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早大セクハラ防止室"握り潰し"の実態告白

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教員のセクハラ問題が起きた早稲田大学で、新たな疑惑が浮上した。ハラスメント防止室に勤務していた女性が、プレジデントオンラインの取材に対し「早大は明らかに問題と思えるハラスメント事案まで、『不受理』として握り潰しています。私が記憶しているのは教員同士のトラブルでした」と告白した。早大はセクハラの再発を防げるのだろうか――。

早稲田大学のハラスメント防止室がある「28号館」の外観。開室時間は月~金の9時30分から17時00分まで。サイトには「来室前に電話またはメールで予約をしてください」とあった。(撮影=編集部)

■渡部直己元教授は女性へのハラスメント行為で解任

早稲田大学文学学術院の渡部直己元教授が教え子だった元大学院生の女性にハラスメント行為をした問題で、早大は7月に渡部教授を解任したほか、9月には渡部教授とは別の教員2人を訓戒処分にした。

教員の一人は女性から相談を受けた際などに、セクハラの口止めともとれる発言をした男性教授で、もう一人は女性がハラスメントを受けたあと元教授にお礼を言うよう女性に促すなど不適切な発言をした男性准教授だ。

男性准教授に関して、早大は「事前に所定の届出なくしばしば授業を休講にし、或いは遅刻するなど、所定の授業回数および学修時間を確保できておらずシラバスどおりの授業運営を行っていなかった」とも発表している。

この問題を巡っては、教員だけでなく、元大学院生の女性が駆け込んだ「ハラスメント防止室」の対応にも問題があった。防止室は女性が相談に来た際、「退学者は相談を受けられない可能性がある」などとメールで説明していた。そのことについて、早稲田が設置した調査委員会は「きわめて不適切なものである」としている。

さらに防止室は、被害女性が面談でハラスメントの内容を詳細に話しているのにも関わらず、改めて「苦情申立書」の提出を求め、被害者に書かせた。大学側は「申立書がないと正式に調査を始められない」としてきたが、調査委は「本人の意思がいずれかの段階で確認できるのであれば、開始時点における申立人による申立書提出による拘泥する必要はなかったといえる」「不適切であったと判断せざるを得ない」と報告書で指摘している。

■「自分の子供なら、防止室には絶対に行かせたくない」

こうした問題から、早大は「ハラスメント防止室の体制の見直しを行う」としており、来年1月に外部窓口を設置する予定だ。一方で、「事案を精査した結果、一部不適切な対応があったものの、懲戒事由に該当する事実はなかった」(早大広報課)とし、防止室の関係者は処分していない。

防止室の態勢に問題はないのか。プレジデントオンラインの取材に対し、早大の女性教員はその実態を「学生ファーストではなく、大学ファースト」と語っていた。背景にはなにがあるのか。プレジデントオンラインは早大ハラスメント防止室に勤務経験のある女性に話を聞くことができた。女性は「仮に自分の子供が早稲田の学生で、ハラスメントを受けたとしても、防止室だけには絶対に行かせたくない」と憤る。

女性は2010年代に防止室で働いていた。仕事を始めて間もないころ、あることを聞かされて「驚いた」と振り返る。

■「あえて資格を持った人を入れないようにしている」

「防止室には法律に詳しい人はいても、自分を含め、臨床心理士の資格を持った人や、カウンセリングの専門家は誰もいませんでした。それでもいいものかと疑問に思っていたのですが、当時のハラスメント防止委員会の副委員長には『あえて資格を持った人を入れないようにしている』と説明されました。その副委員長は『防止室は大学のリスクマネジメントのためにある』とも言っており、曰く、資格を持っていると、被害者側に立ち過ぎてしまって運営がスムーズにいかなくなる、とのことでした」

女性の主張については、早大広報課は次のようにメールで回答した。

「これまでに有資格者を採用したことはあります。有資格者を意図的に採用してこなかったということはありません。(安全上の配慮から)具体的な時期については回答を差し控えさせていただきます」
「ハラスメント防止室では、相談者に寄り添うことを基本としハラスメントを適正に処理することを任務としており、そのことがハラスメント防止室に課された大学のリスクマネジメントと認識しています」

ハラスメント防止委員会のウェブサイトに掲示されている「関係資料リスト」。書籍一覧、ビデオ一覧ともに2009年で更新が止まっている(2018年11月16日閲覧)。

■委員長である教授の判断で、受理するかを決める仕組み

女性は早大ハラスメント防止室の仕組みを次のように説明する。

「ハラスメント防止室はだいたい5~6人で運営していました。ハラスメントに関する相談が寄せられた場合、まず相談員が被害を訴えている学生や教員から話を聞きます。もし生徒や教員がハラスメントに関する正式な調査を求める場合は『苦情申立書』という書類を本人に書いてもらい、直接手渡しで防止室に提出してもらいます。そこから、ハラスメント防止室は教員らで構成される“ハラスメント防止委員会”に報告し、実際に受理するかどうかを判断します」

ただ、すべての申立が防止委員会に報告されていたわけではなかったと女性はいう。

委員会の規定では、「委員長は、苦情処理の申立てが第1条に規定する目的に照らし相当でないと認めるときは、当該苦情処理の申立てを不受理とすることができる」となっている。また、早大広報課によると、「委員会委員長を『ハラスメント防止室長』とも称している」という。つまり、防止室長の判断で、受理するかどうかをある程度は決められる仕組みになっている。

■教員同士によるハラスメントは「手に負えない」と不受理

女性は「委員長と副委員長2人に加え、数名の相談員で毎週ミーティングを開き、その場で委員長と副委員長で申立を受理するかどうかを決めていました」と証言する。これに対し、早大広報課は「そうした事実はありません」と反論している。だが、女性は「議事録が残っているはずなので、それを見ればわかるはずです」と述べる。

どんなケースが不受理となるのか。女性はこう話す。

「申立の中には言いがかりのようなものもあり、そういったケースは委員長権限で不受理を決定していました。その一方、あくまでも私の感覚ですが、明らかに問題だと思われるケースも不受理にしていました。私が記憶しているのは教員同士によるハラスメントです。『教員同士のトラブルにまで手をつけてしまうと、手に負えない』という判断でした」

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