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国民の支持なき安倍政権―暗雲漂う3選後の船出(その2)

〔以下の論攷は、社会主義協会が発行する『研究資料』No.39、2018年11月号、に掲載されたものです。3回に分けて、アップさせていただきます。〕

2、「総決算」を迫られる安倍長期政権

終わっていない森友・加計学園疑惑

10月7日、加計学園理事長が2度目の記者会見を開きました。しかし、アリバイ的な会見でしたから、疑惑が晴れたとは言い難いものです。森友・加計学園疑惑で共通しているのは、疑惑を指摘する側は具体的な文書や根拠、事実を示しているのに、それを否定する側は具体的な根拠を明らかにせず、ひたすら記憶に頼って言葉で言い逃れるだけだという点にあります。

今回の加計学園理事長の会見での説明も同様です。証拠を示して指摘された疑惑について、具体的な根拠を明示して反駁することができていません。裁判であれば、もうこれだけで「有罪」を言い渡されても仕方がないような状況に追い込まれているのです。

この会見によって「疑惑は晴れた」という人はたったの6%で、「疑惑は晴れていない」という人は82%にも上っています(『朝日新聞』10月13、14日調査)。森友・加計学園疑惑について安倍総理や政府のこれまでの説明に「納得できた」は11%にすぎず、「納得できなかった」と答えた人は80%にもなりました(JNN世論調査10月13、14日実施)。

野党からの追及は止まず、その舞台は臨時国会に移ります。3選を実現したがために安倍氏は今も首相の座にあり、森友・加計学園疑惑追及の矢面に立つ資格を持ち続けているのですから。

森友学園の国有地売却問題でも『朝日新聞』2018年10月11日付朝刊は、大幅値引きの根拠となった地下のごみの深さについて「3.8メートルまで」に存在する証拠とされた写真が、実際には「3メートルまで」を計測していた疑いを報じました。野党側は国土交通省に事実関係を確認するよう求め、「業者が撮影した調査の写真は不鮮明で、深さがわからない」と指摘しています。この問題も引き続き臨時国会で追及されるでしょう。

公文書改ざん問題でも、9月25日にテレビ東京で「<森友公文書改ざん>自殺職員の父と財務省OBが決意の告白」という番組が放送されました。公文書の改ざんをさせられ自ら命を絶った近畿財務局の職員の父親が登場し、財務省の財務局OB職員6人が実名でカメラ取材に応じています。

父親は、「上司に言われることを反対するわけにもいかないし、上司に言われた通りに書き換えたと遺書に書いてありました。7枚か8枚のレポート用紙に書いてありました」と話し、財務局OBは「彼が改ざんの仕事をやらされる中で100時間を超えるような残業。追い詰められて顔が変わってしまった」と証言しています。

このように、森友学園疑惑も終わっていません。公文書改ざん問題では自殺者まで出ています。真相を明らかにし、麻生副総理兼財務相と安倍首相の政治責任を明らかにして断罪しなければ、改ざんを命じられて自ら命を絶った職員は浮かばれないでしょう。

アベノミクスの漂流と福祉への攻撃

自民党の総裁選挙では、安倍首相の3選支持の大きな理由の一つが外交と共に経済政策にあったそうです。安倍首相自身もアベノミクスと称して経済政策を看板にし、それによって支持の拡大を図ってきました。

しかし、それはテレビなどで報じられる外見にすぎません。安倍首相が行ってきたのは経済や景気の立て直しではなく、「やっているふり」「進んでいるポーズ」によって国民を欺くことでした。

その「化けの皮」が剥がれつつあります。例えば、『東京新聞』2018年9月12日付は「アベノミクス成果大げさ?計算方法変更GDP急伸」という記事で、「経済指標が改善したのは、データのとり方を変えた影響が大きく、十分な説明をせず、成果を『誇張』しているとの指摘もある」として、次のように書いています。

「急成長には『からくり』がある。政府は16年12月、GDPの計算方法を変更したのだ。『国際基準に合わせる』との理由で、それまで採用していなかった『研究開発投資』の項目を追加。このほか建設投資の金額を推計するために使っていたデータを入れ替えるなどの見直しを行った。この結果、15年度の名目GDPは32兆円近く増えて532兆2000億円に跳ね上がり、一気に600兆円に近づいた。」

9月3日に財務省が発表した4~6月期の「法人企業統計」によれば、企業の経常利益は前年比17.9%増だったのに対し、人件費は前年比3.8%増にとどまりました。企業利益の増加より人件費の増加の方が14.1ポイントも低いのです。

