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特集:2018年中間選挙の出口調査を読む

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11月6日の米中間選挙から今日で10日目を迎えます。これが日本の選挙であれば、翌日にはすべての結果が出揃い、選挙の分析も完了して政局は次のチャプターに移っていることでしょう。ところが米国の選挙ですから、日々新しいデータや解釈が飛び交うような状態です。本稿執筆時点においては、上院は民主47対共和52(残り1)=民主35議席増、下院は民主230対共和199(残り6)=共和2議席増、知事は民主23対共和26(残り1)=民主7増。双方が勝利宣言するような状態です。

ということで、データ面の完璧さは期しがたいのですが、今回の中間選挙結果を振り返ってみたいと思います。今後の政治情勢を読むヒントが隠されているはずです。

●2018中間選挙へのさまざまな雑感

まずは今回の中間選挙を見ていて、筆者が感じた率直な印象をいくつかご紹介したい。

1. 選挙予想が当たった!(世論調査の復権)
米国の選挙予想と言えば、プロの機関である”The Cook Political Report”、バージニア大学の政治学教授による “Sabato’s Crystal Ball”、そして統計学者による“Five Thirty Eight”が「御三家」といえる。この3つが投票日直前に、「下院は民主党多数、上院は共和党多数」という予測で一致した。

その瞬間に2年前の大統領選を思い出して嫌な予感が走ったものである。主たる機関はすべて「ヒラリーの勝ち」を予測していたではなかったか。しかるに今回、蓋を開けてみたら結果はまさに予想通りであった。

以前は、本音を言わない「隠れトランプ派」が大勢居て、それで世論調査が当たらなくなっていた。しかるにトランプ政権が2年近くも続くと、トランプ支持者も堂々と支持を公言できるようになる。いわば現実に「慣れた」ということか。

ともあれ、世論調査は再び有用性を取り戻した。従って今後の予想(例えば2020年の大統領選挙)は、これまでよりも楽になるはずである。

2. トランプ大統領が見せた「神の手」
選挙戦の最終盤、トランプ大統領は2年前と同じように「最後のお願いツァー」を敢行した。11月3日にはモンタナ州とフロリダ州、4日にはジョージア州とテネシー州、そして11月5日はオハイオ州とインディアナ州とミズーリ州を訪れた。この7州で応援した上院議員は4勝2敗、知事は4勝0敗である。それがことごとく僅差の勝利である。加えて知事選では、2020年選挙を考える上で落とせないフロリダ州とオハイオ州をゲットしている。もうほとんどマジックのような効果である。

こんな結果を得たら、トランプ氏が自信過剰になるのは当然のこととして、他の共和党議員も「この人には逆らえない」と感じることだろう。11月14日の日経新聞「経済教室」で、渡辺靖慶応大学教授が「もはや共和党はリンカーンの党でもレーガンの党でもなく、トランプの党となった」と評しているのはまことに納得である。共和党は勝利を喧伝しているが、真の勝利者はトランプ大統領と見るべきであろう。

3. “Blue Wave”は”Tsunami”にはならず
民主党は下院で35議席以上の増加が確定している。これは大きな成果ではあるが、事前に期待されたような”Tsunami”とまではならなかった。その理由は簡単で、今週の”The Economist”誌のカバーストーリが書いている通り、民主党は人口を代表する下院を抑え、共和党は地域を代表する上院を得たのである(Democrats represent a majority of America’s voters, but Republicans dominate geographically.)。日本風に言えば、「一票の格差の前に敗れた」ということになる。

もっとも下院における民主党の議席増を過小評価すべきではない。来年になれば、下院を足場にトランプ政権へのさまざまな反撃手法が可能になるからだ。知事選においても、民主党は五大湖沿岸のミシガン州、ウィスコンシン州、ミネソタ州などで勝利を得ている。これら3州は本来、民主党の「ファイアーウォール」であった。これらを落とさなければ選挙人は36人が逆転し、2016年はヒラリーが勝ったはずである。

五大湖沿岸州が再び青く染まりつつあることは、ラストベルトの景気回復が思わしくないことも手伝っているのであろう。今回の選挙結果を機械的に当てはめれば、共和党が2020年に過半数(270)を得ることはやや困難になった感がある。肝心なのは、民主党から誰がトランプ大統領に挑戦するか、であろう。

4. 「テイラー・スウィフト効果」はどこへ
今回の選挙における民主党の課題は、若年層とマイノリティを投票に呼び込むことであった。今回の中間選挙では投票率は47.5%、投票総数は1億1150万人(推計)まで上昇し、2014年選挙の36.7%、8400万人を大きく上回った。それでは若者層の寄与度はどれくらいかというと、CNNの世論調査を見る限り18-29歳の層で投票したのは全体の13%と、2016年の大統領選挙における19%からかえって減少している1

この謎解きは簡単で、「中高年層が今まで以上に投票したから」であろう。論より証拠、テイラーさんが住むテネシー州では、今回は上院選も知事選も共和党候補者が勝っている。若年層の投票者が増えたにもかかわらず、中高年層も同様に増えてしまったので結果を変えるには至らなかった。つまりテイラー発言は、保守派の反発を招いたということだろう。ちなみに出口調査によれば、18-29歳層は2対1で民主党への投票が多く、65歳以上層ではほぼ半々の結果であった。

5. (2018年は)経済だけじゃないんだ!
米国選挙には、”It’s the economy, stupid!”(阿呆、経済だけでいいんだ!)という鉄則がある。しかるにこの法則、2018年中間選挙では当てはまらなかったようだ。これまたCNNの世論調査を見ると、関心の高いテーマは民主党支持者では「医療保険」「銃規制」などであり、共和党支持者では「移民」「景気」であった。

それと言うのも、今の米国は景気が良い。「景気は?」(Condition of national economy)という問いに対し、ざっくり7割が「良い」、3割が「悪い」と答えている。近年では見たことがないような高さである。さらに「関税の影響」(Effect of Trade Policy)を尋ねると、民主党支持者は”Hurt”と答え、共和党支持者は”Helped”と答え、いちばん多い答えは”No Impact”である。あんまり高関税が身に沁みている様子ではない。この調子で行くと、通商政策が問題化するまでにはさらに時間を要しそうである。

6. 民主党のスター「ベト」は2020年に間に合うか?
2018年中間選挙が生んだスターは、テキサス州上院選で現職テッド・クルーズ議員を3%差まで追い詰めたベト・オルーク下院議員であろう。「オバマ2世」と呼ばれる演説の上手さで、勝っていれば2020年の大統領候補最右翼に躍り出たはずである。

ちなみに「テキサス州上院選で敗れた下院議員が、後に大統領になった」前例がある。第42代の父ブッシュ大統領である。選挙に負けたブッシュ氏は、共和党全国委員長、国連大使、CIA長官などの要職を歴任し、レーガン政権において副大統領ポストを射止めた。民主党はこの「金の卵」に、どんなキャリアパスを用意できるのだろう。



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