カリフォルニア史上最悪という二つの山火事。同じ8日に出火して以来、まだ鎮火していません。日本のメディアは断片的にしか報じないので、私はCNNやLAタイムズの報道をチェックし続けています。
それというのも、今日現在、70人以上という死者数もさることながら、膨大な数の行方不明者がいると報じられているからです。どうしてそんなにたくさんの行方不明者が出ているのか?
しかも、今回の山火事は、北カリフォルニアのビュート郡(Butte County)のCamp Fireと南カルフォルニアのベンチュラ郡(Ventura County)主体のWoolsey Fireと別れていますが、焼失面積がそんなに違わないのに、Campの方では死者が76人に加え、行方不明者1300人と報じられているのに、Woolseyでは死者3人のみという差がどうして生じたのか疑問に思っていました。
それが、たまたま目にしたThe Outlineの記事で解決したような気がしてFacebookに投稿しました。その記事では、Woolsey火災地域のベンチュラ郡には白人特権階級の金持ちがたくさん住んでいて、そこのセレブたちが民間消防隊や民兵を雇って豪勢な邸宅を延焼や火事場泥棒から守っていたり、みんな住宅の火災保険に入っているので避難が早いのに対し、Camp火災の地域は有色人種が多く貧乏人も多いので、そんな手立ても取れず、火事場泥棒の心配もあって避難が遅れたせいだと示唆するような内容でした。
これはまさに米国の経済格差、人種差別を象徴するような、一種のスキャンダルではなかろうかと思って投稿したのです。ですが、昨日、トランプ大統領がCamp火災現場を視察したというLAタイムズの記事を読み、一段と行方不明者が増えているとのことで、The Outlineの記事を自分なりに検証してみる気になりました。
使ったのはあらゆる国勢調査を中心に地方自治体に関するあらゆる公的データを集めたData USAのサイトです。
すると記事に引用された事実とは違うデータが現れました。金持ちだらけとされたベンチュラ郡。記事では世帯収入は平均10万ドルを超えるとありましたが、Data USAによれば8万ドルに過ぎません。また人口比率も白人(45.7%)とヒスパニック(42.5%)と拮抗しています。
また、ベンチュラ郡に隣接するロサンゼルス郡ではヒスパニックが48.5%を占め、26.3%の白人を上回っています。
一方、死者、行方不明者が圧倒的に多いビュート郡。確かに貧困率は21.3%と、9.5%のベンチュラ郡、16.3%のロサンゼルス郡より高い。世帯収入も4.4万ドルと低い。しかし、人口構成を見ると白人が73%を占めているのです。
つまり、The Outlineの「人種差別社会アメリカ」を糾弾するかのような記事は結果的にFakeだったとしか言えない。書いたのはMuqing M. Zhangtという北京生まれの女性フリーランサー。ついつい、視点の面白さに乗せられてFacebookに紹介した私も迂闊でした。
デジタルメディアの記事は迂闊に信用してはいけないという教訓になりましたが、最初の疑問=なぜ、CampFireだけが異常に死者、行方不明者が多いのかは解明されていません。
それに答える唯一の記事は、カリフォルニア州サクラメントのテレビ局abc10の「How teh Camp Fire got this bad」という、この表付き記事。
「なんでこんなひどいことになったのか、誰もが知りたがってる」としながら、「その答えを得るには長い時間がかかるだろうと」し、今わかってる基礎的な事実を提示する、としてこの表を掲げているのです。
71人の死者がどこで死んでいたかを分類したもので、3分の2が自宅で死んでいます。つまりは逃げ遅れた。そのくらい、火の回りが早かったせいではないかを当時の状況を振り返って示唆しています。また、この地域の高齢者比率が州全体の2倍に達し、車を運転出来ない、またはしない人もいたという証言があるとも。とにかく、当時は風が強く、火を煽って黒煙で太陽が見えなくなるほどだったそうです。
少なくとも、The Outlineが示唆するような、貧乏だから「火災保険に入っていなかった」し「避難先も見つけられないし」「避難して会社も休めないから」避難が遅れた、という見方は邪推に過ぎないでしょう。でも、面白いから、と紹介したのは私です。こうやって巧妙なFake newsは拡散することを実感。反省します。