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国が外国人不法就労の抜け道をつくる愚 -入管法改正は経済優先で国の根幹を揺るがすー

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<日本の外国人労働は遠洋漁業から始まった>

 私は水産庁の企画課長として当時外国人漁船員の問題を担当した。どこにも所属しない仕事が企画課に集まっていた一つの例である。あまり知られていないが、遠洋漁船は日本の外にいるので、単純労働者が国内に入るのと違うので、外国人就労について早くから受け入れていた。1年近くもの日本を離れていたら、どんなに給料が高くとも日本の若者が敬遠するのは当然である。

 遠洋漁船を動かすために、外国人労働者が急激にとりいれられた。国もとやかく言わなかった。理由は簡単で、日本に上陸して日本に住むということがなく、一般人の目に触れなかったからである。かくして、マグロ等の遠洋漁船は最初韓国人、次に中国人、インドネシア人、フィリピン人、タイ人と広がって行った。もちろんトラブルもあったが必要悪として公然と認められていた。

 ともかく給料が高かったので途上国の若者には魅力的だったのだ。この結果酷い船になると、船長と漁労長だけが日本人で、あとは皆外国人となっていた。

<商船の船乗りの外国人化は日本の安全を揺るがす>

 その延長線上で、商船も同じようになっていった。私が1976~8年にワシントンに留学していた頃、シアトルに近い港で材木のアルバイトをしていたルームメートは日本船が来ても安心して材木の作業をしていた。他の国の船が来ると、いつぶつけられるかもしれないので、慌てて陸に上がっていた。

 それが今はきちんと操舵作業をする日本人が少なくなり、日本の船であっても操舵しているのが外国人であり危険になってしまっているだろう。日本の安全保障を考えると、ゆゆしき事態である。なぜなら、アラビア湾がきなくさくなったら、彼らは日本の商船や石油タンカーには乗ってくれないだろう。

<明らかに移民政策>

 きつい・きたない・きけんな仕事から若者が離れていき外国人にとって代わっていった。3Kどころか何拍子もそろっている遠洋漁業はいくら高給とはいえ、敬遠されるのは理の当然である。そしてこのような3K仕事離れが、少子高齢化でただでさえ少なくなった若者の間に広がっていった。農業、漁業、林業もそして、建設業、介護等体を動かして汗をかく仕事である。それに対して仕方がないから外国から人に来てもらう、という単純な図式で突っ走っているのが今回の入管法の改正である。

 よく言われるように外国人の家族や地域社会のことは少しも念頭になく、あるのはひたすら「労働力」としての外国人である。技能実習生、研修生として受け入れてきた者を、もっと大々的に広げていくというものであり、移民への道を開くものとして野党はこぞって反対している。そればかりではなく、本来安倍首相の固い支持者の保守層も反対に回っている。

<右肩上がりは卒業すべし>

 実質的に移民を認めることへの懸念は全くその通りである。いつかブログでも紹介したが(「縮小社会研究会」の主張がいつ日本で受け入れられるか -日本は分際をわきまえた生き方が必要- 15.11.04)、京都大学の教授たちが縮小社会研究会と会を持ち、日本の将来について議論し発信もしている。『縮小社会への道』(2012年)という本の中で、人口減について明確な指針を出している。

 明治以降100年で人口は4千万から3倍の1億2千万になっている。ところが2100年にはまた3分の1の4千万人に戻る。それを前提とした社会構造・産業構造にしなければならないというのである。今後の日本の将来を考える場合縮小は当然で、右肩上がりの成長はもうないという前提で取り組んでいかなければならないと警告を発している。

<人口減に合わせた社会・産業構造に変える>

 私はこのような考え方を、既に1985年『農的小日本主義の勧め』で示している。今の経済規模を確保するために、人手が足りないので外国から人を連れて来て働いてもらうという考えが出て来るのはもっともなことだ。だが、私は順序を逆にすべきであると考えている。日本で生まれ育っている人たちが中心に日本国を造る。

 その人たちに見合った社会構造・産業構造にすればいいのであって、人口が減ってきたら、外国人を入れるというのはあまりに短絡的すぎる。今、韓国との間で徴用工判決が問題となっているが、入管法改正でしようとしていることは、戦前の徴用と大して変わらない。日本の発想は今も昔も同じなのだ。

  といっても、田舎が超過疎になり住む人がいないではないかとすぐ反論が返ってくる。しかし、もともと住んでいたのであるから、そこで農業あるいは林業をやりながらそこで生活していけるようにすることが先である。それをやらないでおいて、やる人が少なくなってきつい仕事を外国人にさせるというのは勝手すぎる。ところがこのことに何の疑問も持たない人が大半である。

<明らかな移民開国>

 そうしたところで、苦肉の策で出来上ったのが、日本に技術を実習に来て、数年経ったら帰って、母国でもってその技術を役立てるという技能実習生の仕組みである。しかし、これが名ばかりであって、実質的には低賃金の労働をしてもらう口実になっていたので、もっと現実的なものに直し、滞在期間も延ばそうというのが今回の改正である。

 日本で技術をきちんと習得したら、5年に延ばして家族も来てもよいと大きく方向転換している。日本は、今や128万人の外国人労働者を抱える世界第4位の移民大国なのだ。

 従って今改定は、現実を追認して移民を認めることに他ならないが、安倍首相は一貫して移民政策ではないと強弁している。だから話はややこしくなり、混乱する。

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