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パワハラ対策の法制化-カスハラ対策が隠ぺい不祥事を発覚させる

11月19日の労政審議会(雇用環境・均等文科会)に、いよいよパワハラ対策の指針案が示されるようですね。最近のマスコミ報道によりますと、ガイドライン案を強く推奨していた経済界の意見を押し切って、法制化に踏み切るとのこと。海外から「コーポレートガバナンス・コード」のような進んだ制度を取り入れて、それなりの効果が出ているのですから、すでに海外では常識とされている「パワハラ防止の法制化」を取り入れることも時代の流れと言えそうです。となりますと、2019年の内部統制関連のニュースとしては、一番注目されるテーマとなりそうですね。

ハラスメント全般に関連する法制化(具体的には労働安全衛生法の改正?)については別途検討するとして、今回の審議において私が関心を寄せておりますのがカスハラ(カスタマーハラスメント)への企業対策です。今回の審議では、法制化にまでは至ることはないと思いますが、ソフトローとしてガイドラインで指針を示すということにはなりそうです。取引先からのいじめ、嫌がらせ、顧客からの不合理なクレームといったことから企業がどのように社員を守るのか・・・、職場環境配慮義務の一環ではありますが、社内のパワハラ、セクハラとはかなり性質の違うものであり、線引きに苦労することが予想されます。

ただ、最近の企業不祥事は一社で完結しない点に共通点があります。つまりグループ全体やサプライチェーンを含めた対策をとらなければ実効的な再発防止策は機能しません。会計不正事件における「取引先との共謀」、品質偽装事件における「取引先からのプレッシャー」や「出荷先における偽装の認識」、電通事件における広告媒体の変化にともなう「取引先との力関係の変化」、スルガ銀行事件の「取引先の書類偽装への加担」、東芝事件における「米国電力会社との紛争解決」などが典型例です。最近の百十四銀行のトップ辞任問題も、やはり顧客によるセクハラ行為が契機となりました。

カスタマーハラスメントへの企業対策を講じることには原則として賛成ですが、上記労政審議会のメンバーのご発言にあるように、そもそも取引先、顧客がハラスメントに至る原因は、自社の側にもある(ことが多い)、と考えられます。したがって、カスタマーハラスメントを調査するにあたっては、これまで表に出てこなかった自社の不正、不祥事が(まれにではありますが)浮上してくる可能性もあります。以前、当ブログで「パワハラにおける不祥事隠ぺいリスク」を取り上げました。これは自社のパワハラの背後には大きな不祥事が存在する可能性がある、ということを述べたものですが、カスハラ対策を本格的に進めるのであれば、(良いか悪いかは別として)企業にとっては重大な問題を抱えることになるように思います。

財務省の官僚からセクハラを受けたとして、テレビ局社員が告発した事件がありましたが、当時、この社員から相談を受けたテレビ局内の対応に批判が集まりました。力の強い取引先に対して、カスハラ対策がどのような影響を及ぼすのか。社員のために毅然とした態度をとらなければ「セカンドセクハラ(セカンドパワハラ)」として社員から訴えられ、ブラック企業と呼ばれることになるかもしれまえんし、かといって毅然とした態度をとれば取引先から取引を打ち切られたり、(やぶへびで)自社の不正が明らかになったりするリスクが顕在化することにもなりかねません。コンプライアンス経営に関与する法律家としては、「カスハラ」への各社対応は、ぜひとも注目しておくべきテーマと考えております。

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