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安倍首相のご飯論法をパクる片山氏の口上

「門前の小僧、習わぬ経を読む」とはこのことか。安倍内閣の閣僚たちが行う国会答弁が、安倍晋三首相に似てきている。「1強」といわれる力を背景に野党を見下したような答弁を続ける安倍氏が得意とするのは「ご飯論法」。相手の質問の趣旨をはぐらかして、ずれた答弁をする手法だが、野党から集中砲火を浴びる片山さつき地方創生相らも、ご飯論法を使い始めた――。

2018年11月14日、衆院内閣委員会に臨む片山さつき地方創生担当相(手前)と桜田義孝五輪担当相(写真=時事通信フォト)

■流行語大賞の候補にもなった「ご飯論法」とは

まず「ご飯論法」とは何なのか、復習しておきたい。

AさんがBさんに「今日、朝ご飯食べた?」と聞いたとする。

Bさんは朝、パンを食べた。しかし、ある事情でAさんに朝、食事を取ったことを伝えたくない。

その時、Bさんは「今朝は、ご飯は食べていません」と答える。これが「ご飯論法」だ。

Aさんが聞いた「ご飯」は、コメかパンかを聞いているのではない。「朝食」を取ったのかを聞きたかったのは明らかだ。だから本来なら「はい。食べました。パンを食べました」などと答えるべきだろう。

ところが「ご飯」をコメという意味で聞かれたと意図的に解釈して否定的な答えをするのが「ご飯論法」のミソだ。

■「加計理事長との食事は問題と思うか」という質問をはぐらかす

安倍氏は、今年の通常国会で、この手法を使った。

例えば、ことし5月の衆院予算委員会のやりとりを紹介しよう。加計学園の加計孝太郎理事長と食事をするようなことが問題だと思うか、という野党議員の質問に対し安倍氏は「食事をごちそうしてもらいたいから、国家戦略特区で特別にやるというようなことは考えられない」と答弁。

質問者が聞いているのは、利害関係人となる可能性のある加計氏と食事することの是非なのだが、食事をごちそうになるために便宜供与することはない、と論点をずらしている。

安倍氏が「ご飯論法」を駆使することは労働問題に詳しい上西充子法政大教授がツイッター上で紹介し、広がったといわれる。「ご飯論法」は今年のユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされている。

■「看板大臣」片山さつき氏が多用している

「ご飯論法」は今国会でも散見される。最たる例は片山さつき地方創生担当相。

片山氏の写真付きの巨大な看板が、さいたま市にあり、公職選挙法違反の疑いがあるという指摘を受けた11月7日。片山氏は「書籍発売時の宣伝広告であり、政治活動のためのものではない」としたうえで、同じ看板はさいたま市の1カ所しかないと思うと答えていた。

しかし2日後に浜松市や名古屋市にもあったことが判明。「虚偽答弁だ」との指摘を受けた。これに対し片山氏は浜松市や名古屋市の看板が、違う書籍の宣伝のためのものだったとしたうえで「この書籍の看板、これと同じものは、ここ(さいたま市)にしかありませんと明確に申し上げた」と釈明した。

看板はあるけれど、全く同じ看板はない、というのは立派な「ご飯論法」だ。

■曖昧な答弁をしたり、同じ内容を繰り返したり

片山氏は国税庁への口利き疑惑で「私設秘書」として仲介したとされる人物について「秘書ではない」と否定。ただしその後の答弁で、この人物は私設秘書用のバッジが交付されていたことが判明している。これにも「ご飯論法」という指摘が出た。

片山氏と並んで国会で追及を受ける桜田義孝五輪相も、質問とずれた答弁を繰り返しているが、これは計算して「ご飯論法」をしているのか、単純にかみ合わないだけなのかは分からない。

他の閣僚たちも、怪しげな答弁をすると、直ちに、SNSなどで「ご飯論法だ」などと拡散される。最近は、厳密に「ご飯論法」とは言えないやりとりでも、曖昧な答弁をしたり、同じ内容を繰り返していたりすると「ご飯論法」と認定されることもある。閣僚たちも大変だ。

■いつまでも同じような質問ばかりする野党

「ご飯論法」が横行する状況は、野党にも問題がある。今年に入り通常国会では「森友」「加計」問題の追及が続き、秋に臨時国会が召集されると片山、桜田の2人を中心にした新人閣僚への批判が行われてきた。

しかし、その間、野党の追及によって辞任に追い込まれた閣僚は1人もいない。野党側が、一撃で仕留める材料を持たず、報道された疑惑を元に質問することが多いから、閣僚の方も、のらりくらりとかわしていればゴングに救われる。だから「ご飯論法」のような答弁が続発 するのだ。

そして有権者たちは問題閣僚たちに怒りを感じつつも「いつまでも同じような質問ばかりしている」と野党にも不満を持ち、内閣支持率は底割れしないでいる。

■片山まつり、桜田まつりでモリカケ追及が止まっている

国会の現状を一番喜んでいるのは安倍氏かもしれない。もちろん片山氏や桜田氏が連日テレビや新聞で、おもしろおかしく扱われることは政権にとってはありがたいことではない。ボディーブローのようにダメージは蓄積される。そして、今後の展開しだいでは2人は辞任に追い込まれるかもしれない。

安倍氏が、さほど片山氏らをかばおうとしていないことは「安倍首相が"片山大臣"を守る気がないワケ」を参照いただきたいが、いずれにしても2人が辞任しても政権の致命傷にはならない。致命傷になり得るのは安倍氏と直結する問題である「森友」と「加計」だ。

野党が片山、桜田の両閣僚の問題に意識が集中し過ぎると「森友」「加計」の追及が止まる。今のままで臨時国会が閉幕すると「森友」「加計」は過去の疑惑という印象が強くなる。これは安倍氏にとっては好ましいシナリオだ。

流行語大賞の表彰式は毎年12月初旬に行われる。もし「ご飯論法」が選ばれた場合、誰が表彰式に出席するか。

まさか安倍氏が出向くことはないだろうが、「目立つことが好きな片山氏ならば、招かれれば出席するのでは……」という臆測が永田町で飛び交う。もっともその時、片山氏の肩書が地方創生相なのか、前地方創生相なのかは分からないが。

(プレジデントオンライン編集部 写真=時事通信フォト)

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