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ゴーンショックから学ぶもの

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カルロス・ゴーン氏 2015年6月11日
出典) flickr : Ecole polytechnique

安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

【まとめ】

・東京地検、日産ゴーン会長を金融商品取引法違反容疑で逮捕。

日産、過去にも経営に影響力ある実力労組会長追放の歴史あり。

・現経営陣は「クーデター」劇に気を取られている余裕はない。

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=42882でお読みください。】

■トップの高額報酬

衝撃のゴーン会長逮捕の報から一夜明けたが、情報は19日夜の西川廣人CEOの会見が主で、まだ事件の全容は見えてこない。わかっているのは、長年にわたりゴーン容疑者が報酬を過少申告していたことだ。日産自動車だけで年間10億円以上の役員報酬をもらっていながら何故さらなる報酬を求めたのか、といぶかる向きもあろうが、グローバル企業のトップとしては10億円の年収は決して多くはない。

北米のIT企業を中心に年収100億円超えは当たり前だ。ゴーン氏が世界有数の自動車メーカーである、仏ルノー・日産自動車・三菱自動車工業のトップとして得る報酬として十分ではない、と思っていたとしても不思議ではない。

写真)西川廣人日産自動車CEO
出典)日産自動車

しかし、だからといってゴーン氏が高い報酬欲しさに不正経理に自ら手を染めたとはちょっと考えにくい。日本で高額報酬に対する厳しい目が社会に存在することも理解していただろう。10億円レベルの報酬で納得する代わりに、フリンジ・ベネフィット(給与以外の経済的利益)で会社から報いてもらっている、という程度の感覚だったのではないか。フリンジ・ベネフィットには社宅やカンパニー・カーなどの低額もしくは無償の供与などが含まれることが多い。

ゴーン氏は海外にある複数の住宅を無償で利用していた疑いがあると報道されているが、仮にそうだとして、それ自体は犯罪とは一概に言えない。あくまで有価証券報告書の虚偽記載が今回の事件の焦点だ。

しかし、ゴーン氏自身は、自分の受けている様々な利益供与が、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)に問われるという自覚はなかったのではないか。代表取締役グレゴリー・ケリー容疑者が関与していたとされるが、法律違反としての認識がどこまであったかが今後問われることになろう。無論、住宅以外の公私混同的私的流用があったとすればそれは弁解の余地がないだろうが。

そして、気になるのが日産の社員の関与である。外国人トップが日本の法律に明るいとは考えにくい。社内の経理部門は金の流れはすべてチェックしている。ゴーン氏らが受けている利益供与を全く知らなかったというのは通らないだろう。

今回の事件は内部通報が発端だったようだから、社内で知る人は知る事案だったことがうかがえる。ゴーン氏の権力が絶対だった時は、そうした問題は社外に漏れないが、求心力の低下と共に、社内の不満が噴出したということか。西川CEOは「クーデターではない」、と会見で述べていたが、それを額面通り受け止める向きはあるまい。

会見で西川CEOは、ゴーン氏を呼び捨てにし、これまでのゴーン統治を「負の遺産」と切り捨て、「実力者として君臨してきたことによる弊害」であり、「(ゴーン氏に)極端に個人に権限が集中しすぎた。」のが原因とした。さらに「ルノーのトップが日産のトップを兼任するというのはガバナンス上問題だ。」との認識を示し、自動車業界において成功例とされてきた、仏ルノー・日産自動車アライアンスの経営トップの在り方にも疑問を呈した。

さらに、「(日産のこれまでの業績は)個人に帰するものというより従業員すべての努力の結果だ。今回の事件で(それを)無に帰させることはしたくない。」と述べた。

こうした発言を聞く限り、昨夜の会見は「謝罪会見」というよりは、ゴーン氏「追放」が用意周到に当局と練られた結果行われたものと強く内外に印象付けた。

西川CEOは、こうしたゴーン氏への権限の集中の弊害の発端は、「2005年にルノーと日産のCEOを(ゴーン氏が)兼務すること」になった時、と述べたが、それを容認して来たのは日産自動車取締役会ではないのか。無論西川氏だとて例外ではない。2005年氏は既に副社長になっている。全てゴーン氏の責任だとする姿に違和感を覚えたのは筆者だけではなかろう。

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