企業の内部留保が446兆円になるほど過去最高の利益を積み上げているのに、労働分配率は低下して人件費は低いままに抑えられてきました。個人消費は低迷が続き、マイナス金利などで金利収入はほぼ消滅し、世帯主が50代の世帯で無貯蓄が3割あるといいます。

貯蓄もなく年金はじり貧で社会保険料や医療費の負担が高まる一方ですから、消費拡大に期待する方が無理というものでしょう。大企業や富裕層が富めばその富が低所得層に「滴り落ち」て国民全体に利益が及ぶとする「トリクルダウン理論」も、市場にマネーを供給して緩やかなインフレにすれば企業や家計のマインドが改善して設備投資や消費が活発になるという「リフレ論」も完全に破たんしています。

10月から政府は生活保護基準の引き下げに踏み切りました。子どものいる世帯や母子世帯の生活保護費が削られるだけでなく、保護を受けていない低所得世帯も、これまでの就学援助や非課税対象がカットされるケースが出てきます。貧困層への税の分配をやめ、子どもの貧困をさらに増やすことになります。

さらに、安倍首相は10月15日に臨時閣議を開き、来年10月1日からの消費税の10%への引き上げを決定しました。アベノミクスの下で国民の貧困化と格差の拡大が進み、日本経済は国民の低所得化によって内需が落ち込んでいます。この状態での消費税10%への引き上げは国民生活を破壊し、日本経済にとどめを刺すことになるでしょう。

「安倍外交」がもたらした日本の孤立

外交は経済と並んで安倍首相の強みだと言われてきました。しかし、アベノミクスとともに「安倍外交」も破たんし漂流を始めたようです。その外交で、これほど日本はのけ者にされているのかと思わせるような事態がまたもや生まれました。

「またもや」というのは、5月24日に北朝鮮がプンゲリ(豊渓里)の核実験場を爆破して公開したとき、6カ国協議に参加している国の中で日本のメディアだけが除外され、代わりにイギリスの記者が招待されていたからです。

今回も、6カ国協議に参加している国で日本だけが除外されました。モスクワからのロイター通信の報道によれば、「ロシア外務省は10月10日、朝鮮半島の緊張緩和のため、米国と韓国を交えた5カ国協議が必要だとの認識でロシア、中国、北朝鮮が一致したことを明らかにした」そうですから。

同盟国のアメリカとの関係でも、日米貿易戦争の始まりによって暗雲が漂い始めたことは前述した通りです。ムニューシン米財務長官は10月13日、日本との新たな通商交渉で、為替介入をはじめとする意図的な通貨安誘導を阻止する「為替条項」の導入を要求すると表明しました。物品だけの交渉ではない新たな「火種」の登場であり、このような「攻勢」は今後も強まるにちがいありません。

ロシアとの関係も予断を許さないものになっています。これまで安倍首相はプーチン大統領と22回も首脳会談を行って個人的な関係を築いてきましたが、北方領土問題を解決する点では何の役にも立たず、かえって経済開発のお手伝いをさせられ実効支配を強めてしまっています。プーチン大統領から前提条件なしでの平和条約締結を持ち掛けられても反論すらできませんでした。

最近目立つのは軍事力の強化です。外務省によれば、ロシア政府から北方領土の択捉島の近海でロシア軍が射撃訓練を行うと日本側に通知があり、これに抗議したところ、ロシア外務省は「自国の領土であらゆる活動を行う権利がある」と主張し、「儀式のような抗議ではなくすでにある政府間対話の枠組みを通して解決すべきだ」と反発したといいます。慌てた外務省は年内に2回も日露首脳会談を開いて関係を改善しようと躍起になっています。

こうして、窮地に陥った安倍首相が助けを求めようとしているのが中国です。10月25日から北京を訪問して習近平国家主席との首脳会談が行われました。友好関係が回復され日中関係が改善されるのは結構な話です。しかし、これまでの中国敵視政策や「中国包囲網の形成」政策との整合性をどのようにして取るつもりなのでしょうか。

最近も、南シナ海での海上自衛隊の潜水艦訓練を公開し、米空軍の戦略爆撃機と航空自衛隊との共同訓練を行い、日本版海兵隊と言われる水陸機動団と米海兵隊との国内初の合同演習を種子島で実施しました。いずれも「仮想敵国」として想定されているのは中国です。

「米中冷戦」の開始と言われるほど中国敵視を強めているトランプ政権や対中接近に警戒を高めている支持基盤の極右勢力に「言い訳」をしながら、握手の手を差し伸べようとしているようです。この点に「安倍外交」のジレンマとギクシャクぶりが象徴されています。

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