点(日本では外国人の経営陣は成功しない?)

米ニューヨーク・タイムズ「”アウトサイダー”と働く危険性についての国民投票として受け取られかねない」

米ニューヨーク・タイムズは19日付で「日産の会長カルロス・ゴーン氏が金融不正行為疑惑で逮捕」とする記事を掲載した。 事件の一部始終をつづる中で、いかにゴーン氏が窮地に陥っていた日産を再生させたかを紹介していく。

コスト・カッター(コスト削減)のみならず、「コスト・キラー」というあだ名がついたゴーン氏は「日本国内の工場を5つ閉鎖し、2万1000人を削減した」。

その功績を高く評価され、メディアもゴーン氏を持ち上げるようになった。毎年スイス・ダボスで開催される「世界経済フォーラム」に顔を出し、「2016年にベルサイユ宮殿で結婚式を挙げたときは、俳優たちが18世紀の衣装で出席した」という。 その経営スタイルは「アメリカ式だった。明確な計画、明確なゴール、これが達成できたかを恒常的に監視する」(自動車産業に詳しい教授のコメント)。

記事はゴーン氏が外国籍の経営陣であることに注目する。「国内の企業に外国の指導者が入るのは珍しい、島国日本」で、「ゴーン氏の失脚は外部の人(アウトサイダー)と働くことの危険性についての国民投票」として受け取られかねないという。

ラドリン・コンサルティング社のマネジング・ディレクター、ペーニル・ラドリン氏がこんなコメントを残す。「外国人は日本で成功できないと人が言うとき、ゴーン氏は常に頼りになる人物だった」。ゴーン氏は外国籍だが大成功したからだ。しかし、今回の事件で、「よい事例がなくなった」(ラドリン氏)。

ゴーン氏の巨額報酬が問題視されるようになったことについて、ニューヨーク・タイムズ紙に限らずほかの媒体も指摘している(後述)が、同紙の場合、巨額報酬には一定の理由がある(大きな功績があるので、それを反映している)という暗黙の了解がある表記になっている点が、筆者にとっては興味深い。

記事の最後の方の段落を見てみよう。

「日本では、ゴーン氏の報酬は尋常ではないものとして位置づけられた。日本の経営陣は通常、米国や欧州の経営陣よりもはるかに低い報酬を得ている。例えば、トヨタ自動車の内山田竹志会長の2017年の報酬は1億8100万円だったが、ゴーン氏は7億3500万円だったといわれている」。

最後の段落で「外国人投資家は日本企業が経営陣に十分な支払いをしていないと批判する傾向がある」と指摘した上で、早稲田大学商学部の宮島英昭教授のコメントが出ている。

後半部分を紹介すると、外国人機関投資家の日本企業についての批判は「報酬がパフォーマンスと関係づけられていないこと、(他国の経営者より)リスクを取らないこと」だという。ゴーン氏の経営スタイルを日本の経営事情の中で位置づけた、読ませる記事になっている(結論に同意するかどうかは別であるが)。

ほかにはAP通信が日産とルノーの協力体制にひびが入る懸念を伝える記事(20日付)、ブルームバーグがでは日産経営陣による一種のクーデータではないかという記事(19日付)、AP同様に日産・ルノー関係への懸念を書いた記事(20日付)などがあった。

日産の工場がある英国では大々的報道

英国では、第1報が伝えられた19日から、テレビ、ラジオ、ニュースサイトが大々的に報じた。ここ数日、どのメディアも英国の欧州連合(EU)からの離脱(=ブレグジット)をトップニュースとしてきたが、当初からBBCのニュースサイトは第2番目に重要な記事として掲載し、テレビやラジオの定時のニュースでは必ず日産ゴーン事件を報じた。

一夜明けた20日、フィナンシャル・タイムズ紙のニュースサイトはこのニュースをトップにしている。

英フィナンシャル・タイムズのウェブサイト(20日朝時点)は日産事件を大きく扱った

大々的な報道の最大の理由は、英国には日産の工場があり、これが英国経済にとって、特にブレグジット後の英国にとって大きな意味を持つからだ。工場の大部分がイングランド地方北部サンダーランドに位置し、約8000人が働く。日産に部品ほかを供給する英国企業で働く人は3万人に上る。ブレグジット後にもし日産がその工場を欧州大陸に移動させたら、失業者が出てしまう。

英国がブレグジットを決めたのは2016年6月の国民投票によるが、同年9月、ゴーン氏は日産の新型モデルのサンダーランド工場での生産を「保留する」と述べて英政界・ビジネス界を慌てさせた。早速、メイ首相はゴーン氏と日産のほかの経営陣との会合を持ち、自動車産業への財政支援を行うことを確約して、保留解除となった経緯があった。

「日産」、「敏腕経営者ゴーン氏」の名前は、英国では非常によく知られている。

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