記事

日産会長逮捕(金商法違反事件)に関する私的な感想

日産の社長さんの記者会見もきちんとは聴いておりませんが、夕方以降、日経、朝日ほか、いろいろなメディアの取材を受けましたので、当ブログでも会長逮捕劇を受けての第一印象のみ、書かせていただきます。

1 内部通報を契機とした社内調査で経営陣が動いたという点。

ヤマト運輸さん、KYBさんをはじめ、今年も多くの不祥事が内部通報をきっかけに不正が発覚しました。経営陣の不正を糾弾し、自浄能力を発揮するためには、やはり内部通報制度を機能させることが不可欠とあらためて認識いたしました。

監査役からの問題提起があったようで、監査役制度も機能したのではないでしょうか。数か月前に内部通報があった、ということのようですが、無資格者検査事件や燃費データ偽装事件を起こしても企業風土が変わらなかったことへの日産社員の憤りが「通報」という形(ひょっとするとマスコミへの告発と同時だったのかもしれませんが)で表面化したのかもしれません。

2 ガバナンスという視点から。

日産自動車のガバナンス報告書や有価証券報告書(2017年度)を読みますと、日産さんの取締役会には指名・報酬委員会は存在しないのですね。会長(取締役会議長)が、他の代表取締役と協議して役員報酬の金額を決定する仕組みになっています。

ということは、インセンティブ報酬(日産さんの場合はインセンティブ受領権)の算定評価はブラックボックス状態で行われていた可能性があります。さらに、取締役会は、各取締役の報酬決定を会長に一任していると思いますので、ほかの取締役さんは(開示されるまで)、会長の年間報酬はいくらだったのかわからなかったと推測します(このたびの逮捕劇は「インセンティブ受領権」がポイントではないかと。。。はずしていたらゴメンナサイ!)。

ちなみに、東証1部上場企業の4割で、すでに任意の報酬委員会を設置していますが、日産さんに委員会が設置されていればもっと早く不正を発見もしくは防止できたかもしれません。

ここは最近の企業統治改革の流れも影響していると考えています。ガバナンス改革においては役員報酬は高額化しており、そこには中長期の業績連動型の株式報酬制度がトレンドになってきました。ストックオプションが付与された場合には、そのオプションの時価が報酬として開示されますので、よほどインセンティブ報酬の算定評価に詳しい方でないと、役員の報酬額の算定はむずかしいはず。

そこへきてガバナンス改革の流れの中で、どこの上場企業も取締役の人数を減らしています。つまり株主総会が監督している「報酬額の上限枠」にかなり余裕が出てきます。したがって、(取締役会の監督機能がききにくいために)同じような代表者の不正リスクはどこの会社でも存在すると思います。

逆に、会長さんの報酬が超高額のため、上限枠を使い切ってしまって、はみ出した分を隠蔽していた可能性もありそうですが、そんな単純なことでもなさそうな。。。

3 事件の広がりについて。

逮捕容疑は金融商品取引法違反ということですが、他の重大な不正行為も認められたとの日産リリースからみると、会社法違反(特別背任罪等)被疑事件などにも発展するのではないでしょうか。さらに、開示された報酬金額が虚偽であったとしても、これだけ株主から高額報酬への批判が出ている世の中ですから、何らかの説明を果たし得るストーリーはあったのではないかと想像します。

つまり、誰か株式報酬に詳しい社内もしくは社外の支援者が存在していた可能性もゼロとは言えないように思います。なお、事件の広がり・・・という点では、今回の件は(金商法違反容疑・・・ということなので)法人としての日産が検察との間で協議・合意制度(日本版司法取引)が活用されていることはないでしょうか?

3日ほど前に、当ブログに(司法取引に詳しい)山口幹生先生からのコメントをいただきましたが、まさに山口先生の指摘された論点を「おさらい」したくなるような事例であります。

4 会社による損害賠償訴訟について。

日産には40%以上の株を保有する親会社が存在するわけですが、日産の取締役会は会長に対して損害賠償に関する訴訟提起をするのでしょうか。親会社がどのような態度でも、上場会社であるかぎりは提訴に踏み切るべきではないかと(個人的には)思います。

日産の被害額は全体からみれば微々たるもの、という意見もあるかもしれません。しかし、経営トップの不正は量的な面ではなく質的な面において悪質であり、業績に及ぼす影響も重大と考えておくべきです。

あわせて読みたい

「カルロス・ゴーン」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    「Mr.慶應」性犯罪で6度目の逮捕

    渡邉裕二

  2. 2

    再び不倫 宮崎謙介元議員を直撃

    文春オンライン

  3. 3

    テレビ劣化させる正義クレーマー

    放送作家の徹夜は2日まで

  4. 4

    案里氏 法廷で昼ドラばりの証言

    文春オンライン

  5. 5

    公務員賞与0.05か月減に国民怒れ

    わたなべ美樹

  6. 6

    4連敗の巨人 原監督に欠けた潔さ

    NEWSポストセブン

  7. 7

    急速に進みだした日本企業のM&A

    ヒロ

  8. 8

    ユニクロ+J高額転売でも売れる訳

    南充浩

  9. 9

    昭和の悪習 忘年会が絶滅する日

    かさこ

  10. 10

    日本沈没ドラマ化に思わぬ批判

    女性自身

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。