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「休みたいのはサボりたいからだろ」──ぼくは社員を信頼していないのに、社長として信頼されたかった

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「社長には、もうついていけません」

もし自分がとある企業の社長だったとして、社員からこのようなセリフを言われたらどうしますか──?

岩手県にある、創業100年の歴史を持つ染物屋「京屋染物店」。この会社を引き継いだ4代目社長の蜂谷悠介さんは、実際に社員から「ついていけない」と言われた経験があるそう。

衰退する業界で生き抜くために奔走するものの、ブラックな職場環境はなかなか変わらず、社員の心は離れるばかり……。「自分自身のあり方を本気で反省した」と当時を振り返ります。

サイボウズ代表取締役社長の青野慶久も、かつて似たような経験をしました。急成長の勢いに身を任せ、社員にハードワークを求め、M&Aを繰り返した先に待っていた大失敗。「もう社長を辞めたい」とまで思い詰めたそう。

京屋染物店もサイボウズも、現在では社員がいきいきと働く会社に変わりました。2人の社長は、どのようにして社員の信頼を取り戻していったのでしょうか。

逆転のストーリーを語り合いました。

「勝手に有給を取るなんて許さない」と本気で思っていた

社長になって8年ほど経ちますが、社長って本当に難しいですね。


ははは。同じ社長として、思い当たる節はたくさんあります。


ありがとうございます(笑)

蜂谷 悠介(はちや・ゆうすけ)さん。大正7(1918)年創業の京屋染物店を受け継ぐ4代目社長。大学時代にウェブデザイン会社を起業するが、3代目の父・蜂谷徹氏の他界に伴い2010年に京屋染物店代表に就任。法人化や社内の改修、縫製工場の新設など新たな取り組みを進め、同社の製品は「いわて特産品コンクール・岩手県市長会会長賞」や「経済産業省・The Wonder500」(世界に誇れる日本の逸品500選)などに選ばれている。

具体的にどう難しいと思われたのでしょう?


私たちがいとなむ染物業は、いわゆる衰退産業です。創業当時、同業他社は約14,000社もありましたが、今は約300社ほどしかありません。

そんな状態ですから、社長になった当初の私は、とにかく働いて、お客様の声に応えていくことが最優先だと考えていました。

なるほど。


「休んでいる暇なんてない。有給なんて許せないし、週休2日もあり得ない」と、本気で思っていました。

それなのに、社員からは次から次へと言われるんですよ。

「社長は、ほかの会社で働いたことがないから、そんなことが言えるんですよ」とか、「普通の会社だったらこんな体制で、有給も取れて……」とか。

それは……頭に来たでしょうね。

青野慶久(あおの・よしひさ)。1971年生まれ。愛媛県今治市出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立した。2005年4月には代表取締役社長に就任(現任)。社内のワークスタイル変革を行い、2011年からは、事業のクラウド化を推進。著書に『ちょいデキ!』(文春新書)『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない』(PHP研究所)など。

そうですね。「何のためにこの会社に入ってきたんだよ?」「状況を少しでも良くしようと思っているのに、なんで俺がこんなに文句を言われなきゃいけないんだ」と、最初は本気で思ってしまいましたね。

でも、最終的にはどうしようもなくなって。全社員の前で謝ったんです。

社員を信頼していないのに「ついてこい」という勝手な社長だった

社長が謝った! 何があったんですか?


ある社員に、「社長にはもうついていけません」と言われたんです。

さすがに、そこまで言われたときは自分の社長としての振る舞いを反省せざるを得なくて、自分の考え方や行動を振り返りました。

ショックだったんですね。


はい。それはもう落ち込みました。

仕事を減らせば会社が潰れる、でも仕事を増やせば社員が辞めていく。そんなふうに追いつめられていく中で、当時の私は、社員を信頼できなくなっていたんですよね。

「休みたいだなんて。みんなサボることばかり考えて、染物のこともこの会社のことも、どうでもいいのか?」と……。


休みたいのはサボりたいからだと、社員を信頼せずに決めつけていた。


そうです。当時は、「いまは休んでいる場合じゃないでしょ」と、社員の休暇を頭ごなしに否定していました。

でも社員からすれば、説明もないのに社長が何を目指してるのかよくわからないし、どれだけ仕事をしても終わりが見えないし、残業は増え続けるし、そりゃあ「社長についていっていいのかな」と思いますよね。

さらには「俺がこんなにやっているんだから、みんなもっと信頼して俺についてこいよ」と勝手なことを言って……。最低なことをしていたと思いました。

社長が自分を強く見せようと威張り散らしても、会社は良くならない


そういえば僕も、社員とバチバチやっていた時代がありましたね。

社員が会議で、「仕事を減らすべきじゃないか」と議論しているところに入っていき、「僕は仕事を減らすつもりはないよ」と言い放ったことがありました。

そうだったんですね!(笑)

青野さんの考えが変わったのには、何かきっかけがあったのでしょうか?

会社としてもっと成長しようと思ったときに、人がどんどん辞めるようになってしまったんです。

これでは成長できない、何か間違えているんじゃないか。もっと社員ひとりひとりと向き合ったほうがいいんじゃないのか? と思うようになりました。

なるほど。私が全社員に謝ったのも、本質は同じだと思います。

社長が自分を強く見せようと威張り散らしても、会社は良くならないんだと気がついたんです。


時代がどう変化しようと、社長が常に正解を出し続けられるのなら、社長が威張っても、社員はついていくのでしょう。

しかし、時代は変わるし、お客さんのニーズも変わる。たくさんの価値観がある今の世の中で、どんな人に何が喜ばれるかなんて、自分1人ではとても考え続けられません。

だから、「社長がいつまでも威張って会社を動かしていくなんて、逆に非効率なんだ」と、思うようになりました。

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