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焦点:米SECが議決権ルール見直しへ、投資家と衝突の可能性


[ワシントン/ボストン 9日 ロイター] - 米証券取引委員会(SEC)は15日、企業に対する株主の議決権ルール見直しに関する討論会を開く。これまで年金基金や他の機関投資家が、気候変動や銃問題などについて、議決権を通じて企業に一定の影響力を及ぼしてきた。

ただ投資家の間では、企業寄りになっている現在のSECが、株主の権利縮小に動くのではないか、との懸念がくすぶっている。

企業側は既に10年以上前から議決権ルールに不満を抱き、特定の利益集団や議決権行使助言会社が次々に過剰な要求を取締役会に突き付けるのを許していると指摘してきた。

SECはそうした意見に耳を傾けながらも、株主の議案提出を制限する措置は特段講じず、むしろ金融危機以降、議案提出は株主が企業を監視するための主な手段と化している。しかし企業に友好的なトランプ政権の誕生で、今度ばかりは状況が変わるというのが企業側の期待だ。

既にSECは、議案提出の資格要件引き上げなど関係者の妥協が可能な分野では来年にもルール変更を検討する可能性を示唆している。

SECの広報担当者は「われわれの既存のルールが市場の変化に照らして効果的に目標を達成しているかどうか不断に点検することが重要だ」と述べた。

一方、企業統治や環境、社会の問題における投資家の意識の高まりに呼応する形で、ブラックロック<BLK.N>やバンガード・グループといった大手資産運用会社は最近、銃器メーカーや石油会社などで株主が提出した議案に賛成票を投じている。

ブラックロックとバンガードは今回の討論会についてはコメントを拒否したが、以前から自分たちの投票行動は顧客の長期的な利益に基づいていると強調してきた。労働力の多様性や取締役選任などの項目では、より小さなファンドや年金基金が議案を提出する動きも近年定着している。

それでも企業側は、上場企業の負担軽減を約束したジェイ・クレイトン氏をトランプ氏がSEC委員長に起用したことで意気が上がり、米商工会議所や全米製造業協会(NAM)は議決権ルール変更を促すための政治的な働き掛けを劇的に強めている。

米商工会議所の幹部は「議決権システムを定めている米国のルールは時代遅れになっており、投資家と公開企業、資本市場にメリットをもたらすように近代化する必要がある」と主張した。

NAMの広報担当者がロイターに語ったところでは、NAMは先月SECに対し議決権行使助言会社への規制強化を要望する書簡を送ったという。

9月にはクレイトン委員長が、取締役選任に際して各ファンドが議決権行使助言会社の意見に依拠するのを認めた指針を撤回した。企業側は、議決権行使助言会社の影響力が大きくなり過ぎたと指摘しており、15日の討論会では議案提出の資格要件引き上げとともに、議決権行使助言会社の監督のあり方が話し合われそうだ。

企業側が提唱しているルール変更の1つは、議決権行使助言会社に利益相反の開示強化を義務付けることだ、とロビー団体やSECの関係者は話す。

議決権行使助言大手2社のISSとグラス・ルイスはいずれも潜在的な利益相反問題を抱えていると企業側は指摘。ISSは議決権行使を助言する企業にコンサルティングサービスも提供しているケースがあり、グラス・ルイスは物言う投資家のカナダ・オンタリオ州教職員年金基金が大株主になっているからだ。

グラス・ルイスのラビン最高経営責任者(CEO)は、利益相反発生の恐れへの対策は進めており新たな規制は不必要だとの考えを示しながらも、討論会には「予断を持たずに参加する」と述べた。

ISSの法務顧問は、同社の議決権行使に関する意見には何のバイアスも入っていないと断言した。

議案提出の資格については、現在は大半のケースで最低2000ドル相当の株式を保有していることが要件となっているが、この額の引き上げが企業側の要請だ。

また企業側は、議案再提出の要件引き上げも求めている。現在、10%以上の賛成票を得た議案は何度でも再提出できるが、これを30%に引き上げる案だ。

もっとも一部投資家は、これらの上限引き上げは正当な株主の懸念を覆い隠し、株主にとってマイナスとなるような別のルール改正の引き金になる恐れがあると心配する。

積極的に議案を提出することで知られるウォルデン・アセット・マネジメントのシニア・バイスプレジデント、ティム・スミス氏は、米商工会議所は少しでも付け入るすきがあれば、あっという間に多くの要求をテーブルに乗せたがる、と警戒感をあらわにした。

(Ross Kerber and Pete Schroeder記者)

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