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役員報酬の隠蔽は、ゴーン氏主導か、会社主導か

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19日夕刻、東京地検特捜部は、日産自動車のカルロス・ゴーン会長とグレッグ・ケリー代表取締役を逮捕した。容疑事実は「ゴーン会長に対する報酬額を実際の額よりも少なく有価証券報告書に記載した金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑」、2015年3月期までの5年間で、実際にはゴーン会長の報酬が計約99億9800万円だったのに、有価証券報告書には合計約49億8700万円だったとの虚偽の記載をして提出したとのことだ。

倒産寸前だった日産をV字回復させるなど、経営者としての手腕を高く評価され、今や、日産のほか、三菱自動車、フランスのルノーという3社の会長を務めるゴーン氏だ。しかも、容疑事実は「役員報酬を過少申告した有価証券報告書の虚偽記載」とされているが、大企業であれば、有価証券報告書は、総務などの担当部門で情報を集約して作成・提出する。その有価証券報告書での役員報酬が過少に記載されていたのであれば、会社の組織の問題だ。何が問題なのか、よくわからない。

西川廣人社長は、同日夜の記者会見で、内部通報に基づき数か月にわたって社内調査を行い、逮捕容疑である報酬額の虚偽記載のほか、私的な目的での投資資金の支出、私的な目的の経費の支出が確認されたので、検察に情報を提供し、全面協力したと述べた。

それにしても、この事件、まだ事実関係がほとんど明らかになっていないからだが、不可解な点が多々ある。

有価証券報告書の虚偽記載として処罰価値はあるのか

まず、役員報酬についての記載の問題が有価証券報告書の虚偽記載罪に問われた事例は聞いたことがなく、そもそも刑事立件すべき事件かどうかという点に対する疑問だ。

有価証券報告書は、事業年度ごとに作成する企業内容の外部への開示資料であり、投資家の判断の重要な資料となる。その「虚偽記載罪」としては、利益や売上、資産・負債の金額を偽る「粉飾決算」が典型だ。しかも、前期の売上約12兆円、最終利益約7500億円という日産の経営規模からすると、1期あたり約10億円という虚偽記載額は僅少であり、一般的な感覚からすると、有価証券報告書の虚偽記載罪に問うべき事件のようには思えない。

上場企業に1億円以上の役員報酬の個別開示が義務付けられたのは2010年3月期からだ。それは、経営者が高額報酬を受けていること自体が、経営者に関する重要事実であり、株主・投資家に開示することが重要と考えられたからだろう。そういう意味では、役員報酬を偽ることは、事業の状況や資産・負債に関する虚偽記載とは性格が異なるとは言えるであろう。

経営者の報酬についての「欧米基準」と「日本基準」

最大の問題は、役員報酬の隠ぺいが行われたとして、それを誰が主導したのか、という点だ。

報道によると、ゴーン氏への役員報酬とされたのは、海外の住宅の無償提供などで、通常の役員報酬とは別個の支払が長年にわたって続いていたようだ。

問題の背景には、会社は株主のものであり、その利益に貢献した経営者には、それに見合う報酬が支払われるのが当然という「欧米基準」と、会社は社員やその家族のものであり、社員が働いて生み出した利益が会社の利益なのだから、社員を代表する経営者の報酬は相応の金額に抑えられるべきという「日本基準」の違いがあると考えられる。

「欧米基準」からすると、90年代末に倒産寸前の経営状態だった日産をV字回復させて株主に多大な貢献をしたゴーン氏に多額の報酬が支払われるのは当然だ。その金額を「日本基準」から大きく乖離させないために、報酬の一部を他の名目にして秘匿する動機があるとすれば、それは日本人の会社経営陣側ということになる。

一方、「日本基準」を前提にすれば、ゴーン氏に支払う役員報酬にも限度があることになる。ゴーン氏が、表向きはその限度を受け入れた上で、別の名目で報酬を受け取り、それを秘匿して開示することを主導していたということもあり得る。

そのいずれであるかによって、事件の性格は全く異なったものとなる。

前者であれば、具体的なやり方を認識していたかどうかはともかく、会社幹部は、ゴーン氏には正規の報酬以外の実質報酬がわたっていたことを認識していたことになり、今回の事件は、それを敢えて検察に持ち込んだ「クーデター」的性格が強くなる。

一方、後者だとすると、ゴーン氏主導の個人犯罪が内部告発と内部調査によって明らかになったという、西川社長の説明どおりだということになる。

本件がそのいずれであるかを判断するためには、ゴーン氏が日産の経営トップに就任して以降、その役員報酬をめぐって、ゴーン氏自身と歴代の日産経営陣の間でどのようなやり取りがあり、どのような対応をとってきたのか、実質的な報酬についてどのように認識してきたのかを解明する必要がある。

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