記事

「休みたいのはサボりたいからだろ」──ぼくは社員を信頼していないのに、社長として信頼されたかった

2/2

社長だけで判断するのではなく、みんなで判断してやっていくスタンスに

具体的な変化としては、どんなことがありましたか?


自分の思いばかり押しつけるのをやめました。腹を割って話し合い、みんなの夢も聞かせてもらいました。

それまでは企業理念なんてなかったのですが、社員それぞれの夢を叶えることにもつながる理念をみんなで打ち立てました。

「世界一の染物屋になろう」と。

共通の理想を立てた。


はい。理想が決まれば、今度は、「世界一を目指す私たちは、今どういう道半ばにいるのだろう」と、理想の世界への距離を知りたくなります。それを知ることができないと、働く人たちはやる気が出ません。

そのために、会社の情報はすべてオープンにして、みんなで判断できるようにしました。売り上げも利益も、リアルタイムですべて公開して、「どうぞ見てください」と。

社長だけで判断するのではなく、みんなで判断してやっていくスタンスに変わりましたね。

とても大きな変化ですね。

会社のビジョンとそのシステムを使う意味がつながった

労働環境の問題は、どう解決したのですか?


まずは、有給を誰でも気軽に申請して取れるようにしました。いま考えれば、当たり前のことですよね(笑)


とはいえ……当時は怖かったんですよ。「社員が気軽に休めるようになったら、業務が滞るんじゃないか」と、不安がぬぐえませんでした。今まで、そんなに休みを取らせたこともなかったですし、本当にこんなことをして大丈夫なのか、と。

そこで、「業務フローをしっかり見える化していかなければいけない」と考えたんです。いま誰がどんな仕事をしていて、この先どんな仕事をする予定になっているのか。それさえ分かれば、先回りして対策できそうだなと。

なるほど。


最初は、ふせんでのスケジュール管理を試しました。しかし、本社と工場が離れているせいで、いちいち見に行かなければいけなかったり、ふせんがはがれ落ちてしまってスケジュールが分からなくなったり、問題点が多くありました。

そこで、どこからでもスケジュールを管理できるように、予算を割いてシステムを作りました。しかし、今度は現場から使いづらいという声が出て、なかなか定着しませんでした。

上層部が作ったシステムが、現場に受け入れられない。ありがちな話ですよね。


それで、今度はキントーンを導入しました。これなら現場のスタッフが、自分たちで使いやすいように、自分たちでカスタマイズできるだろうと。

導入はうまく進みました。しかし、「みんなの仕事の状況やスケジュールを、キントーンなら楽に共有できる」ということはわかっても、なぜそれをやるのかまでは社員に伝わっていなかったようなんです。

つまり、「よく分からないけど、何となく使っている」という感じだったわけですね。


おっしゃる通りです。これが伝わるようになったのは、社員が見守るなか、「kintone hive」でプレゼンをしたことがきっかけだったんですよ。

え、そうなんですか!

キントーンによる業務改善の秘訣やノウハウを共有するイベント「kintone hive」にて、蜂谷さんのプレゼンテーションは最優秀賞に選出。

はい。社員たちから、「あのプレゼンを聞いて、なぜ社長がキントーンを使ってくれとずっと言っていたのかわかった」と言われました。

会社のビジョンとキントーンを使う意味がつながったようなんです。

何のためにそのシステムを使うのか。会社にどんな課題があって、そのシステムを使うことで何を解決したいと思っているのか。

そういった全体像がわかり、「それを使う意味」「それをやる意味」が腑に落ちてからは、社員はさらに自分たちで活用方法を探るようになりました。

おもしろいですね。単に効率が上がるだけでなく、「それで自分たちの夢が叶うんだ」というところまでつながらないと、人は動かないわけですね。

社長が社員のことを考えるのは難しい、だったら社員自らが考えて動ける状況を作るべき

つくづく思いますが、経営を考えるにしても、信頼関係を築くにしても、システムを導入するにしても、社長が社員のことを考えるのは本当に難しいです。

私も昔、待機児童が大きな問題として出てきたころに、社内に保育園を作ろうと提案しまして。きっと全社員が感動するだろうと思ったら、びっくりするくらい、即却下でした。

「アホですか?」「青野さん、通勤ラッシュの電車に子どもを乗せられるわけないでしょ」と(笑)

ははは(笑)


社長が一方的に、社員のことを考えるのは難しい。

だったら、やはり情報も理想もオープンに共有して、社員自らが考えて動けるようにすべきなんでしょうね。

そう思います。実際うちも今、海外との取引が少しずつ増えてきているんです。

それは、みんなで「何年後には海外に支店を作る」という目標を掲げているから、実現したことなんですよね。

グローバル展開も、ビジョンとして具体的に考えているんですね。


はい。これは、「地元である一関を人であふれさせたい」という私自身の理想と、「一関から世界へ」というみんなの理想から生まれた目標です。

京屋染物店の皆さん

道半ばで、まだまだ障害はあるはずです。

そのときにどう乗り越えるのか。社員と向き合って、情報も理想も包み隠さず共有して、一緒に考えていきたいと思っています。

素晴らしいです。応援しています!

文:多田慎介/撮影:橋本直己/企画編集:吉原寿樹

あわせて読みたい

「企業経営」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    混雑する観光地、お休み中の飲食店…「国民の祝日」が多すぎることのデメリットを痛感

    内藤忍

    09月21日 11:56

  2. 2

    横浜市長就任後も疑惑について説明しない山中竹春氏 ウソと恫喝の追及は続く

    郷原信郎

    09月22日 10:56

  3. 3

    サンドウィッチマン、かまいたち、千鳥…Googleで検索されている芸人ランキング

    放送作家の徹夜は2日まで

    09月22日 10:48

  4. 4

    賃上げ・労働分配率向上策は、河野氏の法人税減税よりも高市氏の人材育成投資が有効

    赤池 まさあき

    09月22日 09:04

  5. 5

    引きずり下ろされた菅首相の逆襲が始まる「河野内閣」で官房長官で復活説も

    NEWSポストセブン

    09月21日 08:42

  6. 6

    順当トップ交代人事では払拭できぬ三菱電機の"悪玉"企業風土とは

    大関暁夫

    09月21日 12:37

  7. 7

    アメリカの輸入規制撤廃に福島から喜びの声 「菅首相の置き土産?」指摘も

    BLOGOS編集部

    09月22日 16:26

  8. 8

    「政高党低は悪?」 報ステは自民党批判ありきではないか?

    和田政宗

    09月21日 22:55

  9. 9

    民主党の辞書に反省の文字はない

    非国民通信

    09月21日 20:34

  10. 10

    鳩山由紀夫氏“民主党は内ゲバで崩壊”と的確な分析に賛同も「急にまとも」と困惑続出

    女性自身

    09月22日 14:37

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。